66話 雷帝のリナと頭の可笑しなハンナ 1
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月5日・午前2時10分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国領・グリクス地方州にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
クリスがレジェンダリア諸島へ援軍に急ぎ、自衛隊の西方面海自派遣艦隊こと正式名称ダバード・ロード王国派遣艦隊。
通称ダバ派遣艦隊は、帝国軍の勢力圏から一番に遠い位置で、味方との合流を目的とした地点の安全を確保しつつ、不必要な戦闘を避ける様に勤めていた頃の事である。
そのダバ派遣隊が、ダバード・ロード王国へと向う途上で燃料と休息。
そして、増援艦隊との合流する為に、ブラキュリオス湖の西側の停泊地と定めた場所へと向って居た時だった
アルガス公国とローラーナ帝国軍・グリクス地方軍団との係争地帯で、間も無く両者による紛争の火蓋が切られ様として居る。
そんな戦火の迫る状況の中で、これらの状況とは全く関係の無い者達が、ローラーナ帝国領内の各地にて、帝国相手に対して、たった2人で暴れ回って居た。
その二人とは、コヨミ皇国の第一皇女・紅葉に最も縁ある人物達である。
黒い雲が天を覆い、ゴロゴロと言う音が鳴り稲妻が其処彼処と大地に降り注いで居た。
ローラーナ帝国軍が、あさくら号襲撃に端発した日本国との軍事衝突は、シベリナ地方各地で。全く別の衝突をも、呼び込もうともして居た。
ローラーナ帝国と言う覇権主義国家は、誰かが失敗すれば、別の誰かが戦果と手柄を上げる好機と見て動き出す。
己の名誉や野心溢れる欲望を目的に行う大規模な軍事作戦の準備が、このグリクス地方州で進められて居た。
帝国兵がシベリナ地方東部へと兵士や補給物資、資金等を運んで居た時の話である。
グリクス地方軍団の統治と軍のトップたるガミトフ・バイマン中将は、ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊の敗退とローラーナ帝国海軍・第一外征艦隊の東方海域で動きを冷静に分析をして居た。
そして、ガミトフは、世界の各勢力が東方地域に対して、多くの視線が集まる中。
これを機にアルガス公国への奇襲侵攻作戦の好機とも捉えていた。
その為に、ローラーナ帝国の各地から、独自のコネクションを用いて、夥しい数の兵士と物資、軍資金を掻き集めていた。
その動きをシベリナ連合各国は、勿論、見逃す筈も無かった。
その動きに警戒しつつ、ローラーナ帝国に取って、今や厄介な刺客を放って居たのである。
「・・・・・・・来たわねっ!!帝国っ!!」
「くっくっ、今こそっ!!我の力を奴らに見せ付ける時っ!!」
時刻は深夜2時。
その刺客は、闇夜に紛れて帝国軍に、奇襲を仕掛け様と遠巻きに見て居た。
その刺客は現れる時、その周囲には雷鳴が轟くと言う。
「はぁ~、何か空模様が怪しい雲行きだな。」
「そうだな。」
「そうい~や、こんな天気になると、輜重隊をはじめとする輸送関係の部隊は、あのドラサダに殺れるって、専らの話だぞ!」
「はぁ?!ドラザダ???」
聞き覚えの無い通り名に、同僚に聞き直す帝国兵。
「誰だよ、そいつはよ。」
「リナだよっ!!リナ。リナ・ミーサガ・リンバースっ!!」
「えっ!?あの雷帝か?」
名前を耳にし、顔が真っ青になる若い兵士は、その悪評の噂を耳にした事が有るらしく、恐怖の余りに狼狽たえてしまう。
「そうだ、今や帝国に取っての死神と言われて居る女だっ!!」
「彼の天才的な魔導師と謳われる雷光の魔術師に喧嘩を吹っ掛けたら、己の無能を悔やめ。」
