80話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦 (白龍大帝怒りの咆哮編 1)

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月4日・午後16時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・ブラキュリオス湖から東方へ27キロ地点・西方海自派遣支援艦隊・通称・ダバード・ロード王国派遣支援艦隊・略称名・ダバ派遣支援艦隊航行地点にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 バラン少佐率いる帝国軍と日本国が派遣したダバ派遣支援艦隊との戦いは、いよいよ最終局面に移行しようとして居た。



空挺戦艦ズィードルンの艦長にして、第9空挺艦隊の司令官たるバン・グッター少佐は、ある秘策を持っていた。


「バラン少佐、どうやら間に合った様です。」


「あっ、あれは?」


 第9空挺艦隊の後方に、突如として現れたのは、帝国が国内と領土とした各地の地域で、発掘を多くの人手を使って掘り起こし、その全容を解析をし、各種技術をコピーして作らせたと言う巨大兵器。


 この世界でも指折りの巨大要塞戦艦で、地上と空中を悠然と進みつつ、敵をなぎ払うかの様にして、壊滅させて行く悪魔の兵器。



 その名を移動要塞戦艦デストロイヤー。


 全長600メートルクラス移動要塞戦艦。元は古代兵器の移動要塞デストロイヤーをコピーして作られた兵器。



 多数の大型兵器を運搬し、左右の装甲には、18門の魔導砲台と艦全部に搭載されて居るデストロイヤー砲で、全てを薙ぎ払い撲滅する凶悪な兵器だが、移動は時速40キロと亀の如くその船足はかなり遅い。



