68話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦 1

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午前9時40分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国領・グリクス地方州・グリクス市・グリクス港・グリクス地方軍団・グリクス地方中央戦線区・ローラーナ帝国軍・グリクス地方軍団官庁舎にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 此処はブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方と言う地方。


 この地方を統治領として居るは、やはり覇権主義国家たるローラーナ帝国であり、その象徴とも言うべき軍隊が置かれて居る。


 その名もグリクス地方軍団である。


 グリクス地方軍団が支配下に置いて居るのは、ブラキュリオス湖の北部を国土とするアルガス公国のモンブラン州との湖の沖には、レジェンダリア諸島が在り、対岸の帝国領までのその距離は、僅か150キロの距離に位置して居た。



 この湖の形は、地球で例えて言うのならば、黒海に近い形をして居る。



 そのブラキュリオス湖の南部にある軍港都市たるグリクス市には、グリクス港と言う巨大な湖畔軍港が整備されて居る。


 其処には、幾つもの軍船が接岸できる桟橋が作られ、何百隻もの軍船が係留されて居る。


 更にグリクス市の南内陸部に目をやると、魔動力式で動くホバー方式型陸上戦艦が並べられて居る。


 魔導陸上戦艦は、帆船型と装甲艦の二種類が有り、装甲艦の姿は、丸でSF映画かアニメに出て来る戦艦の姿に似ていた。



 その全長が100メートルは越えて居て、ちょっとした護衛艦みたいであった。


 主兵装が大砲やバリスタ、魔導師の魔法攻撃、竜種各種を用いた家畜竜部隊が艦内に格納されて居る。



 厄介なのが陸上だけで無く、水上も航行可能と言う点である。


 この艦が兵や兵器を輸送する揚陸艦や輸送艦の代わりを果たして居た。


 その他にも空挺戦艦や空中竜母艦等が飛行船場と呼ばれる場所で、駐機されて居る。


 近くには竜舎が在り、飛竜や翼竜が飼育されて居た。


 この世界の軍事力の水準で、帝国は最強であり、最高の物を備え、此処と同じような軍事施設が設置されて居る場所が、幾つも在るのである。



 覇権主義国家たるローラーナ帝国の軍事常識の戦法の定石として当たり前とされ居るのが、兵士と兵器による圧倒的な物量を持って進軍し、その力を持ってして攻め入った敵対国を征服する。



 それが帝国の軍事力と戦い方のスタイルの定番なのであった。


 そして、この地には、大小4千もの陸水空と3軍の軍船が並べられ、今正に北進すべく出撃体勢に入って居る所なのだ。


 このグリクス地方軍のトップは、ガミトフ・バイマン中将と言う。



 冷徹な将校で、歳は40代の後半、同地方で有数の軍団を持つ人物である。



 その他の配下の将校として、ガミトフを支えて居るのが、ババロスク・オバム大佐、ジャーマン・ダニーガン中佐、カバディ・キゼン少佐等である


 その彼等が軍団司令部内の会議室に集まり、レジェンダリア諸島への侵攻作戦為の最後の作戦会議を行って居た。



 通称グリクス軍団と呼ばれる地方軍の幹部将校等は、テーブルを囲んで座って居た。



ガミトフは、シベリナ地方中央部への侵攻し、アセリナ王国、アルガス公国、ダバード・ロード王国を分断し、ドラグリア白龍大帝国とオローシャ帝国、ラクロアナ王国、コヨミ皇国らそれぞれ孤立させる作戦を計画して居た。


その第一段階であるブラキュリオス湖のレジェンダリア諸島を制圧し、自国の勢力圏を手に入れ、その拡大を図る事で、ユーラシナ大陸の東西交易権の独占と連絡路を断とうと言うものである。