「アセリアの頭の可笑しな聖光の天使に罰を下されたなら自身の愚考を後悔しろっ!!」
「ドラグナー皇国のアイアン・ブラッド・プリンセスと戦場で出会ったら、戦神を呪えっ!!!」
「そして、白龍大帝に睨まれたなら、その場から逃げられるとは思うなっ!!」
「これ等に鍛えらし雷帝に出会ったなら、人生の終わりと諦めろっ!!・・・・・って噂されて居るらしいな?」
「最近じゃ、冥界の王だろうと魔王だろうと如何なる神々だろうが、はたまた破壊神に、凶悪な古代兵器だろうと一撃で滅する。」
「最近じゃ、世界最強の生物の一つである竜族の一匹が、奴の殺気と落雷を恐れて避けて逃げ行くと言うのを見かけた奴が居るらしいな。」
「兎に角、昨今では特に要注意と言われし、噂の絶えない女魔導師さっ!」
「だからドラサダなのか?」
「そうそう、俺が知ってる話じゃ、途轍もない美女で、それに似合わず、凶暴で胸がデカイが態度もデカイ。」
「何かと言うと直にキレるし、金に意地汚く兎に角ガメツイっ!!賊徒と帝国兵士をいびり倒す、帝国キラーと呼ばれてったけ?」
「奴の通り過ぎた跡は、全て焼け野原の荒野と化すらしいって話だな。」
如何やらリナに付いての噂話には、かなり噂に尾ひれがついて居るらしい。
これは意図的に流された噂でもある。
流したのはエリノア・ドラグリア大帝ことエリンが、噂話を意図的に垂れ流した張本人である。
リナが彼の国を出た後、リナ個人の私物や資産を預かり、後見役を引き受けていた。
その数ヶ月後に、リナが帝国軍を襲撃したと知ると、その襲撃数に応じて細々と尾鰭を付けた噂を流してやった。
そして、その噂は、帝国軍に対して、絶大な効果があった。
まあ、その噂は殆んどは、嘘じゃ無いんだけどね。
基礎体力と魔術基礎の課程を修了させ、卒業試験としてある事やらされた。
それは竜人族と竜族との修行で、死にもの狂いで戦わされたり、エノリアの無茶振りでドラグリア国内の野生の竜種族に対して、竜に怪我をさせない範囲でリナに戦えと言ったり、しかも真冬の吹雪の中でだ。
他にも帝国の同盟国の移動要塞を破壊させたり、機兵軍団を全滅させたりと、リナ本人は、もう、どうやって力を付けたのか覚えていないと言う話だ。
エリン曰く「死なきゃ出きる。やれば出きる。成せばなる」何て事を言いつつ、にこやかな満面の笑みで、リナに言い放ったのである。
あのロリババアは、リナの修行に際して、己が家臣達と各地の知人らに由る味方の支援が有ったとは言え、その鍛え方が無茶振りにも程ある。
「けどよ、その二股なんとか四つ股とか言う女が、何だって天下無敵の帝国軍を襲うんだよ。」
「だーかーらーっ、「ドラサダ」だってっ!!言って居るだろうがっ!!」
「分かったっ!!分かったっ!!分かったからっ!!その裏まれて居る原因は何なんだっ?」
「本当に理解して居るか?まぁ良い。それに付いてだがな。何でも、巷に流れて居る噂話によるとだな。あの女に相当根深い恨みを買ったって話だ。」
「はぁ?個人的な恨み位で、リナって奴は一国を敵に回すのかよ?そんなバカな真似をかる輩は、アセリア族見たいな奴らだけで十分だよっ!!」
リナが怒り狂って一国を敵に回して居る行動に付いて、全く理解できないと言った感じの帝国兵士。
「何でも事の始まりって言うのはだな。帝国軍情報部の連中の手違いが原因らしいとま噂話だ。」
「それにだな。裏仕事で有名な帝国軍情報部の連中が、その隠蔽や間違いを大っぴらに認める訳がないからな。」
「この件は、やりっ放しの放置な上に、何も知らぬ存ぜぬなのが、御上の考えだよ。」
「お陰で東部方面の帝国軍は、年々多大な被害を出して居るんだな。全く、割に合わない話だよ。」
「っでよっ!!そんな上層部の機密話の事を何で俺達や一般世間は知って居るんだよ?」
