瀾(九)

 JR久留米駅の東口は混沌とした状況になっていた。

 白い大型の河童。

 緑っぽい色と茶色っぽい色の虎縞の河童。

 青鬼もどき。

 普通の河童……いや、この状況における「普通」が何かはややこしいが……。

 銀色の狼男。

 普通の姿……と言っても、ヘルメットと簡易防具ぐらいは着けているが……の人間。

 レンジャー隊。

 私の仲間達。

 それらが入り乱れて戦い続けている。

 虎縞の河童は、多分、「水虎」……熊本を本拠とする連中だ。戦国時代ごろに大陸から移り住んだ……他の日本の「河童」とは別系統の「河童」と言わているが、本当にそうなのかは不明だ。少なくとも、中国や韓国の「同業」から似た姿の「異能力者」の目撃例は上がってきていない。

 普通の……子供向けの「妖怪図鑑」に出て来そうなと云う意味で……河童同士でも争いが発生している。

 お互いに遺恨が有る連中が一箇所に集まった結果がこれだ。

 すぐ近くで、白い河童が何匹か、レンジャー隊の通常型グリーンに襲いかかろうとしていた。その緑のレンジャー隊員は銃を発射しているが……威力がデカ過ぎる。

 銃弾は白河童の体を貫通し……そして、再生能力が有る白河童は、すぐに傷が塞がる。

 私は軍刀を抜き……。

 飛び上がって、白河童の首を2つ斬り落す。

「狙うなら、首から上」

「あ……すまん……って誰⁉」

「お……おい……お前……まさか……」

 桜さんに正体がバレたようだ……。

「それより8時の方向」

「えっ……? うわっ……‼」

 桜さんに「水虎」が一匹接近。

 背面の大型ロボットアームがメインの武器であるレンジャー隊のパワー型イエローは、敵に接近を許すと逆に脆い。

 しかも、そのロボットアームはガトリング砲を持っているせいで塞がっている。

 次の瞬間、黒い風が「水虎」の頚動脈を斬り裂く。

「ぎゃっ……?」

「この状況じゃ……飛び道具は役に立たねえぞ」

 「おっちゃん」だった。

「そ……そう言っても……」

 だが、その時、治水と苹采姉さんの間で通信。

 何が起きてる?

 どうやら、N鉄の電車をジャックした何者かが居るらしいのだが……。

 続いて通信機ごしに轟音。

 お……おい……どうなってるんだ?

『ごめん、何人か逃げてる。JRの久留米駅方面に……』

 待て、一体、何をやらかした?

『あ……マズい……全員、JR久留米駅の建物内に避難しろ‼』

 今度は久留米チームの後方支援要員の権藤さんから通信が入る。

 そして送られてきた映像には……。

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