(6)
だが、次の瞬間、「もう1人のボク」が連れている支援ロボットが銃撃を始める。
「『らぷ太』『らぷたん』、徹甲弾で反撃して」
「ふんぎゃっ‼」
「ふんぎゃっ‼」
2人は後ろ向きに走りながら銃撃。4機の支援ロボットが夜道を飛び跳ねながら奇環砲を乱射し続ける。
もちろん、ボクと「もう1人のボク」、そして「レッドスカル」も蛇行して走り続けながら流れ弾を避ける。
「ちょっと、そっち、道が違います」
「後で考える。『らぷ太』曲る直前に煙幕弾」
そう言いながら、ボクは道を曲る。
しかし、進行方向にあるモノが見える。灯りだ……。
「え……まさか、しまった」
そう、「こっちの世界」の「久留米」には夜の灯りなどほとんど無い。ただ一箇所を除いては……。
灯りの中に突入。そこに有ったのは……。
酒場らしき建物。
売春宿らしき建物。
軍服をだらしなく着たおっちゃん達や
ケバい化粧のおね〜ちゃん達。
「なんだ?」
「おい、誰か、警備隊に連絡を……」
辺りがざわめく。
「あ……と、ここが……その……」
「はい、日本陸軍・久留米師団向けの歓楽街『桃町遊廓』です」
「やれやれ……この子達はキミに預けるよ。明日の夜明け
「ええ……」
「じゃあ、もし、ボクが来なかったら……ヤツに負けたか殺されたかしたと思って」
「えっ?」
「『らぷ太』『らぷたん』『タル坊』、この人の声を声紋登録。とりあえず、この人の指示に従って」
「ふんぎゃ♪」
「ふんぎゃ♪」
「ふみゅ〜♪」
支援ロボットの「らぷ太」「らぷたん」とAI搭載のモーターサイクル「タル坊」が返事をする。
「チャユ、逃げて」
「でも……」
「もういいや。タル坊、とりあえず走って。あと、らぷ太とらぷたんは、タル坊についてって」
「ふんぎゃ♪」
「ふんぎゃ♪」
「ふみゅ〜♪」
3人は返事をして走り出す。
「うわあ〜」
「すいません、どいて下さい‼」
「どうするの? 一時期に手を組む?」
ボク達に付いて来た「レッドスカル」がそう言った。
「まさか『お前では無理だ』なんて言わないわよね?」
「キミじゃ無理だ。逃げろ」
「相手が強いのは判ってる……。何故か記憶が無いんだけど……私……どうやら、
やがて、「もう1人のボク」と、その支援ロボットが姿を現わした。
ATVから降りる「もう1人のボク」。ボクのに似ているが、手足が妙にゴツい「鎧」を着装している。おそらく、その手足には何か隠し武器を仕込んでいるのだろう。
しかも、その「鎧」の装甲は……継ぎ接ぎ……。黒い部分と、銀色の部分が入り交じっている。
「拡大」
ボクは「鎧」の制御AIに命令を出す。敵の「鎧」の表面を見る限り……黒い部分には凹みや細かい傷が目立ち、銀色の部分は、その逆だ。
おそらく、元々は黒一色で、破損した部分を置換していく内に銀色の部分が増えたのだろう。
しかし、何故、右半身と左半身で明らかに「黒い≒古い部分」と「銀色≒新しい部分」に差が有るんだ?
右腕と左足はほぼ銀色なのに、左腕と右足には黒い部分が残っている。
ヤツが、本当に……「もう1人のボク」なら……ヤツとボクの戦い方はかなり違うようだ。ボクと「もう1人のボク」が分岐したのは、一体、いつなんだ?
「判っている筈だ……『もう1人の私』。そして、この世界の赤い『鎧』の戦士……。君達では私には勝てない。投降の決断を下す時間を与えよう。一〇秒以内に……両手を頭に付けて跪け。そして『鎧』の全機能を停止させろ」
もう1人のボクは、そう言った。
「ねぇ、知ってると思うけど……」
「何?」
「あいつは、ただ強いだけじゃない。相手の心や体調や次の動きを読める。例え、『鎧』を着装してる相手だろうとね。ただでさえバカ強いヤツが、そんな真似が出来る。その意味は判るよね?」
「……知りたくなかったわ……」
「あいつに投降する気でも、別に咎めはしない」
「私もよ」
「じゃ……やりますか」
「そうね……」
ボクと「レッドスカル」は……同時に……「もう1人のボク」に突撃した。
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