 照準も疎らで兵器としての信頼は、破壊力以外は丸で当てに成らないと言う問題等も多数抱えて居る。



 細長い胴体と6本の多脚式歩行装置で地面を移動し、長距離は60メートル上空を飛行して移動する事が出きる。


 そのデザインは歪で、設計して考えた奴は頭が可笑しいのじゃないかと思うが、然しながら、この世界の子供達には、妙にわしゃわしゃとした多脚と光線砲の威力。


 そして多数の兵器が運用出きる事から、何故か妙に人気の有る兵器として知られて居る。


 大量生産こそ儘ならないが、帝国はそれなりの数を保有して居ると言う話だ。



「バン少佐、彼の移動要塞戦艦デストロイヤー。」


「どうやってあれを派遣させる事が出きたのだ?」



「はい。デストロイヤーを研究・開発・建艦している大元であるムーラ・ザーメ帝国立兵器研究所とガミトフ閣下は昵懇であるそうです。」



「今回の戦に際して、ニホン艦隊に対して、どれくらい通用するのかを試したいと研究所の思惑とガミトフ閣下の戦略上の思惑が合致して、一隻派遣と相成りました。」



「重ねて現在開発・試験中の兵器も同時に試すとの事です。」



「ふっ、そう言う事か、実は俺が聞いた話では、あれの派遣は、簡単では無いとの軍内部での噂を耳にしていて居てな。」



「確かに。一度の運用で、あらゆる面で金食い虫と揶揄されて居ますからな。」



 移動要塞戦艦デストロイヤーの運用は、何かと物入りである。


 物資に資金に搭載する特殊兵器の数々は、兎に角金や燃料を喰うし、人手も多く乗り込むからだ。



 例えるならば、宇宙世紀アニメに出て来る大型ロボット兵器を超時空要塞式宇宙戦艦で多数運用する様な事と同じだろう。



 以上の言う理由から、帝国でもおいそれと簡単に使う事の出きない兵器なのだ。


「まぁ、良い。」



「どうせ俺達の懐が痛む話では有るまい。」



「ニホン軍が、デストロイヤーに気が付くまでの間、精々遊んでやるさ。」


「流石はバラン少佐です。」


「敵はあの鉄竜を一旦、引き下がらせています。」


「恐らくは補給と騎士達に休息を取らせる為。」


「成らば此方は、もう一中てして、デストロイヤーとその艦載兵器群に、奴らを襲わせましょう。」


「そうすれば、ブラキュリオス湖に居ると言うニホン軍とアルガス軍との戦いが、かなり楽に成る筈です。」


「くくっ、これで少しは、ニホンのやつ等に吠え面をかかせてやれるな。」


「よしっ!者共っ!再攻撃の開始だっ!」


「今ならニホン軍は、準備が整って居るまい。」


「十分に痛め付けて、堂々と戦果の程を報告し、合わせてニホン軍攻略方法をガミトフ中将閣下に申し上げよう。」



 ジョークを挟む会話をしながら、バラン少佐とバン少佐の二人は、戦略を語り合い、互いに煉った策略を秘めてダバ派遣支援艦隊に挑むのであった。



 一方、遥か高度5千メートルの上空から見ていたエリンとユキカゼの二人は、大陸中央南部からゆっくりと航行して現れた移動要塞戦艦デストロイヤーの登場に気が付く。


「ねえ、エリン。あれを見てっ!」


 ユキカゼが、帝国軍の後方に目をやる様にと、エリンに促す。


「移動要塞戦艦デストロイヤーじゃと?」


「帝国めっ!勝つ為なら形振り構わぬと言うのか?」


 エリンは帝国軍が投入した兵器の姿を見て、勝ちに拘る形振り構わない狡猾なやり方に対して怒りを露にした。



 移動要塞戦艦デストロイヤーは、殲滅兵器として良く投入されて居る。



 二人は、移動要塞戦艦デストロイヤーの登場に驚愕しつつ、帝国の彼の兵器投入の決断と言う事実に目を見開いていた。


「そう見たいよ。」


「じゃが、わしはアレを気に入らぬ。」


 エリンは、ある理由から移動要塞戦艦デストロイヤーを嫌って居た。


「ああ、あれには何時も帝国の巨大兵器や試験兵器、秘密兵器等の何かが搭載されて居る事が、多いからかしら?」


 そう、移動要塞戦艦デストロイヤーは、特に大型で強力な火砲兵器や生物兵器の運搬に良く使われて居るのだ。


「そうじゃ、中でもキメラを始めとする魔導合成生物兵器郡だけは、決して許す訳にはイカン。」


「そうよね。」


「あれは、様々な方法で入手した細胞を錬金魔法や合成魔法と生物学。」


「それに本来は、人々を治す筈の医療関係の技術まで使われた悪魔の研究よ。」


 更に帝国はムーラ・ザーメ帝国立兵器研究所と言う遥か西方の帝国本国に在る研究機関施設で、悪魔の様な非合法で倫理に欠ける様な兵器開発や生物魔導兵器。


 更には非合法薬物に古代技術解析し、複製兵器を次々と生産して居る言う事実が有るのだ。


 実際に、その実情をシベリナ連合を始めとする反帝国陣営を含めて、諜報機関に探り入れたが、まだ、研究所に潜り込んで見たものが居ないと言う。



 このムーラ・ザーメ帝国立兵器研究所こそが、此処数百年の間に急速に、その兵器の技術力と性能との向上と共に、帝国の勢力図が拡大さている要因なのである。


「グルルルッ!!」


「感じるぞっ!あそこには、アレが居るっ!」


 エリンは、歯軋りをしつつ唸る。


 如何やらエリンが一番に気に入らない存在が運ばれて居るらしい。


「はぁ、エリン。」


「貴女がその話を持ち出すって事は・・・・・・・・」


「ああ、居る。」



「何らかの改造を施されて作られたキメラドラゴンがのう。」



 キメラドラゴンとは、非合法に集められた竜種や竜人族等の死体や奴隷や捕虜、更には拉致されて来た者達を使って肉体改造か魔法力で培養して他生物と融合させて強化改造生物兵器、または強化改造兵士等を指している生体兵器の事である。



