74話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦 7

 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午前8時43分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・ブラキュリオス湖東部河口付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 会議は更に続く。


 リナは日本人の困った性格に呆れつつ、話を進める。



「本当にニホンは、何かするのに、物事を型に嵌めたがるのね。」



「あんなに凄い物を作れる国なのに、一方では頭が固い。」



「その雑用の大臣様は、実戦で伸し上がるタイプよ。」



「政や戦場で常識を無視が出きるやり方が得意な策謀家・・・・・いや、卑怯者ね。」



「それって例えるなら、ゲームでルールや設定を無視する卑怯なやり方を悪党とは別の意味で、平気な顔でこなす輩の事じゃ・・・・・・・」



 表裏卑怯者と言う言葉がある。


 彼の真田昌幸が日本中の諸大名から言われた言葉だ。


 この場合の卑怯とは、ずるくて嫌な奴と言う意味では無い。


 その意味とは、ずる賢くて、とても頭が良い意味に当たる。


 リナは竜史の事を卑怯な手口を堂々とやって居る事を評価して居る様だった。


「まぁ、この件は此処までにして、折角の高見くんの好意だ。」



「この際、大いに利用させて貰うじゃないか。」



「笹沼、早速だが、自衛隊大陸派遣隊総司令部への通信を入れてくれ。」


「はい。」


笹沼二佐は通信機を用意する様に連絡を入れた。


 10分後。士官室に通信機が運ばれ、CICを通じて自衛隊大陸派遣隊総司令部に連絡を試みた。



「所で瑞樹さん。千棘さん。」


「お二人は揚陸艦隊と前線での指揮官をする件の事をご存知でしたか?」



「いいえ、特に言われて居ませんでした。」



「ですが、愛海様は、わたし達の将来を見据えての事だと思うわ。」



愛実の思惑は、コヨミ皇国の将である二人に、自衛隊の戦い振りを直接その目で見て来いと言うものだろうと思われた。


 まだ、この世界で自衛隊の全力攻撃を何処の国も見て居ないのだ。


 愛海はそれを直接見せようと画策し、経験まで積ませようと言う抜け目のないものだった。



 だから愛美の下から派遣された二人には、派遣先で自衛隊との共闘する艦隊の指揮をお飾りの立場で行う話は敢えて言って居なかった。



 置鮎一佐は、出発の日の事思い出して居た。



「あれは、こう言う時の為の打ち合わせだったらしいな。」



「置鮎さん、何か?」



「いいや、何か嵌められたと思ってな。」



「それは兎も角、通信を自衛隊大陸派遣隊司令部に繋げよう。」



CICで通信士の隊員によって多目的区画からの通信機を用いた通信を自衛隊大陸派遣隊本部の司令部への無線通信機による呼び出しをする。



「繋がりますかね。」



「この辺りの距離なら、ギリギリの距離かも知れん。」



「あっ、そう言えば、そろそろ新型の通信衛星やGPS用の人工衛星が打ち上げられるとか言う話が、我々が日本を出発する前に、ニュースで言ってましたね。」



「ああ、あのアマテラス計画の事か?」



 アマテラス計画とは、日本が次元転移に遭った直後に既存の通信・気象・GPSなどの人工衛星が不足して居るのを補う為の計画だ。


 幸いな事は、日本上空を含めて地球から転移して来た国家で、自国上空の人工衛星も一緒に転移して居た事だった。



 しかし、世界全体をカバーするには、総数が圧倒的に足りなさ過ぎるのだ。


 今までは、アメリカ合衆国を中心とした勇士連合の名の下で、地球全体をカバーする人口衛星機能を共同活用が成され居てが、それも今や僅かに過ぎない物しか、手元には存在して居ない。


 其処でシベリナ連合のある地域と地球からの転移国家の上空で、人工衛星の使用範囲に穴の有る場所を全て無くす計画が立てられて居た。



「それが今頃なら、我々に取っても大変に助かるが、そう都合良く行くものなのか?」



 すると通信士の隊員が声を上げた。



「しっ、静に・・・・・・・・」



 CICに居る船務科の隊員が、息を呑んで通信士を見守る。



「此方はダバ派遣艦隊、旗艦かが、自衛隊大陸派遣隊司令本部へ、応答願います。」



「は・・・い・・・・こち・・ら、自衛隊大陸派遣隊司令本部です。」



「置鮎一佐、繋がりました。」



「おおっ!!」



「かがへ、如何しましたか?どうぞ。」



「今、置鮎一佐に代わります。」



 置鮎一佐がマイクを取る。



「ダバ派遣艦隊司令官の置鮎だ。」


「ダバ派遣艦隊の現在位置は、アルガス公国の領内のブラキュリオス湖に停泊して居るのだが、同地域で問題が発生してしまって居る。」



「この地方のローラーナ帝国の地方軍であるグリクス地方軍団に動きが有り、レジェンダリア諸島に侵攻して来る事が確実との情報が入って居る。」



「至急、交援省に居る最高司令官代理である高見交援大臣に繋いで欲しい。」



「分かりました。暫くお待ちください。」



二人は、それから10分くらい待つ事になる。



 一方の竜史はと言うと・・・・・・・・・・・



 アースティア暦 1000年・西暦2030年・ 6月5日・午前9時00分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・日本列島・日本国・福岡市東側郊外地域・神部町・異世界国家交流総合支援省・交援省防衛監督指令室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 



