89話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦  (グリクス地方奇襲戦 5)

 アースティア暦1000年・6月6日・午前0時02分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・シベリナ中央地方・ダバ・ロード王国 スッコッチアイランド州とローラーナ帝国・グリクス地方軍団・グリクス地方西部方面・ゼルダ地方・ゼルダ門要塞戦線地区同両国との国境線付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 アイリッシュ湖やガイダル諸島の在るアルインランド州から南へ580キロほど進んだ所には、ダバ・ロード王国南部の州であるスッコッチアイランド州と言う所が在る。


 この州のほぼ中央には、州都グラス・ボー市が在って、その市外には、この地方の守りの要たるグラス・ボー城塞がある。


 其処から更に東に470キロ進むと、グリクス地方西部にして、旧アルガス公国の領土でも有るゼルダ地方と呼ばれる範囲にして260キロの地方が在るのだ。



グリクス地方は、ローラーナ帝国との戦争で敗戦して逃げ延びて来たアルガス公国の前身国家たるアルガス王国の人々が無主の土地だった土地を開墾して切り開いた土地であった。


 其処から広大な土地を開墾して国家を再建する際に、隣国のダバ・ロード王国と協議して、国境が取り決められ、北東へと領土拡大して行く事と成る。


 その更に東へと移民した形で逃れたのがラクロアナ王国の王族や国民達だった。


 アセリナ王国のアセリナ族の者達は、昔からダバ・ロード王国とアルガス公国の間の同地方に挟まれる形で、各部族事に分かれて集落や町を築いて暮らして居た。



 それ以外は、東の果ての国々のドラグナー皇国・旧シャッポロ王国・コヨミ皇国。


 そして、コヨミ皇国の北西部に大華山脈と言う山脈に囲まれた地域を治めて居る小国にして、コヨミ皇国から分家の独立国である大華小皇国と言う国だけがユーラシナ大陸東部地方であるシベリナ地方に昔から在る国家だった。


 さて、話をゼルダ地方に戻すが、この地方にはアルガス公国が築いた旧ゼルダ城を基盤とするゼルダ門要塞と言う大要塞が改築を繰り返される形で聳え立っている。


 その名の通り、この要塞は周囲をグルリと円を描く様に焼く12キロに広がって様々な施設が備え付けれる形で建てられ居るが、東西南北に巨大な門が在るのだ。


 此処は対ダバ・ロード王国との最前線の要地であると同時に、帝国の東部戦線へと送られるあらゆる物資の集積所にして、東部地域に繋がる街道の大動脈と成る通り道でも有るのだ。


 其処へ連絡路の確保を目的に、日本から派遣され、ガイダル諸島を防衛して居る空自ガイダル諸島派遣隊は、レジェンダリア諸島での交戦に備える為、陽動を兼ねた、一大奇襲作戦を開始したのであった。


 作戦開始の命令を発する為、秋元空将は軽いジョークを交えた訓示を兼ねた状況説明を言い始めた。


「お早う諸君、と言っても今は深夜0時たがね。」の一言に、クスリと笑いを零すパイロットとオペレーターやその他の自衛隊幹部たち。


「さて、冗談はさて置き。これより空自ガイダル島派遣隊は全部隊を持ってローラーナ帝国・グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区の主要な軍施設に対して陽動を目的とした攻勢作戦に討って出る。」


「急遽、海自のP-1哨戒機改も参加が決まって、間も無く諸君等に追い着く頃合いの筈だ。」


 P-1哨戒機改とは、P-3C哨戒機の後継機として、2016年前後から配備が始まった哨戒機のP-1哨戒機を改造した機体である。


 未曾有の大災害である異世界転移と言う事態とガイダル諸島基地の護衛派遣を目的に哨戒機としての役目と急遽爆撃機としての役目を兼ね備えた改造を施した機体である。


主翼の下には、対艦ミサイルか対地ミサイルの装備の換装が状況に応じて出きる様に改造を施して居る。



 また、Mk82爆弾を20発づつ弾倉入れられ様にも改造を施して居た魔改造の哨戒機であった。



 本格的な爆撃機の配備をして居ない日本の自衛隊に取って短期間で改造して、ガイダル島に配備が出きたのは、たったの12機で、国内の飛行機関連の会社を巻き込んでの一大改造計画と成った。


 この異世界に来てしまった我が日本国は、自衛の為の基地防衛や攻勢作戦等の自衛呑み成らず、陽動や進攻作戦等に置いて、近い将来、絶対に爆撃しなければ成らない事態を見越して計画だった。


