49話 第二次龍雲海沖海戦 6

アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月1日・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・九州島地方・福岡市東側郊外地域・神部町・異世界国家交流総合支援省にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 


・ダバード・ロード王国派遣艦隊、通称ダバ派遣艦隊の西方派遣作戦に付いて



 ダバード・ロード王国の在皇国大使からの提案で行う事になった作戦は、同国から魔導機兵と言う人型陸戦兵器の無償提供の為に、輸送艦隊とその護衛部隊を派遣を決定し、政府と防衛省の認可を貰っている。以後、この艦隊をダバ派遣艦隊と呼称する。



外交の手伝いを進める中で、今の交援省の課題は、ダバード・ロード王国とアルガス公国方面の情勢と東シナ海とその領海を越えた先の龍雲海の情勢だ。



両方の地域で緊迫した状況に成って来ているのは、人工衛星からの監視で予測されていた。




「目下の所、概ね分かって居ると言う事は、これくらいだっ!」


「それとだっ!!年長的に便宜上は異世界国家交流総合支援省こと、交援省の取り仕切るのは、この私が纏め役と成って居る事と成った。」



「この先を調べたり、相談されたり、仲介したり、敵対勢力を如何するのかを考えて意見を出すのも、交援省に配属された我々の仕事の一つだ。」



「その他に、何か意見や情報が有れば、この場で情報を共有して置きたい。何か有るか?」



交援省初のミーティングの始まりは、林厚生課長から挨拶代わりの最初会議での通達と説明が始まる。



 他にも何か無いかと集まったメンバーに聞く林厚生課長。



「そうそう、ラクロアナ王国からは、我が国とロシアに対して感謝のお礼状が届けられて居ます。」



手を上げて最近有った出来事を言うのは、コヨミ皇国との対談と龍雲海沖海戦の事後処理をした外務省の藤原敬二だった。


 コヨミ皇国との交渉の功績で、彼は課長に昇進して、交援省に派遣されたらしい。(またの名を厄介払いとも言うが・・・・・・・・・・・)


 彼は外務省の影で動かして居るとの噂が立っている胡散臭い人なのである。



「ああ、それは我々の方にもお礼状が届いて居る。」


「彼の国のレビル国王陛下は、札幌市の大学病院で療養中で、やはり国務の仕事のやり過ぎで、無理が祟って居るらしい。」


「疲れやストレスの類もと言った物も色々溜まって居て、薬剤の治療が効いて居て、数日は起きなかったそうだ。」


「まぁ、一人娘が1人立ちするまで、職務を引退が出きない気持ちは、痛い程良く分かるが・・・・・・・・・・」



交援省へと派遣される形で入った林は、レビル国王を日本国内の病院に受け入れる仕事を厚生課として請け負った事か゛切っ掛けで、彼の国の国王とラクロアナ王国内の動きを部下からの報告で、概ねこの動きを知って居た。



「それでも良かったですよ。」


「我々が訪問するタイミングが悪ければ、彼の国王は亡くなって居たかも知れません。」


「ですが、これで食料生産国との交渉がやり易いのでは?」



農水課の大間課長が言った。



「経産省でも、ラクロアナ王国は資源と食料の輸入先として魅力的ですし、何よりもパイプ・ライン大河の東北方面側の出入り口を抑えて居る国です。」



「貿易港を改築して、南北との貿易をやり易くすれば、莫大な利益がでると試算して居ます。」



経産課の田町課長が、同国を訪問した際に本省である経産省と補佐である交援省・経産課と一緒に、王都のアデニューム市・ロウデニィオン市・ゼングリラ市・ニュウヤーク市等と言った現地の都市部を視察して居た。