 正に生命の倫理を無視する非倫理的な研究の産物とも言える代物だ。


 元々は古代の転移国家群の進んだ生物学研究が元に成って居る。


 ぶっちゃけ特撮番組に登場して来る悪の組織辺りが、平然とやって居る研究に近いかも知れない。



「ユキカゼ、事と次第では、わしらも参戦するぞっ!」


 エリンは、キメラドラゴンが発して居ると思われる異様な殺気や魔力と異常な力の気配を感じ取り、参戦する事を決意した。


「はぁ、しょうがないわね。」


「キメラドラゴンなら放置して置く訳には行かないわ。」


「それに移動要塞戦艦デストロイヤーと、その中には竜人族で無いと苦戦を強いる事が多い兵器も多数積んで居る。」



「ニホン軍も意外と苦戦するかも知れないわね。」



「私や護衛の騎士達も手伝うから、絶対に先走らないでね。」



 戦とも成ると、エリンは敵を本気で殲滅しに掛かるのだ。


 それも味方を置いてけぼりにして・・・・・・・・・・・・・・・・



 そんな行動を例え知って居ていても誰も止められない。


 戦闘種族たる白龍族の性かも知れないのだ。



「かかっ!!誰に言うておる。」


「わしは泣く子も黙る天下の白竜大帝様じゃぞっ!」


「そんな忠告を聞くわしでは無いわっ!」



 エリンも親友たるユキカゼ忠告を聞いて居ても、戦場で高揚と興奮は抑えられない。


況してや変身して居るこの竜の姿では、只敵を討ち滅ぼすのみである。



「はぁー、ああ、頭と胃が痛い。」



「これから戦なのに・・・・・・・・」


 白竜人族でも珍しく最後の最後まで、竜人族の血が滾らないユキカゼは、親友の行動に頭と胃が痛まずには居られないのである。



 こんな事なら戦と言う酒に酔えたら、どんなに楽なのだろうと思う彼女なのだった。


 エリンとユキカゼらは、移動要塞戦艦デストロイヤーとキメラドラゴンを含む戦略級殲滅兵器との戦いうべく、この戦いに参戦を決意する。



 やはり、巨大な相手には巨大なモノをぶつけるしか無いのだろう。


 エリン達白竜人族の者らは、遥か上空から戦場と成る地上に対して、戦いを仕掛けるタイミングを伺う体制を取るのだった。



 さて、最後にダバ派遣支援艦隊も第9空挺艦隊の動きに当然ながら目を配っている。


 バラン少佐らは、移動要塞戦艦デストロイヤーの存在に気付いて居ないと思って居るが、レーダー技術の無い彼らには、そんな事を想像し考える事すら想定の範囲外だった。


「大変ですっ!」


「航空護衛艦あかぎ空母クラスの凡そ2倍、600メートル級の空挺艦が接近中、目標との相対距離は、凡そ140キロ。」


「時速は40キロ程度で、ゆっくりとですが、我が方に向って来ています。」


「何だと!?」


 ダバ派遣支援艦隊の司令官である小沢一佐は、新たに現れた一隻の巨大艦に驚愕するのだった。


「帝国軍の新たな空母か?」


「今小型偵察ドローンでの映像を回します。」


 小沢一佐は、航空護衛艦しょうかくのCICにて遠隔操作している一般人向けに販売されて居る小型ドローンで、撮影した映像見る為に、端末のノートPCに目をやる。


 この小型ドローンは、遠方での偵察は無理だが、近場を偵察するのには便利として、この世界に転移した前後に、防衛省や海保などで予算を組んで導入した物だった。


 ダバ派遣支援艦隊も出発前に10機ほど搬入されて居るし、彼の第二次龍雲海沖海戦でも使用されていて、その利便性が立証されて居た。



 何せ、帝国はドローンに気付く事すら出きて居ない様子だったのだ。



「こっ、これは・・・・・・」


 小沢一佐は、科学とは別の理論で動く、空飛ぶ巨大な兵器に言葉を失う。


「おっ、大きい・・・・・・・・」


「うーん。」


 近くに居る他の海自隊員らも息を飲み込む。


 その横で別の隊員が、ポロっと素っ頓狂な事を言った。


「でもデザインが最悪ですよ。」


「何ですかっ!この宇宙船艦見たいなデザインに、大きな6本もの多脚ってっ!」


「趣味が最悪で悪過ぎるっ!!」


 突っ込む所は、其処かよっ!と思わず言いたく成った周囲だが、その隊員は比較的若い世代だったので、移動要塞戦艦デストロイヤーに対する正常な反応とも言えた。


 艦橋に居た隊員等は、オタク的な文化に触れる機会が少ない為か、SFやファンタジー的なノリに付いて来れない様子だった様だ。


「ともかく、こうなったら対艦ミサイルを使用するしかない。」


「はっ!!急ぎっ!発射体勢と収容した空自航空隊の装備換装と整備補給を急がせます。」


 しょうかくの副長は、小沢一佐に具申後、各部署の準備を急ぐ様にと言う為に、艦内無線マイクを急ぎ取っていた。



 最早、残弾を温存して戦っている場合では無い。


 下手をすれば、味方全員の生死に関わる。


 帝国側も追い詰められて居ると言えるが、ダバ派遣支援艦隊もまた、此処に来て有る意味、追い詰められて居ると言えた。



「それと、場合によっては、空自航空隊から選抜メンバーで出撃させて、巨大艦を攻撃させられるしか無いかも知れん。」



「今我々が、この場を逃げても帰路を塞がれれば、間違いなく厄介な事に成る。」



「これ以上、日本から艦艇を割くのは無理だ。」



「何としてでも本国との孤立を避ける為にも、あのローラーナ 帝国軍には、相当な被害を被って貰わなければ成らん。」



 此処で逃げる事を選べば、ローラーナ帝国もデストロイヤーを日本に対して、有効な兵器として判断する可能性すら有るのだ。



 それにこのまま、この地に居座れるのも厄介だ。


 最悪日本の自衛隊の精鋭を揃えての総力戦にでも、成りかねない危険を孕んで居た。



 彼らはこの場で、かの移動要塞戦艦に対して、一撃を与えねば成らないと思い至る。


「はっ、では選抜メンバーを決める様にと池田空将補殿と神谷一佐らに伝えます。」


 この緊迫した状況に置いても、ダバ派遣支援艦隊に派遣された海自隊員等は、しょうかくでも、全ての護衛艦内でも慌しく、そして、冷静だった。


「むう、雲行きが思ったより怪しく成って来たな。」


 小沢一佐は、羽虫を噛み潰した様な苦々しく険しい表情に成る。



 果たして、ダバ派遣支援艦隊の攻撃態勢は、間に合うのか?艦隊に緊張と不穏な空気が包まれ始めていた。

 



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