 このパイプ・ライン大河の水上交通路を手にし、一気にシベリナ地方の各国に対して喉元に剣先を突き付ける物であった。


 そんな計画が進められて行くユーラシナ大陸の情勢下の中で、遥か東の果てに在る日本が、地球世界からアースティア世界へと転移してから二月が過ぎて居た。



 ローラーナ帝国側は、未だに日本に付いての正確な情報が掴めずに居た。



そして、新たなる情報が、ローラーナ帝国東方軍の各軍に届いたのであった。


「ガミトフ閣下っ!!!大変でありますっ!!!」



 秘書官が、今し方に入って来た急報を持って現れた。



「如何したっ!?」


「今から二日ほど前の事です。東洋方面へと定期周回遠征任務行動を取って居たローラーナ帝国・第一外征艦隊は、巷で噂のニホン国へと侵攻し、敗戦したとの事であります。」



「何っ!?あのギワザンの奴めが、正体不明のぽっと出に過ぎない新興国に敗れたのか?」



「はい。ギワザン閣下の総旗艦である魔導空挺戦艦ザージェント・ギワザンもかなりの被害が出ている模様との事です。」



「うーむ。」



 ローラーナ帝国軍部に措ける常識では余りにも有り得ない事ゆえに、その心に受けたショックの衝撃の余り、ガミトフ中将は黙り込む。



「ガミトフ閣下、更に不味い事に、第一外征艦隊を討ち破った、そのニホン海軍が、今ブラキュリオス湖に居座って居る様なのです。」


「ぐっ!!これから北へと侵攻を計画して居る時期に、それは厄介だな。」


ガミトフ中将は、日本が転移する前からレジェンダリア諸島の奪取計画を立てて居た。



 無論、立身出世の為であり、帝国軍内での発言権を大きくしたいが為にである。



 2月前に、ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊・第120艦隊を屠ったと言うニホン海軍。


 そのニホン海軍の艦隊が、西へと派遣され、パイプ・ライン大河を遡上して居ると言う情報をローラーナ帝国・第三方面軍・帝国東方制圧軍と第三方面軍総司令部や彼自身も掴んで居た事だった。