 その報告書を元にして、経産省と一緒にラクロアナ王国との貿易額は、金融投資とインフラ投資をキチンとすれば、凡そ2500億円は行くだろうとの試算が出て居る。



 いや、ハブ港として使えば、もっと稼げると予想されて居る。



 シンガポールやパナマと言った国みたいに成れると考えられて居た。



レビル国王に、フランシェスカ王女。



 それにラクロアナ王国政府の臣下の人々は、意外と自分達の国家的な値打ちに気が付いて居ないのかも知れない。


 物の売り買いと運搬の中継地と言う認識をして居るが、現代式の様な膨大な量のコンテナ船が無いのだろう。


 空挺輸送艦も有るが、アレも運べる量が膨大とは言い辛いし、船数も限られて居た。



 それに問題が、もう一つ有るからである。



「だが、それには帝国の勢力と軍隊をもう少し弱めないと商船等が、危なくて貿易処ではない。」



田町課長が、東シベリナ又は極東シベリナと呼ばれる日本国が、転移して居る地域の地図の資料を見てげんなりして居た。



「全くですよ、戦争や海賊・水賊・山賊・盗賊と言った物のせいで、実に勿体無い。」


「折角、経済を立て直す好条件が揃って居るのに、地図上では、帝国勢力に近い地域の海や川が多すぎて、危なくて使えないのが現状ですな。」


「それに海賊、水賊、山賊、盗賊と違法武装組織が、其処ら彼処に、多く潜んで居ては、非武装の民間船では、とても怖くて適いませんよ。」



 メガネをかけたぽっちゃりの竹尾敏明国交課長も地図を見て言って居た。


「ああ、たがら民間武装輸送船団とか言う特殊な商会が多く居るのか?」


「確か半官半民の個人商会でしたね。資本金と個人資産は、経営して居る本人持ちでしたが・・・・・・」


 不意に誰かが、この世界の特殊商会である民間武装輸送船団事を思い出し、口に出して居た。


「ですが、その様な経営体系を持った会社の設立なんて物は、現行の法律では、滅多な理由で立ち上げも無理ですよ。」



 竹尾国交課長が特殊な会社の立ち上げは、無理だと言う。




「残念ですが、自衛隊も現行の法律では、限界も有ります。」


「積極的に攻勢や民間船の護衛に付いても、何らかの対策を講じて行く必要が有ります。」



自衛官の伊丹順一は、現状でやれる事は防戦だけと自衛的な敵基地の壊滅くらいだと2030年度の現行の改正自衛隊法の範囲で述べて居る。


 改正自衛隊法は、この世界に転移した日本政府が、帝国との戦争は不可避に成るの公算が高いと踏んで急遽、交援省設置法と特殊国外地派遣遠征有事法などを纏めて国会で提出し、成立させた法案である。


 自衛隊を国防隊と明記して、準軍扱いとする事に政府は決めたのだった。


 従来通りに日本の国土、領海、領空内に侵入した敵から防衛するのは変わらないが、これから先、地球では無いこの世界で、今まで通りには、行かないかも知れない。


 其処で敵基地や日本の領域に近付く武装集団を警告した後に叩くまでは良いとの見解を決めていた。



それ以外の対処に特殊国外地派遣遠征有事法と言う法律を整備した。


 通称を特征法と呼ばれ 政府から要請が有った場合、略語で特征と呼び、政府及び防衛省から交援省へ要請をする時は、特征要請事案と呼んで交援省に通信が入り、交援省に委託される場合が有るとされて居た。



日本の領域外での軍事行動を国会の承認の元で、相手国の了承が有る上で現地に援軍を派遣したり、自衛隊が国外地で戦闘に成る、もしくは戦闘に成る可能性が出て来る。


 すると、其処で幾つかの国内外に支部を持って居る交援省が、政府から委託されて国外に自衛隊を管理監督すると言うものである。


 臨時立法扱いだが、期限が今次大戦終結と復興の目途が立つまでと書かれて居る。



詰まりは、帝国とその軍事同盟傘下の敵対国が居なくなるか、完全な講和をするまでが期限と成って居る。


 地球系転移国家以外の国家武装勢力との戦闘行為及び害獣駆除などを交援省の主導で行い、管理監督を交援省大臣に代理委任すると言う内容で、異世界国家交流総合支援省設置法と一緒に国会に提出され承認されて居る。



