不思議なお家⑵

(ただいま。おかぁぁさん!お客さん!)

階段を降り切ったところで、男の子が叫んだ。私も、負けずに

(お邪魔しまぁぁす!)

と叫んだ。

(おかえり、高虎たかとら。あら、いらっしゃい)

気の良さそうな女性が、振り向いて言った。

(お邪魔します。私、大塚 雪璃おおつか ゆりと言います)

私は言った。自己紹介したのはいいが、初対面で“かくまってください”なんて言っていいのかと戸惑っていたら、

(お姉さん、かくまってほしいんだって)

と男の子が言った。男の子に感謝しながら、

(お願いします!住むところがないんです!)

と叫んだ。しかし、

(ごめんなさい。経済的にしんどくて、なんとかやりくりしているので、もう1人は・・・)

やっぱりか・・・そんなに簡単にいかないよね。

 “なんなのこの子。汚いわ”

女性のさっきとは違う聲が聞こえた気がした。私は、その聲に気付かないふりをして、

(そうですか・・・ありがとうございました!)

と無理やり作った笑顔でお礼を言った。

(お役に立てなくてすみませんねぇ)

女性もまた、目が笑っていなかった。

(お邪魔しました)

私は、寒気をおぼえ最敬礼をした。そんな私を見て、男の子は

(僕、送るよ)

と言った。

(ありがとう)

  カツンカツン カツンカツン

 私と男の子の足音が響く。外に出たところで、私はふと思った。

(どうして、外に建物あるの?焼けちゃうんじゃない?)

(外の建物は、耐熱性なんだ。耐熱性の建物は、価格が高いから一般人は地下に住んでるんだよ)

(そっか。今日はありがとう)

(どういいたしまして。困ったらおいで)

(うん、ありがとね)

私は手をふりながら、歩いた。

 さて、どうしようか。

 と上を向いた。偽物の空のくせに、綺麗な茜色に染まっていた。そこから、声が降ってきた。

(もうすぐ、危険地熱時間に入ります。外にいるみなさんは、速急に建物に入てください)

っ⁉︎どうしよう。とりあえず、建物の中に入らなきゃ。私は、そっさにスーパーのようなところをめがけて走った。

  どん!

 どの時だった。男性とぶつかった。

「ごめんなさい!」

私は、叫んだ。しかし、それが本当の声だったことに気づき、

(ごめんなさい)

と言った。

 その男性は、キョトンとした顔で言った。––––いや、“キョトン”というより、疑うような顔だった。

「君も、喋れるのかい」

  どくん

「えっ」

 心臓がなった。“この人なら私を助けてくれる”私の勘がそう言っている。

「とにかく、ここは危ない。僕の家に来なさい」

そう言って、彼は私の手を引っ張り走った。

 彼は誰なのか、知らない。もしかしたら、犯罪者かもしれない。でも、今はこの人について行ったほうが身のためだ。

 私はそう思い、その大きな手を振りほどかなかった。





 彼との出逢いが、私の気持ちを揺らがすとは、このころの私は気づいて

いなかった。


 彼を愛してしまうとは・・・・





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