 だがしかし、正かこんなにも早くに活躍の場が来ようとはと防衛省関係者は、ぼやいて居たりするのだった。


 この作戦の決行の背景には、自衛隊上層部等は、戦闘機だけの陽動爆撃等では効果が薄い可能性が有る。


 どうせやるなら派手にローラーナ帝国の民間人等が、ほぼ居ない軍事施設や移動中の軍勢を直接攻撃する事で、敵の今後の作戦や軍事力と行動を弱らせ、更には自衛隊の実戦データを収集しつつ、その将来に活かそうと言う物だ。


 勿論、攻撃目標のヶ所は、指定場所以外に行わない事や事前偵察に由る徹底した誤爆に関しては、極力気を使うが、運悪く居合わせた民間人に対する自衛官や命令を出している人物等の処罰は余程の事が無ければ、有り得ないとされて居る。



 戦時中に措いて、民間人が何らかの理由で軍の施設に居ると言うことは、例え敵の攻撃を受けて巻き込まれても自主責任でしか無いと言わざる負えないのだ。



同地域は常に空自ガイダル島派遣隊が定期的に偵察演習と言う名の実践的な偵察飛行を行って居て、今日も夕方頃に定期偵察任務を終えて居る。


 その事でハッキリとした事実が有った。


 それは帝国にレーダーを始めとする電子監視施設の設備が、一切無いと言う情報収集を得た事が最大の成果と言えた。


「秋元司令官。P-1哨戒機改隊が、たった今着いた様です。」


「こちら海自ガイダル諸島P-1哨戒機改・航空派遣隊だ、陽動爆撃作戦の為に合流する。」


 P-1哨戒機改は元々海自所属機である。その為に運用は空自隊員では無く、海自隊員が行って居る。


 彼らは超高度から偵察や監視、爆撃を主任務とする部隊として派遣されていて、現地でしっかりと米軍から派遣された教官の元に爆撃訓練を行って居るが、初の実戦に参加すると言う事も有ってか、海自隊員の誰もが真剣な表情で緊張していた。


「全員が揃った様だな。」


「待ってください。後方の地上から更に上昇してくる物体多数確認っ!」


「何?!」


 秋元空将は、奇怪な報告に驚く。それらの複数の物体は、自衛隊の航空機ほどのスピードが出ていないが、ゆっくりとした速度で、ガイダル島派遣隊の居る高度まで上がって来たのだ。


 白と青の色を基調とし、鉄材を用いた180メートル級の魔導空挺戦艦隊が13隻と80メートル級の帆船型魔導空挺戦艦隊12隻。


 そして、20メートルクラスの竜に跨る竜騎士航空隊が総勢60騎も現れたのだ。


「突然の参陣で済まない。」


「俺はダバ・ロード王国・スッコッチアイランド州方面軍所属のキショー・スティール大佐だ。」


「アーヤ・シュチュ―ド女王陛下の特命で、ニホン軍ガイダル諸島派遣隊の作戦を支援せよ命により参陣する事と成った。」


 伝令用のワイバーンに跨り、魔導拡張機成る魔道具を用いた方法で名乗りを上げたのは、ダバ・ロード王国軍のスティール大佐だった。



 どうやらあの女王様は、この機に乗じて色々と帝国に対して、嫌がらせをする算段らしい。


 突然のダバ・ロード王国軍の出現にガイダル諸島派遣隊の面々は混乱したが、其処へ秋元空将から更に続報が入る。


「その事に付いて、たった今連絡が入った。」


「ダバ・ロード王国軍も我々の作戦を陸空の両軍を挙げて我々を支援するそうだ。」


「参陣が間に合わない可能性も有ったので、我々に報せるのを躊躇ったが、たった今魔導通信で緊急連絡が入り、各軍の参戦が間に合ったとの報せを受けたらしい。」



 スティール大佐は、更に話を続ける。


「作戦の概要はガイダル諸島派遣隊の秋元空将閣下殿報告書の内容をアーヤ女王陛下を通じて知って居るが、細かな部分は報されて居ない。」


「それなので此方は目ぼしい拠点に対しての魔導空挺戦艦隊に由る砲撃や遭遇戦に由る陽動支援作戦を展開させて貰う。」


「地上では陸上魔導戦艦を中心とした魔導機兵団を用いた大規模な陽動進攻作戦が進行中だ。」


「ゼルダ地方内陸部に対する攻撃は、貴軍にお任せする以上だ。」


「聞いての通りだ。予定とは違ったが、これよりダバ日両軍に由る合同作戦に入る。」


「空自と海自航空隊各機は、白旗に魔導機兵とカリマンシェロ城が描かれた紋章の国旗を見逃すなっ!」


「ローラーナ帝国軍の各種兵器類は、それほど素早く攻撃を行えない物が多い。」


「冷静に対処すれば勝てるっ!!!諸君らの奮闘に期待する以上だ。」



 秋元空将が訓示を交えた攻撃開始の命令を発する。


「各機へっ!!攻撃開始せよっ!!繰り返すっ!!各機っ!!攻撃開始せよっ!!」


「了解、各機は予定通りに6部隊に分かれて目標地点に迎えっ!」


「「「「「了解っ!!」」」」」



 こうして、ダバ日両軍は、グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区に対しての一大陽動作戦を展開し、攻撃を開始したのである。



