50話 第二次龍雲海沖海戦 7

 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月1日・午前8時10分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・日本国・日本国領海・東シナ海近海域及びローラーナ帝国領・シャッポロ州・ローラーナ帝国領海・龍雲海沖近海域付近・ドラグナー皇国軍・レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団空挺魔導艦隊集結地点にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  




6月1日の午前8時過ぎ、一週間ほど掛けて念入りに準備をして行くローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊こと、ローラーナ帝国・第一外征艦隊。


 彼らは遂に日本国へと威力偵察を兼ねた軍事侵攻を開始する。


 ローラーナ帝国・第一外征艦隊は、ドラグナー皇国の新王都・サリヴァン市港を出港し、全艦隊を龍雲海の入り口で艦隊集結を開始する。



 その艦艇数は、傭兵扱いされて居る海賊艦隊を含めた艦隊合計で、何んとっ!2330隻にも成って居た。


 その先方の艦隊にはヴァロニカ・サークラ・レアモン旗下に在るドラグナー皇国軍・レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団空挺魔導艦隊の旗艦で、全長が200メートルも在ると言う空挺魔導戦艦レビアナ中心にして、ドラグナー皇国艦隊総数30隻から成る空挺魔導戦艦隊が集まって居た。


 空挺魔導戦艦レビアナを始め、ドラグナー皇国の空挺魔導戦艦の見姿は、その全てが竜の姿を模して居た。


 竜の頭部の口は、強力な魔導力光線の主砲と成って居り、他の7門の魔導副砲と15基の魔導紋章機銃も備え付けられて居る。

 

 魔導紋章機銃とは、六芒星式のサークル紋章が、機関砲の様な発射台装置台の先端に浮かび上がり、機関砲や機関銃の如く、魔導矢じりが撃ち捲る装置の事。


 護衛艦なんかで言えば、機関砲に当たる装置に成る。


その甲板には聖龍騎士達が、聖龍に跨って飛び立つ為の滑走路が在る。



 滑走路は砲撃に耐えられ様に頑丈な装甲板で覆われて居て、その滑走路は格納庫から延びていた。



ドラグナー皇国艦隊は、白い聖龍とそれに跨る銀の鎧を身に纏って居る騎士達が、槍を勇ましく掲げて居た。


 艦隊旗と騎士団旗でも在るドラグナー皇国旗と真紅の鎧を着込んだヴァロニカを模した騎士が真っ赤な聖龍であるレッドアイゼンが隣り合わせに立った見姿を描いた旗を掲げて、パタパタと風で靡かせて居り、その中でもヴァロニカ直営部隊では、一際大きい旗を掲げて将軍旗として居た。



 そのドラグナー皇国軍・レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団空挺魔導艦隊の後方では馬に跨る騎士の様な半島と光の後光の輝く光が降り注ぎつつ、鎧を着た王が丸いこの星の天球儀の旗を掲げて居る旗がある。


その旗はローラーナ帝国国旗であった。


 身の程を知らずなのか、国体制をローラーナ王国から帝国に替わる際に作られたと言うその国旗は、この世界を一つの国家にして遍く人々に安寧と幸福をと言ってるそうなのだが、当然の事ながら建前で有るのは明らかだろう。


 如何してそんな事を言って居るか?


 何故、世界統一などと言う大それた事を進めて居るのかは?


