男の子

 ここにきて何時間経ったのか、何日経ったのか分からない。見知らぬ木の根っこの上で私は、三角座りをして丸まっている。知らず知らずのうちに頰をつたう涙が服にシミを作っていった。

(おねえさん、どうしたの)

3歳くらいだろうか。一人の男の子の声が聞こえた。その声の主であろう人が私を覗き込んでいる。

「ここはどこ?」

私は思わず声を出した。

(・・・?)

しかし、その男の子は黙って不思議そうな顔をしている。

 ・・・そうか、テレパシーだ。ここは声じゃなくて、気持ちで会話しているのだ。

(ここはどこですか)

伝われ!伝われ!と願いながら私は聲を出した。

(東経135度、北緯34度の地点だよ)

 どうやら、伝わったようだ。なんとなく、コツが掴めた気がする。

 しかし、その地点がどこなのか私にはどこなのか分かたなかった。具体的な質問をしようと思い、また聲を出した。

(ここは日本ですか)

しかし、返ってきた聲は意外なものだった。

(ニッポン?どこそこ?)

えっ、日本が分からないの?

(じゃあ、この国の名前は?)

男の子は、少し考えてから言った。

(ないよ。)

国名がない!?私はその言葉に衝撃を受けた。男の子が続ける。

(地域の名前はあるけどね。で、ここはガーベラ地域だよ。なんか偉いさんが花が好きで、花の名前をつけたんだって)

へぇ、そうなんだ・・・って、納得してる場合じゃないでしょ!とにかく、どこか住むところを探さないと。

(私色々事情があって、家がないんだけど、かくまってくれない?)

(おねぇさん、ホームレスなの?)

男の子の、私を見る目が明らかに賤しいものを見る目に変わった。辛い・・・

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