睡蓮のあとに

房成 あやめ

おじちゃん

「僕はね、一度人類は滅びたんだと思うんだ」

私の母の兄––––叔父の口癖は、これだった。


 叔父は、考古学者だ。他の人なら言わないような異説を唱える、変態(独身)親父だ。それに加え、ヒゲがボウボウで髪が薄く平気でお風呂に入らないから変な匂いがする。この人は、正真正銘のだ。

 私は鼻が敏感で、叔父に近寄るときはいつも口で呼吸している。もし、油断して鼻で吸ってしまったらその瞬間恐ろしい事態になる。それは、地獄のような苦しさだ。ひどい吐き気と、目眩、頭痛が襲い、時には耐えきれず吐いてしまうほどだ。幼い頃に、一度だけ、救急搬送されたことがある。私は気を失っていて知らないが、搬送理由が“叔父の匂いを嗅いで倒れた”ということに、救急救命士は大層驚いたそうだ。


「でもさ、おじちゃん。何で人類は滅びたのさ」

叔父の異説に、私は決まってこう答える。

「じゃあ逆に聞くけど、君は何で滅びたんだと思う?」

叔父の返答も、いつものものだった。

「・・・分かるわけないじゃん」

そう呟いて、私は瞬きをしようと目を瞑った。


 その時だった。瞼の奥で何か––––フラッシュのようなもの––––が光った気がした。私は何かと思い、目を開けた。次の瞬間、私は目を疑った。だってそこは––––––––

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