 今となっては誰も知らないのである。


 ただ・・・・・邪神戦争で、異界から現れたと言う邪神カオス・ノワールを打ち倒した英雄王とも称賛されたローラーナ帝国・初代皇帝ギルバート・メリッシュは、邪神戦争後に。ある日突然、人が変わってしまったと言う事を除いては・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 さて、艦隊の集結が徐々に整い始めると、各艦の間で連絡の為の伝令官が飛竜に跨り忙しなく飛び回って居る。


 ヴァロニカは、この戦に直属の騎士団を連れて来て居た。


 先に名前が出て来て居るが、此処で改めて紹介する。


 その名をレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団と言う。


 そして、ヴァロニカは、その中でも選りすぐり精鋭の聖龍騎士団の騎士を3千人を今回の遠征軍に引き連れて来て居る。


 ヴァロニカの本音を言うと、正直に言って、この戦は嫌な予感がして為らないと、長年培って来た武人としての直感が、そう告げて居た。


 それは彼女の本能的な直感であり、戦人たる武人としての直感でも在るのだった。



 あのローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊第120艦隊の無残な姿となった艦船を間近で見た彼女は、何かが在ると踏んで居た。



 その直感を信じて、同行を求めて来たローラーナ帝国海軍・第一外征艦隊には、適当な理由と己の武勇を盾にしながら、出撃する兵数はたったの3千人で十分と言い切る事で、主力の大半を国元に残して来たのである。



「ヴァロニカさ~ま~っ!第2中隊と第2空挺魔導艦隊の準備整いましたわ~っ!!」



ヴァロニカにゆっくりと近付いてきたのは、レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の第2中隊隊長のアイリー・シェリーである。


 因みに、そのグラマスボデイには、大変に怪しからん爆乳を持って居ると言うほんわかお姉さん系の聖龍騎士である。



「ヴァロニカ様、此方も第3中隊と第3空挺魔導艦隊の準備が整いました。」



冷めた感じで現れたのは、コレット・シェリーと言う聖龍騎士だ。


 アイリーと同じく、レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の第3中隊と第3空挺魔導艦隊を勤めて居る。



 因みにコレットは、アイリーの妹で在るが、その性格とボディスタイルが正反対で、こちらは残念な洗濯板・・・・・いや、甲板胸の持ち主と言うお約束な娘だった。



「ヴァロニカ様、レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の直営たる我ら第1中隊と第1空挺魔導艦隊、何時でも進撃可能です。」



セミロングの髪を海風に靡かせて、空挺魔導戦艦レビアナの艦内から現れたのは、ヴァロニカの副官で、ユウリーン・キルカである。



常に前線で戦うヴァロニカに代わって、レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の第1中隊と第1空挺魔導艦隊の指揮を執って居る聖龍騎士である。



「よしっ!!この度の先方は誰か?」




「はっ、ジレル・マグガイラが宜しいでしょう。」



ヴァロニカの問いに対して、副官のユウリーンがすぐさま答えた。


 ジレルは女騎士が多いレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団の中で数少ない男性聖龍騎士団員である。


