73話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦 6

 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午前8時37分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔・アルガス公国・モンブラン州・ブラキュリオス湖東部河口付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


スミレイン・デコモリン少佐の率いる空挺艦隊を見送った後、海上自衛隊西部方面派遣艦隊・通称ダバ派遣艦隊は、陸海の司令官以下、各艦の艦長及び自衛官幹部、陸海のヘリのパイロットと陸自の各車両部隊を指揮する隊長に緊急招集が掛けられる。



 主だった一同は、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦かがの多目的区画と言う場所に集められていた。


多目的区画とは、会議や出動などでブリーフィングなど、幅広い目的で使われる場所である。



 ひゅうが型にも在り、かなり広いスペースが有るので、特に今回のような大所帯な会議に打って付けであった。



なお、この場には、コヨミ皇国の高雄瑞樹と愛宕千棘。


アセリナ王国から派遣された12名聖天使騎士。



 同国のヨハンナ・リリロッカ・ヨシカーナこと、ハンナと史上最悪にして最強の魔導師である雷帝と謳われるリナ・ミーサガ・リンバースが参加している。


そして、この場所で今後の重要な方針が決まろうとして居た。


 会議場に集まった幹部自衛官らの目の前には、ダバ派遣隊の総司令官の置鮎竜次郎一等海佐。


 副司令の井上一彦一等陸佐が立って居た。


 会議の口火を切ったのは、総司令たる置鮎一佐である。  


「それでは緊急会議を始める。」


「みんなも大凡の話は聞いているだろう。」


「今し方、アセリナ王国軍の伝令により、複数の情報筋からの報せで、このブラキュリオス湖の中央に位置するアルガス公国領のレジェンダリア諸島に対して、帝国軍の地方軍であるグリクス地方州・グリクス地方軍団の軍勢が侵攻する見込みが確実との事だ。」


各自衛官らが、ざわつく。


「静粛にっ!静粛にっ!」


「司令・・・・・・では、我々は帝国と?」



「いや、それをこれから決める。」



「今此処で帝国と戦えば、国交開設準備中のシベリナ連合との友好が確実となり、帰環時の航路の安全は確実に成るだろう。」


「また、取り合えずこの場は任務を優先し、帰りに帝国領となったブラキュリオス湖を全力で押し通る方法も有るが、これはシベリナ連合各国の日本に対する印象を悪くするし、此方にも少なからず被害が出るかも知れない。」


「だから此処に居るみんなの忌憚の無い意見を言って欲しい。」



「今直に戦うか、それとも帰環時に強引に押し通って最小限に戦いで帰えれるかをだ。」


「置鮎一佐。何故、我々にそんな事を敢えて聞くんですか?」


「まぁ、悪く言えば、我々自衛隊に取っての言い訳が要ると言いたい。」



「成らば、やりましょう。」



「リナさんや瑞樹さんらの話によれば、アルガスの守備兵や騎士団は、今は建て直しの最中で、その人員構成はまだ若い若者ばかりと言う話だそうです。」


「それに女性騎士も、それなりに多いと言うじゃないですか。」


「そんな人達を戦わせて、俺達は、少しだけ弱った帝国軍を嬲りながら帰国する卑怯な真似をするって言うんですか?」


「確かにそうだが、良いのか?今の状況では、シベリナ連合各国と臨時の相互防衛協定だけしか結んでいないとの事だ。」


「そんな中で、碌に連携を取れていない国を現場の判断が優先されると有るとは言え、自衛隊が進んで助ける事は、後で野党議員の先生方がうるさいし、反戦運動の槍玉に挙げられるんだぞっ!!」


