瀾(三)
『おい、小僧、何で逃げてねぇっ⁈』
やっとJR久留米駅の構内に入ったら、「おっちゃん」からの怒号。
他の4人は既に西口から久留米駅の外に移動している。
「
変だ……。「おっちゃん」が居るのは……西口の駅ビルの地下倉庫。
GPSの誤差か……いや……まさか……。
「まさか……表の仕事で借りてた場所にマズいモノを保管してたりしませんよね……。爆薬とか」
「爆薬?」
流石に、桜さんが聞き咎めた。
「言いましたよね? 私だったら……無関係の人を巻き込む心配が無い、と云う条件の元で、ヤツを倒すなら……駅の建物ごと爆破するって」
「おい……何だ? ……その、わざとらしい大声は……?」
「な……何を……考えてるの……貴方達は?」
私達2人しか見当らない駅の構内に3人目の声がした。
言うまでもなく……ヤツだ。
「そりゃ……あいつに聞かせる為ですよ」
ヤツ……佐伯と言うべきか「珊瑚」と言うべきか不明なそいつが……駅員さえ退避した改札から姿を現わした。
「何が『御当地ヒーロー』『正義の味方』よ? あなたが言ってる事がはったりじゃないなら……狂人の集団じゃないの?」
「良かったな……あんたの疑問は解決した。私に何か特別な『何か』が有るなら……その理由は、狂人の集団の一員だからだ。話は終りだ。これ以上、何もせずに、とっとと帰ってくれ」
「純粋培養の……『正義の味方』を称する狂人って訳ね……」
だが……ヤツの口調に何か違和感が有る。
「おい……お前、ひょっとして……余計な事を……」
何かがマズい……。
そう思った瞬間の……わずかな構え……わずかな動揺……。人間の心や体の動きを読めるヤツは……私の心身に現われた、その兆候を見逃してくれなかった。
「私を攻撃する気なら……その黄色いのは無事じゃ済まないわよ」
「どうすんだよ……? どう転んでもヤツに有利じゃないか……」
「『私に構わず
「あのなぁ……」
心を落ち着ける為の軽口を叩いても……あの最後の手段以外の手は思い付かない。
やるしかない……。
「ちょっとの間だけ……ガトリング砲は1人で持ってて下さい」
「へっ?」
私は……「鎧」のマスクに手を延し……。
『おい……良い報せと……悪い報せだ』
その時、後方支援チームから連絡。
『良い報せは……5分以内に応援が来る』
助かった……後は……何とか……時間を稼げば……。
だが、悪い報せを聞いた時……。
「すいません……やっぱり……これ貸して下さい」
「えっ?」
私はガトリング砲を奪うと……。
「不自惜身命‼」
1日に3回も「火事場の馬鹿力」を引き出す自己暗示を使ってしまった。
マズいな……何日か寝込む事になりそうだ……。
『そこに、まだ望月が……私と一緒に来た男が居たら代って』
『おい、高木、どうした?』
『万が一、私が行きて帰れても……卒業式は休む。担任の先生にそう言っといてくれ』
『何、言ってんだ、おい……おまえ……まさか……
自分を無視して横を走り抜ける私に……ヤツは「えっ?」と云う顔を向けていた。
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