「生き残って上手く逃げ延びた連中が証人が居たからさ。」
「何でも襲撃者である当の本人が、言い触らして居るらしいんだ。」
「そのせいで、上の連中でも隠しようがないのさ、お陰でローラーナ帝国政府と軍上層部と、我が帝国の同盟国や属国、植民地内じゃ、懸賞金の値段が付けられず居る。」
「上手く倒すか、捕らえるかすれば報酬は望みのままだって言うぞっ!!」
「それは詰まり、上はビッチなアバズレに手を焼いている訳ね。」
「しっ!!そう言う悪口は、彼のドラサダの奴目に、何所で聞かれて居るのか分かった物ではないぞっ!!」
「いい加減な皮肉を言ってると・・・・・真っ先に丸焦げにされるぞっ!!」
「そんなの平気っ!!平気っ!!」
「こんな兵站部隊を襲うより、将兵が揃ってる方の軍か、主要拠点の重要人物を襲った方が、その女の憂さが晴らせるんじゃ・・・・・・・・」
その時だった。
「我が前に居る敵を撃ち抜けっ!!!ライトニング・アロオオオオオォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
ローラーナ帝国軍・補給物資輸送部隊目掛けて、空から複数の雷撃の矢が降り注いだ。
チュドーンっ!!と言う爆発が、ローラーナ帝国軍補給物資輸送隊の隊列を複数纏めて襲ったのである。
「なっ!?なんだっ!?」
さっきの帝国兵士は、魔法攻撃から運良く助かり、爆風の中で周囲を見渡す。
すると、時間が経つに連れて、北の崖に二人の人影が見えて来たのである。
「くーっくっくっ!!我が友リナよ、敵は先ほどから貴様の悪口ばかり言って居るぞっ!!」
「うるっさいわよっ!!魔法アイテムで余計な声を拾うなっ!!ハンナっ!!」
崖の上に現れたのは、リナ。リナ・ミーサガ・リンバースである。
彼女こそが、シベリナ連合が放った刺客でも有るのだっ!!
そして、リナの隣に居るのは、少し頭の可笑しそうなショートカットで、藍色の髪の女の子は、長年の腐れ縁であるヨハンナ・リリロッカ・ヨシカーナ。
アセリナ王国、聖天使騎士団の総騎士団長して居る閃光の聖騎士マーヤ・リリロッカ・ヨシカーナの妹にして、アセリナ王国聖天使騎士団に席を置いて居るが、軍人をして居ない嘱託扱いの放浪娘。
でも、そんな頭の可笑しな彼女でも、両親達が居る実家には、心配を掛けまいと時々帰って居るらしい。
就職しないの?と聞かれると「我は世界を救うと言う使命がある」と言って決まった組織に就職して居ない。
紅葉、リナらとは腐れ縁の幼馴染で、子供の頃、彼女は600年前に、世界を救った1人にして、アセリナ翼人族の英雄である聖天騎士ヨハネ・ハーネストの伝記を読みまくり、それに憧れ、その様な英雄に成りたいと思って居た。
そして、彼女は友の前で語る。それは幼い日の事であった。コヨミ皇国の皇都内の夕日が沈む中の公園での事だった。小高い丘で天を指差しハンナは言う。
「我は何時かこの混乱せし、悪が蔓延るこの世界を正して救うのだああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!」
一緒に居る友らは生暖かい目で見ながら声を揃えて・・・・・・・・
「「「「へ~っ!!」」」」
生温かい冷めた眼差しでの空返事。呆れて見て居るだけだった。
アセリナの一部の人々は、英雄や偉人の物語に、とことんドハマリして、中二病を患う人達。
ハンナの患う病、じゃないその子供ぽっい純真な夢は、何時しか本当の出来事なるのである。
本人は戸惑いながら、これから歩んで行く先に、たくさんの困難と波乱に満ちて居る人生が、この時から既に始まって居るのを彼女は知らないのだった。
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