 ガミトフとグリクス軍団は、グリクス軍団として二ホン海軍艦隊と、どう対峙すべきかを悩んで居た。 


 彼らは敵対して居るそれらが来る前か、やり過ごしてから同地を占領するかを今議論している最中だったのである。


「帝国政界でも指折りの名家であるグレッサ家の小娘を破ったとか言う国の海軍か・・・・・・その情報は本当であろうな?」



丸で傭兵業を生業にして居る海坊主かタコ坊主と言った感じの丸い眼鏡を掛けた大男が立っている。


 彼はババロスク・オバム大佐と言い、ガミトフ中将の腹心である。



「はい、それは間違いなく。本当の事のようです。」


「生き残った男爵位を持つベンジョン准将が、ゾイザル殿下に仔細を報告申し上げたとか。」


「それに第一外征艦隊の帰還した者達も、似た様な戦場での体験談を報告しており、疑う余地は無いかと・・・・・・・」



此処でもベンジョンこと、ベン・ジョンソンは、そのヘンテコリンで言い辛い名前を言い間違えられて居る。


 しかも生意気な事に、彼の軍属としての階級が准将らしい。


 ローラーナ帝国内では、上位の階級と爵位を手に入れたければ、金と実力とティパーティさえ開ければ簡単に手に入れられるのである。



 最も簡単な方法は、家の七光りである。


 敗れたアディーレ・グレッサは少将で、家が帝国の侯爵位を持ち、帝国政界でも大きな発言力を有して居て、帝国でも珍しい比較的まともな貴族の家であった。


 彼女は小さい時からお転婆で、嫁の貰い手が無いと言われ居り、フラフラしているのも体裁が悪いので、父が東方の帝国領の辺境侯爵位に任じ、分家扱いして放逐して居た。


 序でに彼女を慕って居る妹や家臣らも付けて送り出していた。


 その彼女は、帝国では行方不明扱いと成って居たのである。



 法律では半年から一年半経っても当主が戦場から帰還しない場合は、新たな当主を立てるが、ローラーナ帝国貴族法での決まりだった。


 しかしながら、その行方を捜索して居るローラーナ帝国領・シャッポロ属州領政府と軍部では、アディーレ・グレッサの行方は分からずじまいとして扱われて居たのであった。


「ふん、近頃の諜報活動する帝国情報局の者共や軍の将校幹部の奴等は、見栄ばかり張りおって、虚言ばかりの報告が目立つ。」



「やはり、此処は我々が率先して戦果を立てるなどして貢献し、軍部や政界での発言を強め、改革を押し進めねば成るまい。」


「全くその通りですな。」


「ニホン国とか言う訳の分からない国家に付いての情報も、本国直轄の諜報局の者達では無く、自前の間者ので、調べさせた方が正確で有るとはな。」


「全く持って上層部の面々にも困ったものです。」


「ニホンに付いての報告は、他には何か無いのか?」


ガミトフは部下達に尋ねる。



 するとチョビ髭生やした融通の利かなそうな雰囲気のオッサンが立ち上がり答える。


 そのオッサンこと、ジャーマン・ダニーガン中佐が立ち上がり、詳細を報告を始めた。


「閣下、各方面の情報を集めた所によると、ニホン国は異界から来たと言う妄言めいた事を風潮して居るようです。」


「異界から現れた?」


 ガミトフは部下からの報告に首を傾げた。



「ですが、このニホン国の主張は真実の様です。」



「その根拠は何だ。」



「その根拠は、実際に万代市に潜入している密偵からの報告です。」


「それも一人や二人では有りません。」


「複数の筋・・・いいえ、全員と言っても過言では無いでしょう。」



「ほぉ、それでもわしは信じ難いな。」



「流石はガミトフ閣下です。」


「どんな些細な情報でも裏を取るまで信用を為さらない。」


「いやはや、慧眼でありますな。」



「そんな事は如何でも良い。」



「はっ!閣下、これをご覧ください。」



ジャーマン中佐が差し出したのは数々の護衛艦の写し絵である。


 画家に扮した密偵が書いたものだ。


 画家に変装するだけあって、書かれて居る絵がプロ級である。



 帝国の密偵には闇の部分があり詳しい説明は省くが、それぞれ専門の職に就ける様に特別な訓練を受けさせれらて居る。



そして、あらゆる顔を持つスパイが各国に入り込んでいるのだ。


 その艦長網は007が所属する諜報組織も脱帽するほどの人数が、アースティアの世界中散らばって潜んで居ると言われて居る。


「変わった姿をした船おるのぉ、先端に大砲らしきものが有るが、これは軍艦か?」



「はい、密偵らの報告書に由れば、ニホン海軍のゴエイ艦なる軍艦であります。」



「そのゴエイ艦とやらが、我らに上申報告するほどの物なのか?」


「見る限り、この軍艦は大砲が一門有るだけで、これと言った特徴が有るとは思えん。」



「軍艦等は、何処の国も形や姿に差異は、有れども性能に大きな差は有るまい。但し、特殊艦を除けばな。」


特殊艦とは魔動炉を使った空挺艦や魔導陸上戦艦、魔導水上戦艦等を指す。


 これらは長年の魔導研究や古代遺跡、異界から転移して来た遺跡の技術を元に作られた兵器である。



 それ以外は普通の帆船を使った船しか無いのである。



「流石の閣下でも、この絵図だけでは判断が付き辛いと思われます。」


