水魔法で大儲け
"水の魔法とはいったい何なのか"というのは大きな謎です。ありきたりな属性ですが、これをどう扱うかで、ある程度魔法や文明などの大枠な設定が決まってしまうかもしれません。
敵を攻撃する際には、水属性の魔法はつららのような氷で突き刺すことが多いように思います。これは火と違って水はあまり殺傷能力がなさそうに見えるからでしょう。
では水の魔法とは氷を出すことなのでしょうか。恐らく違うだろうというのはなんとなく思う点です。氷を出す、冷やすといったことに特化した魔法であれば、氷属性というものもあります。
水の魔法は水に関するものだとしましょう。
ここでよく水や氷の魔法についての考察では、空気中の水分がどうのというSFチックな話になりますが、せっかくのファンタジー世界なのにそれもどうかと思いますので、そういう話は置いておきます。
本小説にとって重要なのはそちらではありません。
今回注目したいのは、水の魔法は水を操るものなのか、水を作り出すものなのかということです。
・魔法で作られた水が飲める場合
・水の魔法が水を操る場合
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・魔法で作られた水が飲める場合
水の魔法の設定が重要だというのは、水はほとんどの生物にとって常に必要となるものだからです。
例えば、水の魔法によって作り出された水は飲めるのでしょうか。飲んで普通に生命維持に役立つのでしょうか。
仮に水の魔法が魔力を水に変換する術だとしたら、生物は現実世界とは全く違う在り方をしていることも考えられます。基本的にどこでも手に入れられる魔力から、水を作り出せるのです。
そのような魔法は人間の文明にも多くの利益を生み出します。
人間が飲み水を手に入れるのは苦労します。技術が確立されてない時代ではまず水がある場所を探索して居を構えるぐらいですから、その重要性は明らかです。
井戸はもちろん、ローマ水路も有名でしょう。蛮族襲来によって引き起こされた水路システムの崩壊は、ローマ滅亡のスピードを早めたといいます。
古くから水の傍で文明を育んできましたので、細かく影響と変化の可能性を見ていけば、歴史を大きく変えることもできます。
また、"日常にも魔法は使われていますよ"というような描写の為に、水道のようなシステムをもった世界をよく見ます。"水の魔石のようなものが蛇口に取り付けられていてあって、それに手をかざすと水が流れる"という世界を皆さんも一度は見たことがあると思います。
確かに水道は重要なインフラの一つですから、魔法大国(?)の箔をつけるのに一役買うことでしょう。
しかし、"魔力を当てるだけで水があふれだす"というような石があると、人間の歴史は色々と変わる可能性があるという点には注意しなければなりません。
飲用水が簡単に人工的に得ることができるのなら、中世の技術では都市がつくれなかったところにも都市を作ることが可能でしょう。現代でも人工的に水を作る技術は高い需要があり、アラブでは雨を降らせるために山を作ろうという計画すらあると言います。
我々が少し長く出歩く際に必ず水筒やペットボトルを持っていくように、移動時の問題もやはり水です。
水魔法の存在は兵站に大きく貢献することは明らかですが、特に船上では顕著でしょう。手のひらサイズの魔石で数人が数年間暮らせる程度の水が手に入るのなら、ありとあらゆる航海や軍事作戦の難度が下がります。
そもそも魔法大国というものが一体何なのかという疑問は尽きませんが、もしそのような資源、技術があるならば、魔法大国の指導者は水の魔法や水の魔石をインフラ整備に当てている場合ではありません。
まずは砂漠や海上などの過酷な環境を通る貿易ルートを積極的に整備し、国力を増強するべきです。史実中世中期から末期の多くの大国の指導者は、貿易に力を注いでいます。貿易で国力を高めた国が、覇権を握ったという例は枚挙にいとまがないというのは今まで紹介した通りです。
それが達成されてもなお水魔法に余力があるなら、インフラに当てることになるでしょう。
つまり逆に考えれば、魔法大国はイタリア都市国家以上の力を持つ、貿易国家でもある可能性が高いと言えます。それは同時に、芸術や宗教、医学、建築学といった、莫大な資金がかかる分野にも秀でていることにもなります。
・水の魔法が水を操る場合
水の魔法が水を操る技術だとしても、十分世界は変わっていくことになるでしょう。
水は何かしない限りは高いところから低いところに落ちていきます。水を意のままに操るために、現実世界では多くの工夫が見られます。現在の都市づくりにしても、治水問題は根底にある物でしょう。
古くはさらに重要だったというのは、どの国の歴史を見てもわかることです。
灌漑技術や護岸工事、地下水問題など、人間が住む限り何かしらの水にまつわる問題が引き起こされます。これらの問題は水の魔法があることで、いくらか軽減されると考えれます。農業の方式もいくつか変化があるのかもしれません。
水の流れを緩やかにするような魔法があれば、川との付き合い方が変わるでしょう。雨が降っていても雲を晴らすこともできるかもしれません。日照りの儀式は水魔法によると考えることもできます。
軍事関連ではどうでしょう。
移動を阻むという点で、指導者は川を防衛の要として利用してきました。基本的に水は人間の自由を奪うからです。しかし障害という役割が川になくなれば、河川や掘りを用いた要塞は弱体化します。
"水を取り入れて防御に使う"という城は世界中に多く存在します。技術の進歩の度合いによって、それらがもっと強固になるか、または意味をなさなくなるでしょう。
むしろ川を自在に操られ、水害を引き起こされてしまうかもしれません。下水を逆流させるだけでも、感染症や士気の低下が望めます。
野戦でも水魔法は脅威です。草原を沼地にするという魔法は、想像以上に猛威をふるうでしょう。対騎兵、対重歩兵戦術の要になるかもしれません。城壁さえも地盤から軟化させることができるかもしれないのです。
逆にベネツィアのような都市はもっと堅牢になる可能性を秘めています。何しろ水を操れるのですから、海の中にだって都市を作れてしまうでしょう。
このように、攻撃魔法としては地味な印象が多い水魔法ですが、水は生死にかかわる重要な成分なわけで、その定義のしようによってはあらゆることが変わってくるという事は想像に難くありません。
加えて上手く使えば行動を制限する、士気を落とすという効果もあるわけで、日常生活や軍事行動のなかに深くかかわってくるでしょう。
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