 交援省の防衛監督指令室に呼び出された竜史は、自分のデスクに座り通信を受けた。


「高見大臣。ダバ派遣艦隊司令官の置鮎一佐から通信です。」


竜史は、ダバ派遣艦隊から通信が来たと聞いた時、予測していた事態が来たらしいと悟って居た。


「竜史です。何か有りましたか?」


「君は落ち着いて居るな。」


「置鮎さんも、慌てた様子では無いですね。」


「此処で皮肉の混じったジョーク言っても仕方の無いな。」


「君も予想して居たか、情報を掴んで居たかは知らないが、帝国軍がアルガス公国領のブラキュリオス湖の中央に位置するレジェンダリア諸島に侵攻を開始しようとして居ると思われる。」



「其処でなんだ・・・・・・・・・」



「ええ、良いですよ。」



「そうかって、ええ?」



「高見君、幾らなんでも説明を言い終わらない内に、即答するのは、早過ぎないか?」


 

 置鮎一佐は、竜史からの武器使用の無制限許可をアッサリと許可する事にツッコミを入れる。


「既にお膳立ては、此方で全て済んで居ます。」


「オマケに、シベリナ連合に属する国家の承認は得て居ます。」


「後は総理と内閣と国会で事後承諾と言う形で、承認して貰えば問題ないでしょう。」


「でも、今すぐには・・・・・・」


「それも緊急時に措ける対応と言う事にして居ますし、何より今は貿易路の安全が最優先ですしね。」



「それに南方から日本へと送られて来る物資は、日本国内の3割程度しか賄えないと聞いて居ます。」


「此処でパイプ・ライン大河の交易路を失う事は、食料・資源・輸出輸入先を一気に失う事に成ります。」



「何より北方の穀倉地帯とドラグリア白龍大帝国との国境付近に接する国からの資源供給先は、我が国の死活問題にも成りますからね。」


「何より燃料たる石油・石炭・ガスは、オホーツク地域とインドネシアを含む旧東南アジア地域からしか輸入が出来ません。」



「戦略資源物資の輸送と貿易商船が極端に少なくなって居る状態の今、輸送コストがバカに成らない。」



「噂では、ドラグリアには石油、石炭、天然ガスが腐るほど在り、その使い道を知らずに、そのまま放置されて居るとか。」


「現政権の与党や無派閥の議員や中立政党なんかは、日本国の存続政策を優先して居ますし、何より転移した暫定政権の在るハワイのアメリカ、ウラジオストク市を含む諸島が在るロシア極東地域。」



「そして、この世界にやって来た事で、念願だった完全なる独立国を宣言した台湾は、食料や燃料や生活物資の早期供給を求めて居ます。」



「これ等の事を考えると、残り時間が余りありません。」



「無茶を承知で言うのなら、交渉と初期開発を同時並行して、やらなければ成らないと聞いて居ます。」



「ですから遠慮せずに、ご自由に、周りの迷惑が掛からないのなら、与えられた裁量権の範囲で好きにやって下さい。」



 置鮎一佐は思わず絶句してしまった。


 好きにやれと、一民間人である竜史に、此処までの政治力が有るとは思えない。


 それは合っている。



 何故なら竜史は全て人任せにしつつ、チェックと入ってくる情報を元に動いて居るだけであるが、プロには予測がし難い素人の所謂、ビギナーズラックと言うもの。



 そんな素人感とオタク的な知識に基づいて行動して居た。


 周りの人材のサポート有っての無茶でもあるのだった。



「分かった。其処まで、準備が出来て居るなら安心だ。」



「後は・・・・・・・」


「此方も無茶言って済みません。」



「ですが予定では、間も無く後続の支援艦隊が合流出きる筈です。」



「その他の支援の準備ね整えて有りますよ。」


「だったら、せめて最後まで、説明なんかを言わせてくれよ高見君。」


「くくくっ、置鮎さんの言いたい事は、大体想像が付きます。」


「ズバリ、航空支援ですよね。」



「来て欲しい時間だけ指定して貰えれば、直ぐにでも出せますよ。」



「取って置きのエース達を送り込みますので・・・・・・」


竜史は、万代市の空自基地で待機して貰って居る神谷達空自隊員達にも、メールを入れ置いた。



 派遣に関する内合わせは、この後のスケジュール調整日程時間が決まり次第、チャット通信を使って行うと書かれて居る。


「置鮎さん、取り合えず作戦が決まったら司令部に、作戦概要を無線で連絡をお願いします。」



「後ですね、アマテラス計画が上手く行ったそうです。7機の人工衛星が打ち上がったそうです。」


「打ち上げに成功した三葉重工は、高笑いが止まらないとか聞きましたけどね。」



「今後、更に打ち上げるそうですよ。」



「ダバード・ロード王国の辺りまで通信とGPS、衛星からの監視が可能に成りました。」


転移前から計画されて居たとは言え、これほどの衛星の打ち上げは簡単では無い。これには裏が有るのだった。



 転移前に三葉重工業は、世界各国からロケットの受注を請け負って居たし、その撃ち上げロケットや人工衛星もチョッと中身を改造して使用目的合わせたりして打ち上げられて居る。


 そんな訳である意味、開発費がタダに成って居た。


 ちなみに支払いは既に済んで居るので、損が無ければ得しかない。



 そんでもって、その衛星の打ち上げが成功しまくりなので、高笑いが止まらないと言う訳であった。



「了解した。では作戦内容が決まったら、また報せる。」




置鮎一佐とのやり取りを終えた竜史は、携帯で大陸の自衛隊司令部に連絡入れた後、安元総理にもダバ派遣艦隊が帝国の地方軍と戦闘に成ると伝えた。


 安元は内閣でレジェンダリア諸島に措いてアルガス公国軍を支援して、同地の安定化を図る為の作戦を自衛隊が行う事を承認したのだった。



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