 これに驚いたのは、当然ながらグリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区の帝国軍だった。


「ばっ、馬鹿なっ!常に守勢に徹している筈のダバ・ロード王国軍が、何故この時期に、我が方への攻勢に出て来て居るのだっ!?」


 とあるダバ・ロード王国軍との国境沿いの要塞を守護している将校は驚きを隠せずに居た。


 各地の戦線の現場からは、次々とダバ・ロード王国軍の軍勢が騎士団・魔導機兵団・陸上魔導戦艦艦隊・魔導空挺戦艦隊・竜騎士航空隊等が、一斉に国境を越えて来たとの報せが舞い込んで来たのだ。



「急ぎっ!ゼルダ門要塞司令部に報せを出せっ!!」


「魔導力通信水晶を使ってでも、何でも構わんっ!」


「ダバ・ロード王国軍が血迷ったのか、一大攻勢に出て来て居るとなっ!!!」


 彼らは緊急時以外での使用を禁じられて居る魔導通信水晶の使用を決めたらしい。


 この魔道具を用いた通信は、一度に通信の為に使う魔鉱石の使用量の代金が、バカに成らないからだ。



 その額が凡そ日本円で、5分から10分程度での通信で、3万円くらいだったりする。


「はっ、此方は第1356国境監視要塞司令部っ!」


「ゼルダ門要塞司令部っ!応答願うっ!此方は・・・・・・・・・」


 其処へ『ヒュウウウゥゥゥゥ』と言う砲撃に由る砲弾の落下音が、聞えて来た。


「伏せろっ!!」


 基地司令をして居る将校が叫ぶと、近くで大きな爆発が始まった。


「ほっ、報告っしますっ!!」


「ダバ・ロード王国軍の第30騎士団3千っ!第30魔導機兵団300機っ!陸上魔導戦艦艦隊7隻っ!。」


「併せて、凡そ3300人が全力で、我が第1356国境監視要塞を攻めて来て居ます。」


「くそっ!」


 将校は苦虫を噛んだ表情をしつつ、怒りに震えていた。


 手持ちの兵は1800人程度、装備は長距離魔導砲と火薬式大砲が併せて150門だけで、他は剣に弓や槍と言った何所にでも有る白兵装備ばかりだった。


 おまけとして魔導機兵は20機程度だけで、連度の高いダバ・ロード王国軍の魔導機兵団相手に、とても勝てる数を配備して居ないのだった。


 何も無ければ、或いは一部の戦線だけの戦いだったのなら、他の砦や基地、各要塞が無事なら援兵が直ぐにでも来られる筈なのだ。


 だが、今は何所もダバ・ロード王国軍の騎士団・魔導機兵団・陸上魔導戦艦艦隊の一斉攻撃の対処で、何所も手一杯だった。


「撤退だっ!一時的に、この監視要塞を放棄する。」


 突然の攻勢にローラーナ帝国・グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞の管轄下に有る各方面の帝国軍は完全に後手に回った事態と成って居た。


ダバード・ロード王国軍の魔導機兵団軍は、ユーラシナ大陸随一の魔導技術立国にして、この世界の中でも魔導機兵団は10万機は保有して居ると言われて居る軍事力を持って居た。


 だが、ローラーナ帝国軍は、同盟従属国の軍と併せて500万機の魔導機兵団を持って居るらしいが、各地に分散して配備して居るので、ダバード・ロード王国軍の魔導機兵団ほど纏まった運用を集中的に配備して居る地域と言うのは、ホンの一部でしかない。


 在るとすれば、巨大要塞地区の有る地域や魔導機兵団を主軸にして居る軍団くらいだったりするのだ。



 この日、グリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区のダバード・ロード王国の国境戦線付近の部隊が駐屯している基地や砦に監視所は、軒並み潰し破壊をし尽くされ、集積して物資や資金と言った物は、ダバード・ロード王国軍に全て強奪されて行ったと言う。


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