第4話 寺院にて

紗江先輩が学校に来なくなってから数日。

俺は近所にあるお寺に来ていた。和尚さまに悩みを打ち明けようと思ったのだ。

このお寺は小さい頃から参拝していて和尚さまとは顔馴染みだ。

境内を進み、和尚さまがいつもいる宿舎を訪ねる。このお寺にはインターホンがないので

ノックをする。

「すみません」

「こんな時分じぶんに訪れるとは。どちら様かな?」

中から出てきた初老のお坊さんがこのお寺の和尚さま。

「お久しぶりです、道元どうげん和尚。

こんな時分って、まだ昼間ですよ?」

俺が苦笑すると和尚さまも微かに笑った。

「今日はどうなされたのかなーいやいや、茶で持てなそう。中に入りや」

「では、お言葉に甘えて」

中に冷房はないが程よく冷えていて涼しい。

俺はここに来た理由を説明した。

「なるほど。それはさぞかし心配だろう」

「和尚さま、俺はどうしたら」

「私から言えることは一つ。彼女のためになることを行いなさい。安直に思うかも知れないがそれが一番」

「ー分かりました。やってみます、ありがとうございます」

「あなたならきっと未来を切り開ける」

和尚様の教えを聞いた翌日。俺は早速、紗江先輩のためになることを積み重ね始めた。

具体的には人形作りだ。先輩が戻ってきた時に少しでも負担を減らせるように。いっそのこと完成させてしまおう。今までとしていることは変わらないが、今はこれが一番だろう。

プロジェクトのメンバーでクラスメイトでもある佐島哲也さしまてつやに声をかけられた。

「よう、武。はりきっているな」

「完成させようと思って」

哲也の顔が一瞬曇った。

「そうか、頑張れよ」

「ありがとう」

俺は後輩に指示をしながら人形の製作に励んだ。おかげで数日のうちに半分以上が完成した。

だが、快方に向かうと思っていた事態は最悪な形を迎えることになる。

いつも通りプロジェクトを進めていると

哲也が憤怒の形相で駆け込んできた。

「いた! おい、武」

「哲也、どうしたんだよそんなに怒って」

「良いか、よく聞けよ?紗江先輩が無堂むどう先輩の家に連れていかれた。お前、今まで何していたんだよ!」

あの日、紗江先輩に絡んでいた先輩の名前は、無堂。ということはー

俺は教室を飛び出した。







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