「順調だね。さすがだ」

「どうも」


 深夜のデスクで、はまた電話を受けていた。今回の報告メールもさっそく確認してくれたようだ。


「本業の方もあるのに、悪いね」

「いえ。大丈夫です」


 本当は悪いなんてこれっぽっちも思っていないでしょうが、と心の中で続けながら苦笑する。


「君らしいな。だが、お世辞抜きに助かっているよ。こんなことを頼めるのは、君ぐらいしかいなくてね」

「…………」


 新人の頃ならいざ知らず、見え透いた台詞に尻尾を振って喜ぶような身でもない。それなりにキャリアも積んできたつもりだ。


「対象もこんな感じで、広げていって欲しい」

「わかりました。あと何件、必要ですか?」

「そうだな、とりあえずもう二、三件ほど頼むよ。それで一段落としよう」

「了解です。引き続き、一件終わるごとにメールは送ります」

「ああ、頼む。ではまた」


 いつものようにさっさと通話は終わったが、会話の間中、相手の機嫌は良さそうだった。順調だというのは、言葉どおりに受け取っていいだろう。


 明後日の夜、だな。


 五件目は、そこで処理することにした。慣れてきたし時間もかからないはずだ。もし上手くいかなくても、保険代わりの対象も押さえてある。ただし自分と同じような人間が他にもいるらしいので、先に〝保険〟に手を出されないようにだけ引き続き気をつけねば。


 まあ、大丈夫だろう。


 軽く頷いた彼は、デスク上のアイスコーヒーを飲み干した。

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