字書き

  絵描きを諦めて以後、私は色んなことに手を出し、属性を追い求めた。


 プログラミングは開発環境を整えたはいいものの、何をどうすべきか分からず止めた。折り紙は途中で飽きて止めた。字書きは書きたいものがなく挫折した。読書はバイトの通勤電車でする程度なので属性とは言わない。ゲームも金がないため同人ゲームをやる程度なので、これも属性とは言えない。学生時代にやっていた合唱は一人では出来ないし、もはや興味もなかった。音楽はたまに適当なものを聴くぐらいなので、属性とは言えない。コーヒーは豆から抽出こそしているが、ただただ消費しているだけなので言えない。料理はレシピに沿って作るだけなので言えない。


 結局、現在に至るまで属性らしい属性は手に入れることが出来ていない。


 ただひとつ、字書きについて取り上げる。


 字書きに興味を持ったきっかけは色々あったが、最も影響があったと言えるのはコミュニティーむらにいたころの出来事だった。当時ゲームを利用した映像作品を作るプロジェクトが進行していて、一つの成果物が出来たころ、参加者の一人から小説版の話が持ち上がった。その頃私はプロジェクトに何も寄与していなかったが、話を聞いて、なんだか自分も役に立ちたいという気分になった。


 私は思い立って、映像の冒頭を文章化してみることにした。たしか、半日くらいかけて書いたと思う。思いつきで始めたので、かなり悪戦苦闘しつつも、出来るだけ格好良く書いたつもりだった。


 出来上がった拙文をコミュニティーむらに上げると、思いの外反響があった。私は恥ずかしくも、結構嬉しかった。ただ一人、何か指摘しようとしていたが、何も言われず終いだった。今思えば、おそらく視点がぐちゃぐちゃだったり、文法ミスがあったり、初歩的なミスの指摘だったと思われる。思い返すだけでも、恥ずかしくなる文章だ……。


 時は流れて、ふと思い出した私は、小説を書いてみる気になった。というわけで、早速私はなろうやカクヨムに登録した。


 しかし、例の文は映像をいわば模写しただけだったので、ゼロから小説を創るのは全く見当もつかなかった。私は字書きも諦めた。なんとも根気のない奴だ。

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