「先ずは、この報告書ご覧ください。」



ジャーマン中佐が次に提出したのは龍雲海沖海戦の報告書である。


 生き残った将校や兵士から聞き取った調書は、とても荒唐無稽で信じられない様な、ぶっ飛んだ話であった。



「龍雲海での海戦結果に付いての報告書か・・・・・・・・」



ガミトフは、ジャーマン中佐に言われるままに、ファイル式の本に纏められた報告書に目を通した



「何っ!!ニホンの軍艦の大砲が一撃で竜騎士が操る飛竜を打ち落としただとっ!?」



「信じられないでしょうが、これは事実です。」


「証拠は、生き残った将校や兵士の証言で有ります。」


「先にババロスク大佐も申し上げた様に、ベンジョン准将が証言して居ますし、殿下への報告でも事実と証言しており、裏付けも取れて居ます。」


 ぷぷっ。また、ベンジョン扱いである。


 そんな事は、当然ながらスルーするが、会議室に出席する将校らは、戦場での恐怖心や自己保身を目的として書いた大げさな誇張では無いかと疑う。


 現場に居合わせた者達が、恐怖の余りに錯乱したのだと言う者も会議に出ている将校らが騒ぎ立てていた。



「静まるのだっ!」



 ババロスク大佐の大きな声が会議室内に響き渡る。



「不必要な発言と野次は、軍内での不和と疑心を呼び大きくし、やがて互いの不信となり軍の崩壊へと繋がる。」


「そして、規律と協調が取れなくなった軍内部に置いて、好き勝手な行動とる将校が現れれば、必ず戦に敗北をする事と成るのだぞっ!」


「それ即ち帝国の敗北だ。貴様らは、その事を分かっとるのかっ!!」


会議室は一時騒然となる。



 だが、ババロスク大佐の一喝で会議室内は静まり返えるのであった。


「閣下。」



「うむ。会議を続けよう。ジャーマン中佐、続けたまえ。」



「はっ。ではニホン海軍のゴエイ艦なる戦艦の性能を語る前に、龍雲海での戦況に付いて報告書を纏めて有りますので、次のページをご覧下さい。」


 将校らが報告書のページを確認し、ページが一斉に捲られた。


「約2月前の事です。」


「ニホン国が主張する事に由れば、二ホン国の国土とニホン国と同じ異界より現れたのは、二ホン国と友好的な多数の異国の国土が、この世界に転移したとの事です。」


「彼の国と異界国家群は、その国土転移災害で、国内が大混乱に見舞われたとの事であります。」


「丁度その頃、時を同じくして従属同盟をさせて居りますドラグナー皇国。それと我がローラーナ帝国領・シャッポロ属州領やコヨミ皇国らが接して居る龍雲海での一騒動が起きたのです。」


「それは国境の領海の海である龍雲海にて、我が帝国の海軍は、謎の巨大な鋼鉄船を発見したそうです。」



「我がローラーナ帝国・第三方面軍・帝国東方制圧軍に所属する帝国海軍部のローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊・第120艦隊は、当時30隻の戦艦を率いて定時警戒警備をして居りました。」



「この時にコヨミ皇国で南西国藩を治める嶋津義隆が率いる嶋津水軍は、同地の警戒警備を視察に来ていた紅葉皇女を乗せて12隻の水軍艦船を率いて居りました。」


「一方のニホン海軍側は、9隻ゴエイ艦を率いて現れた様であります。」



「その時のニホン海軍の動向に付いての情報は有るのですかな?」



 不意にある将校が質問してきた。


「いえ、詳細に付いては分かり兼ねます。」


「ですが現在の所、コヨミ皇国内の万代市と皇都の星都市にて、ニホン国の情報と動向を我が帝国軍の情報部やグリクス地方軍団の情報部が、内情を探って居ります。」


「これは推測ですが、ニホン海軍がこの海域に現れたのは、単純な理由で、自国の鋼鉄船の救援に来ただけでは、無いでしょうか?」



「救援?」



「はい、そうです。」



「一つ疑問が有るのだが、海向こうに在る筈のニホン本国は、一体どうやって遠くに居る鋼鉄船の危機を知ったのだ。」



「其れこそが、ニホン国の謎めいた能力の一つと私は考えて居ります。」



 どう言う事だと騒ぎ出す会議出席者。



「日本に関する情報が一切手に入らないは、日本が特別な手段を用いて通信のやり取りをして居るのでは、無いかと推測されます。」



「なるほど、これまで得て居る話や諜報活動での少ない情報から、その事が、推測出来るな。」



 ガミトフは、数少ない情報からの私見を述べた。



「情報が全く手に入らない訳で無いのですが、情報漏れは、如何なるどんな大国であれ、中小国であれ、必ず何処かに抜け穴が在る物です。」



「本来ならば、我が帝国も含めて情報漏れと言うのは、絶対に有っては成らない事ですが、それでも抜け穴が出来てしまうのは、我が帝国も例外では、有りません。」



この世界の国家では、情報漏れに関する処罰は甘い処が有った。


 人の口には、決して戸が立てられないのだ。


 大なり小なり何所かで情報を持った者が、防諜戦の犠牲になる事が当たり前なので、国家と所属する組織に対して重大な規律違反でもしない限り、死罪に相当する処罰を科さないのである。



