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「さてと……おそらくは、もう何人か、ボク以外に他の世界から来た『鎧』の着装者が居るんでしょ。それも、ボクが使ってるのと同じタイプの『鎧』の」

 ボクは、護国軍鬼デモニック・パトリオットに聞いた。

「何で知ってるの⁉」

 「レッドスカル」が叫ぶ。

「じゃあ、本当に⁉」

 続いてチャユが叫ぶ。

「初歩だよ、ワトソンくん×2。ボクの世界に有るのと似ているどころか互換性が有る規格の技術の産物。ボクが良く知ってる技を使うロボット。ボクの攻撃パターンを知ってるヤツ。こいつらの中心メンバーは、ボクの世界と、つい最近までほぼ同じ歴史を辿った世界から来たヤツだ。なら、ボクのに似た『鎧』と、その着装者が居てもおかしく無い」

「安心しろ。『鎧』の着装者は1人だ。ただ、残念ながら、お前の手の内の大半を知っていて、技量も知識も経験も、お前より何枚か上手だ。お前が、我々に敵対して勝てる可能性は極めて低い」

「つまり、何か、ボクにやらせたい事が有るんで、う事を聞け、と」

「そう云う事だ」

「その為に、この回りくどい真似をやった、と。ふ〜ん、そんなの、好みじゃないなぁ……。隠したい事が有るとか、後ろ暗い事情でもない限りは、、事情を全部打ち明けて、素直に協力を求めるよ」

「俺をスカウトした頃のアイツも、今のお前みたいな感じだったな……。その後、変ってしまったが。で、御同行願えるかな、青き戦士ソルジャー・ブルー?いや、エイミー・エヴァンスと呼んだ方が判りやすいかな?」

「最悪だ……。最悪の予想ドンピシャリだ……。じゃあ、聞くけど、もう1人の『鎧』の着装者は、今、どこに居るの?」

「ここから1㎞以内って所だな」

「チャユ‼ボクをすぐに元の世界に返して‼それが駄目なら、どっかに、こいつらの知らない隠れ場所ない⁉ラプ太、ラプたん、ドローンがうろついてないか探して‼見付け次第撃破‼あ……やっぱり……」

 ボクがそう言い終えると、ほぼ同時に、ラプ太とラプたんが、空中・地上を問わず、そこら中に奇環砲をブッ放し出した。

「おいおい。どこの世界でも手に入る訳じゃないんだ。壊さないでくれ」

「そんなに大事なら、金庫にでもしまっとけば?何なら、いい貸金庫を紹介しようか?」

「一体全体、何がどうなってるの?」

「ねえ、チャユ。ボクたちの世界の情報を教えたのは、そこに居る男なの?」

「ええ」

「そして、そいつの仲間の『鎧』の着装者の顔は見た事ない?」

「いえ、彼の仲間に『鎧』の装着者が居る事そのものを教えてもらってません」

「ああ、やっぱり……」

 今度はレッド・スカル。

 こりゃ完全にマズいな。相手の「鎧」の着装者の正体がボクの思ってる通りなら、ほんのちょっとした油断でも命取りだ。いや、とうより、敵が勝手に有り得ないレベルの油断でもしてくれない限りは、勝目は無い。

「ラプ太‼ラプたん‼その男を非致死性弾で威嚇射撃‼タル坊、来てッ‼チャユ、逃げるよ‼」

「ちょっと待って下さい‼」

「そのヘルメットは捨てて‼ヤツらからもらったモーターサイクルも‼この子の後に乗って‼」

「待て、エイミー・エヴァンス。1つ提案が有る。我々の組織としての提案ではなく、俺個人としての提案だが」

「後でゆっくり話し合おう。連絡は、気が向いたら、こっちから入れる。キミのSNSアカウントやメール・アドレスも、こっちで勝手に調べるから、う必要は無い」

「お前にとっては重大な話だぞ。お前の世界のお前の恋人は元気か?」

「こりゃ、また、ありがちな脅迫だね」

「このままでは、お前は、恋人を失なって、何十年も1人で生きていく事になる」

「ボクの世界では、ボクの恋人は、何年か前に長生きが望めない程の大怪我をしてる。つまり、もう、覚悟は出来てるって事だ」

「愛する者を失なった後、1人で生きていかねばならないのが、お前が予想しているより遥かに長い時間でもか?」

「へっ?」

「お前は生まれて……二十数年と云う所か。だから知らないだろうが……お前たち、第2世代以降の強化兵士の寿命は、常人より遥かに長い」

「証拠は?」

「無いが、どうして、そうなるかは説明出来る。再生能力ヒーリング・ファクターにリミッターをかけた事による予想外の副作用だ」

「ちょっと待て……」

 証拠は無い。だが、筋は通っている。再生能力ヒーリング・ファクターにリミッターをかけた事で、ボクたちより前の世代の強化兵士にとっては致命的な癌などの病気に罹っても、進行の早さは常人並か、それ以下になっている筈だ。もし、それが老化のメカニズムにも影響を与えているとするなら……。

「何が望みなんだ?」

「我々は、お前に『仲間』を提供出来る。我々と共に来い。そして、ゆくゆくは、俺やアイツに変って、我々『亡命者エグザイルズ』の指導者となれ」

「キミだって、常人より寿命は長い筈だ、対神人間兵鬼タクティカル・フィーンド。キミがやり続けりゃいいだろ。折角、若い体のまま長生き出来るのに、残りの長い人生を隠居して暮すつもりか?」

「それも悪く無いな。長い間、様々な平行世界を渡り歩いたせいで、俺もアイツも変ってしまった。このままでは、俺達の組織が、かつて俺達が目指していたモノとはかけ離れたモノに変貌する危険性が有る。いや……もう、そう成りつつ有る。他ならぬ、俺のような古株と、俺達の指導者のせいでな」

「まどろっこしい言い方は好きじゃない。はっきり言ってくれ。キミ達の指導者ってのは……」

「安心しろ。未来のお前自身じゃない。あくまで、平行世界版のお前だ。ただし、最盛期の肉体とお前の倍以上の戦闘経験を合わせ持った、お前より確実に強い、もう1人の『エイミー・エヴァンス』だ」

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