今の日本と帝国は、正式な交戦状態ではなく準戦闘状態・・・・所謂、紛争に近いのかも知れない。



 何せ、互いに国家承認処か、互いの存在すら認識をしていない国同士だ。


 戦争を止めたくても止められないし、日本側から和平の使節を送ろうにも仲介をしてくれそうな第3国すら無いのだ。



 それに帝国は、思想的に危険とも、コヨミ皇国から忠告されて居た。


 下手に日本の本土の位置を教えると、手痛い目に遭うかもとも言われて居る。


 それに九州・沖縄地方が帝国領に最も近いのだ。



 同地を危険に晒す訳にも行かない。


 日本は何時もの様な平和外交が出きないもどかしさの中に居た。



 それに紛争状態なら自分から手を出すのも良くないし、日本は自衛隊を帝国領に討って出るのも補給などの面から厳しいとも言える。


 派遣されている自衛隊は、現在の所、3自衛隊で凡そ6000人前後、他は本土で待機か哨戒任務に当たって居た。


 いざと成れば、最大で5万は一時的だが即応できる余裕あるが、その事態は成るべくなら避けたい。


 現地に戦闘車両や航空機を持ち運んで、自衛官ら直ぐにでも派遣しつつ、部隊を師団単位で動ける様にするだけで精一杯だった。



「不謹慎な言い方だが、向こうから手を出してくれないかな。」



 竹尾がボヤいた。



「まさか、龍雲海沖の海戦であれ程の手痛い敗戦ですよ。」



「まともな指揮官だったら、この日本に仕掛ける愚を犯さない筈です。」



伊丹が冷静に言う。



「ですが、日本の位置を知りたがる可能性は有ると思いますよ。」



環境課長である尾島浩美がボソっと言う。


 無表情で淡々と話し、仕事をこなして行く姿を気味悪がる職員が多く、彼女は鼻つまみ者扱い、所謂、嫌われ者扱いに成って居る人物だった。


 そんな彼女は、単に変わり者で口数が少ないだけなのだ。


 SFの映画やアニメの類を良く見ると言うので、この交援省に厄介払いされて派遣されて居た。



 それに此処での会議では、専門の職種に関わらず、多岐に渡る意見を言うのが求められて居る。



 特に大臣と課長級が雁首揃えて居る会議では、尚更である。




「尾島さんの意見は、あながち当たって居るかも知れません。」




「ほう、高見君。それはどう言う理由かね。」



藤原が竜史を見ながら目を細めた。



「簡単な話です。」



「知らないなら調べに来るのが、人の人情と言う身のでは無いでしょうか?」



「例え、それが途轍もなく怖ーい化物の類だったとしてもです。」



「きっと彼の国も、そろそろ威力偵察の準備でもして居るんじゃ、無いですかね。」



竜史が素人同然の私見を言うと、この会議に集まった出席者らは「まさか・・・・・・」と言う声が漏れ聞えて来る。




 其処へ館内放送が入る。




「緊急事態発生っ!!緊急事態発生っ!!」



「先ほど防衛省経由で、沖縄県・東シナ海近海を警戒監視中の海自護衛艦隊・旗艦である航空護衛艦あかぎから緊急入電っ!!」



「南シナ海と龍雲海の境界線上に、多数軍艦船が終結しつつ在るとの報告が、たった今入りましたっ!!」



「また、同海域を警戒監視中の監視衛星でも、同様の画像をキャッチして居り、日本政府と防衛省は、領海外での迎撃が必須で有ると判断し、今しがた特征要請事案の閣議決定と国会の事後承認の手続き入る体勢に入りましたっ!!」



「同時に交援省大臣と交援省に対して、特殊国外地派遣遠征有事法に基づく本件の委託を決定っ!!」




「交援省大臣に最高司令官代理として、自衛隊の命令権を移譲するとの事ですっ!!」




「おおっ!?まさか、まさか、本当に来るとは・・・・・・・・・・・」



「では皆さんは、引き続き、それぞれのお仕事をお願いしますね。」


「防衛課の伊丹さんと海保課の米内さん達は、交援省外征対策司令室へ。」


「それでは、この場でのミーティング会議を解散とします。」


「次回のミーティング会議は、スケジュール調整が済み次第、総務課から通達が来ますので、各自はメールなどをチェックには気を付けて下さい。」


「それではミーティング会議は、解散とします。」



ミーティング会議は、突然の緊急事態となり解散と成った。



 果たして、龍雲海に現れた艦船とは、一体何なのだろうか?


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