淫らな日々と擬似充足

タバコを吸っているとタバコの匂いがつくと、先程の事務員の田淵 真梨恵に追い出された。全くひどい話だ。俺はこれでも、ここの代表だと言うのに。とりあえず俺はパチンコ店の中に入る。鼓膜を割らんばかりの騒音の中で、俺は玉を買い台の前に座る。上から下へと夢と野望を乗せた銀の玉が転がっていく。俺はまた、タバコを1本加えて火をつける。途端に、肩を叩かれ1人の華奢な女店員が俺に向かって怒鳴る。

「ここは、禁煙ですから。おタバコは外で吸ってください」

最近は台の前ですらタバコを吸えねぇーのかと少し苛立ちながら店員の差し出した灰皿にタバコを擦り付ける。今思えばなかなかいい対応かもしれない、おかげで俺は台を離れずに済んだわけだし、去り際の店員の顔を見るとなかなかの美人だったし、さっきまでの苛立ちが微かに薄まった気がした。


外に出ると快晴だった。コバルトブルーの空にパールホワイトの雲が浮かんでいた。

「いやー、景気は悪くても空は青いね~」

軽くなった財布を後ろポケットにさして放心しながらそういった。不意にスマホがなる。

「ヒデちゃん、最近かまってくれないから寂しいーよー」

電話越しでも酒の匂いがしてくる。

「じゃ、今日の夜。しちゃう?」

「するする!家に来てよ。ゴムは常時置いてるからさーヒデちゃんために!」

相変わらず元気な声が電話の向こうではしゃいでいる。電話相手の名前は永山 彩音。26歳でありながら、性欲旺盛の俺の性交渉の相手をしてくれる。所謂セックスフレンドとでも言ったところだろう。俺は電話を切ると、事務所に戻る道をたどった。


パチンコ屋を出て、商店街をずっと歩いていく。ラクガキされたシャッターやほのかに香る花屋さんの花の香りが俺の気持ちを高揚させるわけもなく、肩をいからせながら歩いていた。画材屋のキムラを越えて少し行った所に、ござをひいた汚い俺より二三個年上の男が座っている。俺はその男とはパチンコ仲間だったので、話しかける。

「おっさーん、また負けちゃったよ」

「ありゃ、ちゃんと裏技使ったか?」

「おん、けれど全然効果なかったよ、あれ」

男はとても残念そうな顔をすると。「そんなはずないんだけどなー」と小さく呟いた。

俺は男と少し世間話をした後その場を後にした。

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