異世界

 だってそこは––––––––そこは、異世界だったのだから。

 半球の天井と、そこに映されている嘘っぽい青空、度々すれ違う見知らぬ人々、限られた空間の中に立ち並ぶ高層ビルの数々、明らかに現代より発展している街並み。

 ここはどこ?私、さっきまでおじちゃんと話してたよね。なんでよく分かんない所に来てるの?私は、そんなことを考えながら、その景色をただただ呆然と見渡していた。今、過去なのか未来なのか分からなかった。時空だけでなく、ここがどこなのかすらも分からなかった。でも、現代では感じない違和感––––というのも、何か当たり前のことが欠けているような感じ––––があった。

 ただ立っている私を、その町の人々が厭らしいものを見るような目で眺めながら通り過ぎていく。その視線に気付きながらも、私は気づかないふりをした。そのことを認めたくなかった。

––––僕はね、一度人類は滅びたんだと思うんだ。

 おじちゃんの口癖が蘇る。もしかしたら、ここはその世界なのかもしれない。しかし、その説を信じていない私からすると、信じがたい。・・・でも、何だかそんな気がしてきた。そうであってほしくないと心の片隅で願っていながら。

「––––」「––––」

この人たち、話してない・・・。そうだ、さっきからやけに静かだと思ったいたら、そういうことだったのか。しかし、この人たちの表情は、コロコロと変わっている。自分には聞こえない聲で会話している人々が、同じ人間の形をしているが、得体のしれないものだと思えてきた。何を話しているのか分からない。そのことがどんなに怖いことなのか、今やっと分かった気がする。

 

 だれ?


 何?


 怖い・・・ 

 

 私、なんでここにいるんだろう・・・


 怖い。コワイ。

 

 助けて、お父さん。


 助けて、お母さん。


 かえりたい

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