29話 ダバード・ロード王国の会議は踊る 2

 アースティア暦1000年・4月20日・午前10時35分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・シベリナ中央地方・ダバード・ロード王国・イングラード州・王都インディクス・インディクス城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 会議は白熱し、ベテランの先輩方を目の前にして、ユウは首を振りつつ答える。




「それで駄目だ。何処の国も大手の所を抑えようと躍起に成るだろう。それにニホンのどの商会も進出する先を幾つも抱え込むのは、彼の国の現在の状態では難しいだろう。」


「何れ進出してくれるとしても、一番に乗り込んできた商会が有利になるのは当然だ。」



「勿論、我が国も2社以上ほど誘致したいと私も考えいるぞ。しかし、それでは我が国の産業が大手の外国企業に頼らなければ成らなくなる。それではいけない。」




「成らば、どうするお積りだ?」




 それにはアイサが答える。




「あたしとユウは、この中小企業と呼ばれる工房に目を付けたのは、規模が小さくて、加工機械を使ってはいるものの、手作業で行う加工が多い事に注目したの。おそらく資金振りが難しく、苦しい事と加工する製品が精密で難しいと予想されるわ。」




「そんな経営が苦しそうな所を呼んで本当に意味が有るんですか?」




「よく読んでみて、この中小企業の自社製品は、大手の工業製品の部品加工が大半であると書いてある。」


「少ないけどオリジナルの加工品も多くあるわ。これらを誘致すればニホンの工業の基礎を学べるわよ。」


「それに新しい工作器具と簡単な自動機械を使う物作りは、我が国の工房のやり方に近い。それに二ホン国に早く追いつきたいと思うのなら古い器具から行き成り真新しい器具を使っての物作りは決して上手く行く物では無いと思うの。」


「そうだぞ、大事な過程をすっとばしての結果なんぞ身に着け覚え得ても、身に成らんしな。」


「事が上手く行けば、加工部品の生産を日本に次いでの生産大国を目指せるわ。それに誘致競争が少なくて済む所が魅力なのよ。」



この国は良く考えて居る。


 中小企業の工場は跡継ぎや後継者問題を抱えて居るし、資金面で銀行と少しだけ揉めている。



 海外進出もしている所も有るが、まだまだ少ない。異世界転移で海外の工場や取引先を失った中小企業も多い。


 この異世界で、異世界の国が大々的に招致したい。


 本社は日本のままで良いからと、言われれば、此処は一つやって見ようかなと言う企業や工場で頑張っている社長のおじさんも居るかも知れない。



「おおおっ、成るほど、それは考えましたな。」



 ユウは、更にもう一つの提案をする。



「それともう一つ、我が国の主力兵器である魔導機兵をニホン国へ無償提供する。」



「!!!!」




多くの閣僚らは驚きを隠せずにいた。




「待って下さい。魔導機兵は近年に成ってから周辺諸国で一般に使われ始めている兵器と成っています。」


「各国とも共通量産型の大量生産や独自に試作開発・特殊タイプの生産もされいますが、しかしですぞっ、元々持ってもいない国、しかもまだ国交処か同盟すら結んでいない国等に無償提供等と、何を言われるのですか女王陛下っ!」


「これは我が国の重大な軍事機密に当たります。それを金銭や技術の交換では無く、全くの無償で提供するのは正気の沙汰ではない事ですぞっ!」




「その通りですよ。日本の何らかの兵器の提供、もしくは技術提供して貰わない事には・・・・・・・・・・・・」




「正に割に合いませんな。」




軍部と国家の産業技術を統括する大臣や官僚達が、口々に抗議の声と反論の声を上げていた。



 しかし、女王たるアーヤが側近の者たちと話し合いで既に許可した事を言う様にとアイサに目配せていた。




「この魔導機兵の無償提供の件は、陛下自身が既に許可を出されています。」




「何と?!これには反対と言いたいですが、何か理由が有るのですか陛下?」




国防機密を開示する理由を女王であるアーヤが答える。




「これにはキチンとした理由があるわ。ニホンは既に機兵を持っているのよ。正確には小型の魔導機兵の「ろぼっと」とか言う人型の機械ね。ユウあのページを出して頂戴。」




「はっ、皆々様これをご覧下さい。」




 ユウは日本紹介冊子をテーブルの中央に置く。




「むむっ?!こっ、これは、小型の魔導機兵ですとっ!そ、そ、そそっんな有り得ないっ!こんなにも小型の物を作り出すなんて!!!!」




そこに写っていたのは二輪車と四輪車企業の紹介が書かれたページだった。



 その写真の一覧に、日本が世界に誇る4大二輪車メーカーであるモトダである。



 そう、カワカミ重工、モトダ技研工業、ヤマナ発動機、あと・あとあと・・・それと、それと・・・・・あれあれあれ?あと一社の名前が何故か出てこないぞ?


 

 あっれーっ!!何て名前で何処の事だっけ?


 確か・・・・「スで始まるメーカーでしょ」「そうだっ!!そうだっ!!忘れるなっ!!」「世界で一番のメーカーだろうずっ!!」「特にバイクの「刀」なんで最高だよねっ!!」


「「「「「スズノキのバイクは、如何なる所、異世界で在ろうとも世界随一いいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」


 おおっ、そうだった、そうだった。


 あれっ?誰かに突っ込まれた様な?