「そうだな。この件に関しては引き続き情報を探れ。そろそろ話しの続きに戻るとしょう。」


日本の情報通信伝達能力に付いての謎に関する質問は、一先ず終わる。



「当初は我が帝国海軍は、謎の鋼鉄船を拿捕しようと砲撃を開始して居りました。」


「しかし、同海域はコヨミ皇国との国境の境に有り、コヨミ皇国側は、鋼鉄船を助けようとした模様です。」


「この紛争に措いて、ニホン国は自国海軍を派遣し、たったの9隻の救援艦隊を出撃させたとの事です。」



「ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊・第120艦隊は、たったの9隻にも勝てないほど落ちぶれた者達なのか?」



「それとも指揮官が無能なのか?」



列席者の中から、同然の言葉が呟かれた。



「それは違います。」



「何故だ?」



「ニホン軍は当海戦にて、先制攻撃に鉄の飛行竜なる兵器をを投入したようです。」



「鉄の飛行竜?」



彼らが言う鉄の飛行竜とは、空自の第9航空団那覇基地所属の101小隊、202小隊、303小隊のF‐15戦闘機の15機の事である。


 この機械式飛行戦闘兵器の登場が、空戦での竜騎士を有する竜空母と空挺戦艦の有利主義における戦闘に終止符を打つ事になる。


 以後の空戦での主役は、ジェット機と科学的に設計された魔導兵器と追加装備が付け加えられた生物兵器が主流と成るのであった。



「これを以後の説明では、鉄竜と呼称します。」


「この鉄竜に搭載されて居たらしい空飛ぶ鉄の槍や魔導弾の様な攻撃に、我が帝国艦隊から飛び立った60騎もの飛竜隊は次々と撃ち落とされたようです。」



敗走し生き残った者達の証言を様々な観点から考察された報告書の説明に、息を呑んで聞く出席者らは、そのまま黙ったまま話を聞き入る。



「更に我が海軍に対し、降伏勧告及び撤退勧告を促しましたが、当海戦を指揮するアディーレ・グレッサ少将及びベンジョン准将は、当然ながらこれを拒否しました。」


「これはニホン国のゴエイ艦なる戦艦を侮った、いや、戦闘力の評価を見た目だけで判断した結果、勝てると踏んだものによる物の判断と思われます。」



「ふむ。確かにな。」


「この戦闘結果の報告書を事前に知らされて居なければ、アディーレ少将らの判断は間違いでは無いな。」



 ガミトフは、この海戦でのアディーレが下した指揮官としての判断に間違いは無いとした。



「はい。ですが閣下。恐らくは此処に居る誰もが・・・・いや、 ローラーナ帝国軍に所属する全て者。」


「いや、もしくは、この世界全ての国の軍が、もしもニホン軍と戦争すれば、何れの将校も同じ判断をするでしょうな。」



「ワシもか?」



「恐れながら例外は無いかと。」



「ふっ、貴公も冗談が過ぎるぞ。」



ガミトフとオバム大佐の二人は微笑し、周りが笑いが漏れ聞える。


 ジャーマン中佐は苦笑しながらも会議を進行させる。



「失礼いました。話を続けます。」


「ニホン海軍は鉄竜の攻撃の後、降伏と撤退を促したのは説明しましたが、拒否と同時に 我が方の帝国艦隊を二つに分けました。」


「ニホン海軍に対して、アディーレ少将自ら立ち向かわれたとの事です。」



「ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊・第120艦隊は、東に進路を取り、艦隊戦の準備態勢に入りました。」


