第11話 敵か味方かNPC! 今日はやめときます
プチハーピー達は、小屋の前に蹲って微動だにしない。
目的地にたどり着いたNPCは、大体が消えるか役目を終えるまでその場に留まり続ける。
今回のクエストでは、後者なのだろう。
レナはアイとポニーを伴って小屋に近付くと、木の扉に視線を集中して右手をかざしてみる。
今までただの背景オブジェクトで、ターゲット出来たことのない扉を、ターゲットする事が出来た。
(なるほど、イベント発生中のみタゲれるわけだ)
操作可能なオブジェクトは、ターゲットすると視界に緑色の半透明な円が出現する。これに右手でも左手でも、掌をかざすとオブジェクトを操作出来る。
レナは早速緑色の半透明な円に触れてみた。
すると、ガチャリ、と扉が開いて討伐クエのボスキャラ、漆黒の隠者が姿を現わす。
思わず数歩下がってアイとポニーの間に並び、漆黒の毛皮鎧に身を包んだ大男を改めて観察してみる。
実に精悍な顔立ちの色男であった。
アイ【パーティ】:よく見ると、いい男だね。
ポニー【パーティ】:でも悪役でしょ? 隠者クエやった事ないけど。
レナ【パーティ】:コラキアの冒険者ギルドで発注してくるイケメンの話では、北の魔界からやって来た尖兵だって話だけど。
アイ【パーティ】:話しかけてみたら?
レナ【パーティ】:そ、そうね・・・。
レナが一歩前に出てみる。
レナ【周囲】:あの、迷子のこの子達を送って来たんですが。
プチハーピーA:パパー、パパー、ただいまー。
ニコラス:遠くに遊びに行くなって言っておいただろう。
プチハーピーA:ごめんなさいー。
(ニコラスって名前だったんだ・・・)
ニコラス:この子達は森で激減してしまったハーピーの子供でね。私が母親共々ゴブリンに襲われている所を助けて以来、ご覧の有様だ。
アイ【周囲】:父親認定されちゃったわけね。
ニコラス:そういう事になる。
ポニー【周囲】:すごーい。会話成立してる。稀少なAIクエだすなぁ。
ニコラス:子供達を無事送ってくれて感謝している。これがお礼の報酬だ。受け取ってくれ。
ニコラスが右手を差し出すと、三人の視界の下の隅にに片手剣のアイコンと白いメッセージが表示された。
【片手剣:アイスブランドを手に入れた】
【攻撃力:130 追加ダメージ:氷属性 装備可能:戦士、騎士、魔法戦士】
アイ【パーティ】:片手剣で威力100超えって結構強いよね。
レナ【パーティ】:クリムゾンレイピアでも80だからね。これ新しい愛剣にしようかな。
ニコラス:ともかくありがとう。我が帝国が魔族に敗北してここまで落ち延びて来たが、南の民にも心やさしき者がいるようで安心した。だが、私は所詮流れ者。この国では受け入れられまい。出来れば、私がここに住んでいる事は秘密にしておいて欲しいのだが。
レナ【周囲】:は!? ひゃいっ、誰にもいいまひぇん!
ニコラス:ありがとう。
【モーション、微笑み】
(ぎゃーナニコレやだイケメン!)
アイ【囁き】:噛んだね。
ポニー【囁き】:そして悶えてるね。
アイ【囁き】:まぁ、イケメンだしね。一応ね。
ポニー【囁き】:だすなぁー。
ニコラス:それでは、これで失礼する。君達の旅路に、光あらん事を。
ニコラスが小屋に戻っていくと、後を追うようにプチハーピー達も小屋に入っていき、扉のオブジェクトがパタンと閉じられた。
しばしその場に立ち竦むレナ・アリーントーン。
アイ【パーティ】:おーい、大丈夫かー? 現実に戻ってこーい。
レナ【パーティ】はっ!?
ポニー【パーティ】:惚れたって感じですね〜。
レナ【パーティ】:惚れた!!
アイ【パーティ】:マジで!? ちょろっ!!
ポニー【パーティ】:一応イケメンだったしね〜。
レナ【パーティ】:うん。今晩は討伐クエ無理。
アイ【パーティ】:やる予定だったんだ。
レナ【パーティ】:うちのギルドがねー。でも、他のギルドとアラ組むらしいし、面倒だし。今日はあのお方とわ戦えませぬ。
ポニー【パーティ】:日本語おかしいぞなw
アイ【パーティ】:じゃあ、他の事する? 3人いれば取りに行ける宝箱あるんだけど。
ポニー【パーティ】:北の氷エリアに行く途中のダンジョンにレア宝箱配置されたんだー。
レナ(パーティ】:ああ、知ってる知ってる。鍵落とす巨人が結構強いって話だよね。
アイ【パーティ】:レナさん80だから、同格レベルなのね。私じゃ格上になっちゃうから勝てそうになかったんだけど、一緒に行ってくれると嬉しいかなー。
レナ【パーティ】:いくいく、もちろん。あ、ついでにフレ登録してもいい?
ポニー【パーティ】:もちですw
アイ【パーティ】:こちらこそよろしく^ ^
レナ【パーティ】:よろよろw
三人は、フレンド登録を相互に行うと、小屋を後にした。
レナ【囁き】:タケルくんさんおつおつーw
タケルくん【囁き】:乙ですw まだ集まらないからもちっとまってねw
レナ【囁き】:あー、それなんだけど、今日あたしパスで。
タケルくん【囁き】:え、マジで!? なんで?
レナ【囁き】:うーん。ちょっとフレに手伝い頼まれちゃってさー。それにちょっと疲れちゃったから、手伝い終わったら落ちるかもです。
タケルくん【囁き】:マジで? 残念。
レナ【囁き】:ごめんねー。
タケルくん【囁き】:いいよいいよ。今日のアライアンス説明してなかった俺らも悪いし。
レナ【囁き】:それは正直びっくりした。
タケルくん【囁き】:だよね。ギルマスには伝えとくよ。
レナ【囁き】:さんきゅー、愛してる!
タケルくん【囁き】:照れるぜベイベー!!
レナ【囁き】:それじゃ、また今度ねーw
タケルくん【囁き】:またよろ〜^^ノ
プチハーピークエ直後のレナ・アリーントーンの心変わりからの、タケルくんとの会話ログより・・・。
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