3千の騎士団の内、700名が男性で、残りの2300名が女性騎士だった。



 この騎士団の殆んどの女性が、ヴァロニカの子飼いの聖龍騎士である。


 出自も様々で、ヴァロニカは才覚あれば出自は関係無いとして居た。



 男性陣は貴族系の出身の聖龍騎士の両親達から、護衛として付けられたメンバーだった。



本国の本隊には、もっと男性は居るのだが、男女の比率が6対4と言う感じで、それでも女性が多かったのだ。


 この比率はヴァロニカの人徳と戦争による人口問題が関係して居た。




「くれぐれも突出し過ぎるなと伝えろっ!万が一の場合は逃げ帰っても構わんっ!」



「しかし、それでは帝国に有らぬ疑いを・・・・・・・・・・」



「こんなつまらん戦で命を落とす方が大損だ。」



「分かりました。先方艦隊に伝令っ!!」




 敗北してもなおヴァロニカは、世界の覇者を名乗るローラーナ帝国などを恐れてはいない。



 家族と民と部下の盾と成る事も厭わない彼女は、部下達に勝てなければ、適当な言い訳で、自軍の兵達を退かせる積りなのだ。



 ユウリーンが、伝令官に対して、ヴァロニカと取り決め通りの仔細な命令を伝えると、第1中隊の先方隊へと飛んで行った。



「アイリー隊が左翼っ!コレット隊は右翼っ!私が中央だっ!」


「後方はユウリーンに任せる。」


「ある程度、二ホン艦隊と飛来する可能性のある二ホン国軍の航空隊を削ったら我らは帝国に手柄を譲ってやれっ!」



「うふふっ、ヴァロニカさまは、本当に意地の悪いやり方ですね。」



「それって体裁の良い撤退じゃないですか?」



 姉妹はヴァロニカの意図を読んだ。



「此度は死人が出るかも知れん。」


「戦では当たり前だが、私が戦場に居る限り出させん積りだが、今回はかばい切れんかも知れんのだ。」



「いいえ、わたくし達はヴァロニカ様に拾って貰った身です。」



「本当なら片田舎や貧民街で暮らして居たものを、この様な騎士身分にまで引き立てたくれました。」



「姉さんの言う通りです。」


「ですから姫様も。せめて意中の殿方をお作り成るまでくらいは、お命を繋いで下さい。」



「私達はそれを見届けるまで盾となり剣と成りますっ!そうでないと私達も恋が迂闊に出きませんわっ!」



ヴァロニカは、その気性と武勇のせいで、男が寄り付かないのであった。



 更にとことん恵まれない女性達を助けるので、国内でも屈指の人気を誇る王族の女性だった。


 特に彼女の騎士団は、ヴァロニカに直接鍛えられた近衛同然の面子ばかりで、騎士団内でのヴァロニカを見る目線は百合では無く、何方かと言うと歌劇団の男装した女優のファンに近かった。


 女騎士達は、せめてヴァロニカに相応しい婿をと色々と手を尽くして居たが見つからず、ヴァロニカ様が結婚するまで結婚できないと、恋や結婚を遠慮して居た経緯が有ったのである。


 彼女達は、ヴァロニカが相手を見つけるまでは、決して死なせないと勝手に考えて居たくらいである。



「お前達な~っ!!」



 ヴァロニカは半ば呆れていた。



 何時もの事なので、此処でもスルーするのだが・・・・・・・・・・・・



「まぁ良い。配置に付け。」



「「「はっ!!」」」



3人はそれぞれの所定の位置に移動する。



 アイリーとコレットもそれぞれの聖龍に跨り、指揮する艦隊へと向って行くのだった。



「レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団っ!!!出陣っ!!」



「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」



一斉に鬨の声を上げて、ドラグナー皇国軍・レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団空挺魔導艦隊は、各艦の艦首を東へと向けて行った。



 その様子を最初から天空の彼方から、ずっと見られて居るとも知らずに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月1日・午前8時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・日本国・東シナ海近海域及びローラーナ帝国領・シャッポロ州・龍雲海沖近海域付近・ローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊・第4陣・総旗艦・魔導空挺戦艦ザージェント・ギワザン・ローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊終結地点にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  



 時を同じくして、日本国・東シナ海近海域及びローラーナ帝国領・シャッポロ州・龍雲海沖近海域付近に集結する大艦隊の総旗艦も、間も無く日本国へと侵攻を開始しようとして居た。



「ギワザン閣下、艦隊の終結が整いまして御座います。」



「先方隊、ヴァロニカ皇女殿下が率いるレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団が進発を開始したと知らせが参りました。」



ローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊の総司令官であるシドウ・ギワザンは、全長250メートルも在ると言う巨大な空挺魔導戦艦の後部に位置し、高く聳え立つ艦橋から広大な海原と澄み切った空が龍雲海に広がって居る風景を見ながら司令官席に居座る。




 霧深くて有名な龍雲海にしては、珍しく今日は晴れて居る好天模様である。


 しかしながら何時、天気が崩れるとも限らないのが龍雲海と言うもの。


 そんな景色を彼は眺めつつ、伝令官からの報告を受けていた。




「それでは、そろそろ行こうとするかっ!!全艦隊に通達せよ!!!目標!!!ニホン国の南西領っ!!ローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊の全艦隊っ!!!!進撃を開始せよっ!!!!」




