瀾(三)

「で、どうすんの?」

 私達は4輪バギーATV「チタニウム・タイガー」に乗って走り出した。

「とりあえず国道3号線まで行く。応援は鳥栖方面と熊本方面の両方から来るが、どっちも今居るのは3号線だ……そこで合流……」

『おい、待て、新しい2人は誰だ? しかも、内1人は「護国軍鬼」か?』

『ま……まさか……小僧か?』

『こんなに早く「最後の手段」を使っちゃったのかよ』

 両眼立体視型のモニタに、死神ヤマ風天ヴァーユ猿神ハヌマンのアイコンが表示される。

「な……なに……これ?」

「仲間からの通話だ」

 次の瞬間、別の仲間から個別通信が入る。

『その「護国軍鬼」を着装してるのは……瀾だな……』

「……はいConfirm……」

『やってしまった事は仕方ない……。今は……お前と妹の2人が生き延びる事を最優先にしろ』

了解Affirm

『言いたい事は山程有るが、お前に死なれては言う事さえ出来なくなる』

了解Affirm

『あと、この際だ。前々から1つ聞きたかった事が有る……』

「何ですか?」

『雄介が……お前の親父が、お前に4号鬼を使わせたいと言った時のアレだが……』

「えっと……」

『「単に制御AIが着装者の動きを学習するだけではなく、制御AIと着装者が共に成長した場合にどうなるか試してみたくないか?」と云うアレだ……。あの理屈を考えたのは……雄介ではなく、お前か?』

「……はいConfirm……」

『判った。後で、ゆっくり話そう』

 個別通信は切れた。個別通話中に画面に表示されていたアイコンは……草書体の梵字2文字を組合せたもの……。そのアイコンを使っている者は……コードネーム「羅刹天ラーヴァナ」こと私の伯父・高木日焔……「護国軍鬼2号鬼」の着装者だ。

「ねぇ……瀾ちゃん、どうしたの? 話してた相手、誰?」

「誰って?」

「震えてなか……あ……マズい‼」

「今度は何だ⁉」

 次の瞬間、轟音と共に……右後方に有った建物が吹き飛んだ。

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