 それとも何所かのスズノキファンの皆様のお叱りだったりして? 


 それはともかく、たくさんの熱狂的なファンと安価な製品でご家庭の足をお届けしている企業、その名は確か・・・・・・スズノキ自動車工業だったかな?


 その二輪メーカーを含む機械企業の中で、最初に二足歩行するロボット開発に挑戦してたのが、モトダ技研工業である。



 そして、そのモトダが開発したロボットがアッシモダと言う階段すら下りられる自立歩行ロボットが写されていた。




居並ぶ者達に、モトダ技研工業が誇るロボット、アッシモダの写真を見せたアーヤ。彼女は不適な笑みで話を続けて行く。




「しかもこれは軍や政府が作らせたのでは無いのよ。民間工房商会で作ったのよ。」


「これは凄いわね。それも自立自動歩行するのよ。」




「なんですと!そんなバカなっ!」




「これで分かったでしょう。既に作って動かせられる上に、我が国よりも高性能な物が在ると言うのに機密も何も無いわ。」



「それなら、もっと良い物を作って貰うのに、一役買って貰うわ。」



「妾は、このろぼっとを作れる工房商会、モトダと取引を積極的に進めるわ。他にも幾つか狙っている所は在るの。それ等との交渉はユウに任せるわ。」




「それとユウ、どうせなら国交交渉の行う場所は、二ホンにしましょう。妾も直接二ホン行こうと思って居るのよ。」



「他国の国家元首や閣僚に官僚、それにアーヤ陛下自ら二ホンへですか?」



「ええ、各国の首脳や閣僚、官僚等を集めての国際大会議を執り行う提案を二ホンにするのよ。」



「それとユウ、魔導機兵の運搬は、ニホンに頼めないか連絡を取ってみて。」


「それに紛れてニホンに行けば良いのよ。そうすれば、大会議の合間に帝国に会議を邪魔をされたり、自国を脅かされたりせずに済むわ。」



「そうすれば、帝国を欺いて上に、会議は大成功と言う事になるわ。」


「ですが、無茶ですっ!二ホンの輸送船に我が国の護衛戦艦も付けての大移動と成ってしまい、何所の誰が乗って居るって事がバレバレじゃないですかっ!!」



「それなら平気よ。最強の護衛を迎えに寄こさせれば、問題無いでしょ。表向きは、貿易の交渉使節団の派遣に加えて、そのサンプル品を始めとする各種物資の運搬とその護衛なんだから。」




「くっ、その手が有りましたか・・・・・・」



「流石はアーヤ陛下、考えて居られますな。」



 閣僚の一人が内心呆れた雰囲気で言う。




 そして、御前閣僚会議の大体の話し合いが終わりに差し掛かり、アイサが会議の最後を纏めに入る




「それでは纏めます。我が国は、シベリナ連合諸外国と共に食料と各種地下資源の輸出を進める。」



「輸出に当たって必要な設備と街道などを整備する。そして、我が国に工業発展をさせるカンフル剤として、日本企業を多く誘致する。」


「我が国は、その中でもモトダと中小企業を積極的に誘致する。」


「新開発や改修を目的とした魔導機兵をサンプルとして、ニホン国に無償提供する。」


「最後にニホンとの交渉を通じて必要な法律の整備と新規技術や知識の習得の為に、二ホン国へと人材を留学生として派遣し、長期的な人材育成を行う。」


「そして、陛下と周辺国の代表および国家元首の方々に対して、秘密裏にニホンへ共に参りませんかと打診をし、その一件を二ホンに提案をする。」




「以上が今後の我が国の基本方針と成ります。皆様方はこれで宜しいですか?」




 閣僚等は頷き、御前会議は、これにて終わりを告げた。



「それでは皆、解散よ。皆それぞれ仕事に掛かってちょうだい。」




「分かりました。」



 会議が終わって解散となりアーヤが退出すると閣僚らはそれぞれの仕事へと戻って行ったのであった。



 しかし、ダバード・ロード王国から日本政府に譲渡され、防衛省が管理をし、技術開発と解析を依頼されたモトダ技研工業は、軍事関連の事業のノウハウが無く、仕方なく先ずは業種の近いカワカミに相談する事となった。



 そのカワカミも「モトダさん、ウチだけじゃ生産や部品と備品関係の調達や開発で力に成れないですよ。他に何社か巻き込まないとコストと技術的に無理だよ。」と言われた。


 其処で魔導機兵の開発と技術解析の事業に、とある二社に声を掛けたのである。


 旧軍時代から色々と兵器開発と生産をしている三葉重工と配線や電子関連技術、また様々な機械装置を手がけている常陸那珂製作所。



 更にカワカミは、運搬車の開発に大松製作所と三葉扶桑の二社に声を掛けて上で、関わる事に成った。



後に日本版の魔導機兵開発は、運搬車を含めてカワカミ工業、三葉重工、モトダ技研工業、常陸那珂製作所、大松製作所、三葉扶桑が共同で研究開発がされて行く魔導機兵であるナイト・マギアは、日本の技術力で発展して行き、その寸胴な体型から軽量化が進んで行く事に成る。


 そして、機動性を重視し、様々な武装が運用できる形へと変化して行くのである。


 そんなロボット開発計画は、一部のマスコミやオタクな人達からは、V作戦とかガ○ダ○試作計画と揶揄されてしまう事に成ってしまうのは、我が国ならでは無いだろうか?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る