「所がニホン海軍は、鉄の槍を飛翔させ、我が帝国艦隊を攻撃し、続けざまに砲撃を加え、次々と我が方の艦船を沈めて行きました。」


「それも凡そ10キロも離れた地点からです。」


「10キロもか?」


 帝国側からすれば驚愕の距離である。無論、この情報には穴だらけで、自衛隊の正確な兵器の情報を掴んでは居ないのである。


「はい、そうなのです。」


「その結果、鋼鉄船を攻撃していたベンジョン准将の艦隊は敗走し、その艦隊うち数隻は拿捕され、アディーレ少将艦隊は、行方知れずに成った様です。」


「恐らく何隻かは敵軍に拿捕され、残りは沈んだのかと・・・・・・・」


何れにしても、生きて居ること事態が絶望視されて居ると書かれて居るのを付け加えて、龍雲海沖海戦の経緯説明をして居たジャーマン中佐の話が終わった。


「ジャーマン中佐、解説説明をご苦労であった。」


「さて、諸君。これから我々が行うレジェンダリア諸島の攻略戦だが、少々変更がある。」


「帆船型の戦列艦を中心に、旧型の艦船を配備しつつ、造船が容易な艦船を中心に編成を変えて行く。」


「そして、全ての主戦力を後方15キロの拠点に移す。」


「閣下、もしや?」


 ババロスクがガミトフの考えを察したようである。


「そうだ。ニホン軍とやらの行動に付いて、考察し、ワシなりに考えた結果だ。」


「ワシは二ホン軍は、非常に危険な存在だと認識する。」


「前線は変えども、兵員の方は補充が利く者らを中心に編成をし直せっ!!!」


「此処とそして、周り拠点からも、主力と成り得る主な将校らを直ぐにでも移動させろっ!!!」


「それも火急的速やかに分散しながらだ。敵方に此方の意図を悟られてならない。」


「我がグリクス地方軍団の移動は、次なる作戦の為の警戒行動と拠点の穴埋めであると言う噂で流せっ!!!」


「恐らくレジェンダリア諸島に戦を仕掛ければ、ブラキュリオス湖に居座るニホン海軍は、周辺国から救援を求められるだろう。」


「そうでなくとも帰還する折には、必ず戦に成ると予測される。」


「奴らは今、恐らくだが、単に補給と休息の為にブラキュリオス湖にて停泊して居ると見た。」


「何方にしろ戦と成れば、此処や周辺の城塞が空襲を受ける可能性はあるだろう。」


「それらを踏まえた作戦を練るのだ。」


「如何に敵が強大な力を持とうとも、弱点や隙を付ければ、攻略の糸口が見えて来る筈である。」


「奴らは遠征艦隊だ。補給物資の事も在る。長期戦は出きまい。」



「其処まで考えて予測されて居られるとは・・・・了解しました。」



「それでも我らは仕掛けねばならん。栄えある帝国と我らの為にもな。」



「はっ!!全軍に出陣の準備と参謀らには、攻略作戦の策定を命じます。」


 その場所に居る将校らは、一斉に敬礼をすると、それぞれの持ち場へと慌しく向うのであった。



「失礼致します。閣下、少しお耳を拝借致します。」



「何だ?」


 

 突如現れたのは、ガミトフ直属の情報部の者である。


「実は・・・・・・・・」



「何!?北のロリババア大帝に妙な動きが?」



「はっ!目下の処、詳細は調査中では有りますが・・・・・・・」


「あのロリババアが動くと町一つ、城砦一つ、5個師団が、嵐に巻き込まれるかのように簡単に消し飛ぶ。」


「急ぎ、我が軍団の速やかな移動をせよと伝えよっ!!」


「アレはニホン軍よりも性質が悪く。天災の様に始末に終えない。」



「何せ気まぐれで有るからな。」


やれやれ厄介だなとガミトフは思いつつ、念の為の軍の退避行動が、思わぬ形での軍団本部の引越しが、本格的に成る予感をせざる負えないのであった。



 例えるなら反地球政府団体に攻められるからと、南米本部基地の機能を引越しさせる地球政府軍の様であると言えた。

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