「はっ!!ローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊の全艦へ通達っ!!目標っ!!ニホン国の南西領へ進撃を開始っ!!」




「進軍旗の信号旗を高く掲げよっ!!」



甲板では第一外征艦隊旗と信号旗が全艦隊で同時に揚がり始める。


 ギワザンが全軍に対して、日本への進撃を命じたのだった。



 水上魔導艦隊のスクリューが回り始め、空では空挺魔導艦隊がゴォーと言う轟音を立てながら、魔力噴射口から強力な熱風が噴射されつつ、補助エンジンであるプロペラ周って居る。



 他にもホバー航行式の陸上魔導艦隊も動力炉に火が点り、強力な風車に由って前へと前進を始めて居る。


 更には帆船の艦隊も魔法装置で風を起して、スピードを徐々に上げながら日本へと向うのであった。





 アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月1日・午後17時03分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国内全土地域にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 




この日の夕方、日本国中に激震が走った。



 テレビのニュースには安元総理大臣が記者会見で龍雲海と言う東シナ海の向こう側の海に、ローラーナ帝国軍の大艦隊が集結しつつある事を発表した。


 日本国政府は、南西諸島方面に全域に全島避難準備警報を発令した。


旅行鞄程度の手荷物と最低限の貴重品を持っての避難準備をする様にと避難指定地域の行政や住民に対して要請を行っていた。



政府は南西諸島からの市民の避難準備は、万が一に備えての事だと言った。


もう二度と離島や諸島などで市民などを巻き込んだ地上戦を避ける為でも有るとも言って居る。


 陸上自衛隊・第15旅団にも、徹底抗戦は最低限で良いから、防ぎ切れなければ、やむを得ずの場合は撤退も許可されて居た。


 同時に九州では水陸機動団を中心とした反抗戦の準備も進められて居る。


援軍の来ない離島は、敵側からすれば攻めるのに易く、また守勢側に取っては守るのに難しい。


万が一にも攻め込まれば、侵攻を遅延させ、住民の避難をさせつつ、全軍撤退が理想とも言える。



「臨時ニュースお伝えしますっ!!臨時ニュースお伝えしますっ!!臨時ニュースお伝えしますっ!!」


「本日、早朝未明から防衛省の監視衛星が、ローラーナ帝国の軍勢らしき影を捉えたとの事です。」



「我が国の監視衛星は2018年に近隣諸国が我が国の領海内への侵入やミサイル監視体制の強化の為に計画され、2020年から随時打ち上げが開始されましたが、異世界への転移の影響でその数の監視網の強化の為に、増加が急務と成って居ます。」


「現在は5つ有る衛星を8に増やして居ます。」


「近日中には2機の衛星の打ち上げが計画されて居るそうです。」


「日本政府は、数年以内に20個以上のGPS機能など含めた人口衛星の打ち上げを計画して居ます。」



「その監視衛星の画像解析の結果、2千隻を越える軍艦の艦隊が終結しつつ有ると、防衛省は発表して居ます。」



「それに伴い政府は、侵攻が予想される南西諸島地域に対して、緊急避難準備命令を発令しました。」



「この避難は島外退避と成ります。」


「該当地域は南西諸島の全域と成って居ます。」


「該当地域の皆さんは行政・警察・自衛隊などの指示とテレビ・ラジオ・ネット等の情報を絶えずチェックして万が一に備えて下さい。」


「続きまして、自衛隊の動向ですが、防衛省の発表では・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



このニュースを見た該当地域の人々は手荷物を纏めて始め、空港は全便欠航し、県外の観光客は急いで逃げ出し始めていた。



 日本本土の人々は、相変わらず他人事様に振舞うか、反対運動をしたり、先の見えない状態を心配したりと反応は様々だった。





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