「構いません。」


「言い換えれば、此処は大局的に国益と外交の益にも叶う上に、若い人命を多く救えるのですから。」


置鮎一佐は海自の反対は無しと見て、井上一佐に眼をやる。頷いた井上一佐は皆の前に出ると陸自メンバーに問う。


 それに今の日本国では、ダバ派遣艦隊に与えれて居る権限はある程度大きい。


 現場の判断も優先されて居る。


 後は国内問題をどう切り抜けるかに掛かって居るが、余程の事態にでも成らなければ、問題無い筈た。


 更には、シベリナ連合各国の臨時の防衛協定が結ばれて居るとの話も有るので、心配の種は、日本国内の反戦団体くらいだった。


「陸自各幹部に反対、または意見はある者は?」


「戦車隊及び車両各中隊は、この戦いに参戦に賛成します。」


椎名ひかる三佐以下の車両を扱う各隊長は、立ち上がって賛成を示した。


「ヘリ各部隊も同じく。」


「右に同じ。」


黒多宗近一尉と東地秀矢一尉以下の各ヘリ部隊長も賛成した。



「だそうです。勿論、私を含めた普通科部隊も反対は無しです。」


「置鮎さん、後はあんたの決断しだいだ。」



井上一佐が、そう言い終ると彼は命令を発した。



「そうか、ありがとう諸君。」



「ニホンって所は、戦一つするのに、こんなにも大仰な事を言ったりするの?」



「あたしや他所の国が見たら凄っくヘン。」



リナは会議の一連のやり取りを見た上での率直な感想を述べて居た。



「あはは、耳が痛い。」


「リナさん、貴女の言う通りだよ。」



「家の国は、一つ戦闘するに手続きがいるし、現場の判断でやる場合も事後承諾か、判断責任を後で取らされる。」



「これが民主主義の文民統制国家の限界なのろうなだ。」



「だが、今はやらなければならない。」



「其処でだ、高見交援大臣から渡された封書を開封する。」



「笹沼、開封時刻を・・・・・・・」



置鮎一佐の手には、竜史から手渡された2通の封書の内の一通を持っていた。



「ええっと、時刻は・・・・・・10時30分丁度です。」



「俺が封書なんて物を開ける事に成るとはな・・・・・・・」



封書の指令書なんて方法を取るのは、前大戦以来だろうか?少なくとも、今の自衛隊が、機密文書での指令のやり取り事態が、ほぼ有り得ないのだから・・・・・・



「置鮎一佐、今は愚痴よりも・・・・・・・・」



 笹沼二佐が苦笑を浮かべながら言う。 



「ああ、分かってる。現時刻を以って封書された指示書を開封する。」



 開封を開封すると、中に書かれていた事は以下の通り。


一つ、帝国との已む負えない大きな戦闘に巻き込まれ、または回避不可となった場合は、交援大臣の権限の一つである最高司令官代理として、これを許可する。


一つ、戦闘までに連絡可能な地域に居る場合は、高見竜史と日本国自衛隊大陸派遣隊司令部基地に一報を入れて欲しい。空自の支援を含めた対策を此方でも検討したい。


 一つ、なお、連絡が取れない場合は、置鮎竜次郎司令官の采配に一任する事と成る。


一つ、日本国とコヨミ皇国との協議の結果、揚陸艦隊の前線指揮官を高雄瑞樹大将、副官に愛宕千棘中将とするが、実際の指揮は自衛隊が執る事とする。


 ダバ派遣艦隊の自衛隊は、現地の地理と情勢に詳しい二人の助言や相談をして貰いながら、円滑な作戦遂行をする事。


一つ、現地軍との協調を優先とするが、全軍の指揮は自衛隊の司令官とする。


 この件に付いては、コヨミ皇国に駐在する各国大使を通じて、各国の元首及び関係閣僚と各省庁、国軍ははダバ派遣艦隊が西へと向かって居る時には、既に話し合いが終わって居る事と成って居る筈と成って居るので、存分に力を発揮されたし。

                             

  以上

                           

  高見竜史 交援大臣。 



置鮎一佐が封書を読み上げ終えると、その場いる全員がその内容に驚いて居た。


 封書を手配した竜史は、政治・軍事に措いて、全くの素人の民間雑用のお飾り大臣に過ぎない。


 彼は三国志の著名な軍師たる諸葛亮孔明の様なノリで、妙計を置鮎一佐等ダバ派遣艦隊に手渡していた。


 これが三国志の劉備やその配下の将軍なら、喜んで孔明の企てを活用する事だろう。


 だが、此処に居る自衛官らは、その事を素直に喜べずに居る。



 素人同然の竜史が、外務大臣や軍司令官たち顔負けの駆け引きをして居る事に、驚きを通り越して、呆れて何も言えずに居たのだった。



「置鮎さん、高見くんは、如何やって、この内容を纏めたのでしょうか?」



「知らん。俺も知りたいくらいだ。」



「彼は少し変わって要る性格の青年で、雑用くらいにしか役に立たない若者だと思う。」



「社会人として経験も無いし、組織での仕事も全くの素人だ。」



「それが何故?」



 笹沼二佐の疑問をリナが答えた。



「それは、その高見とか言う素人大臣だけの力じゃないわ。」



周りの視線が一斉にリナに向く。



「それはどう言う事かな。リナさん。」



 置鮎一佐はリナに問う。



「ふっ、答えは簡単よ。」



「全部、紅葉が影で動いて居るからよ。」



「紅葉皇女殿下がか?」



「ええ、紅葉が企んで色々と裏で手を回して居るわ。」



「ニホン政府も交渉事が妙にやり易かったりしなかった?」



「そう言えば・・・・話し合いが妙に上手く行き過ぎて居ると、各省庁の官僚達がぼやいて要るとか聞いたな。」



「あの子は政治には、興味は薄いし、口を挟まないけど、自分と自国が危ない時にする交渉の根回しは上手いわよ。」



「親友のあたしが言うのだから、まず間違いないわよ。」



「親友だからこそ分かる裏事情か・・・・・・・」



リナは紅葉との関係に付いて、特に公言して困る事では無いが、言い触らす事でもないので、質問が無ければ言いふらすことを果て居ない。



「その高見とか言う大臣も、かなりのやり手ね。」


「紅葉の地位やあの子の企みを知った上で謀を共謀して居る様だし、紅葉も色々とニホンや彼の地位を利用して居る。」



「いや、共闘して居ると言っても良いわ。」



「共闘ね。」


 とてもそうは見えないと誰もが思って居た。


 あの二人の関係は、如何見ても暴君の姉が弟を猫可愛がり(いびりながら利用してるとも言う)している様な関係にしか見えて居ない。


 それを例えるのなら、ハリセンを持った女子高生が、傭兵をしている軍曹殿と一緒に居るような感じだ思う。



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