第5話 お花見①

翌日、朝起きると昨日に続いて花見日和の天気だった。

春は、天気が崩れやすいと聞くが、崩れることなく今日を迎えた。

かぐやとの花見を思い出したのは、かぐやからの着信だった。

『おはよう! 花見のこと忘れてないよね?』

すっかり忘れていたと言ったら、かぐやに怒られるかもしれないってことも考えて返信した。

『おはよう。忘れてたけど、思い出したよ。』

『忘れてたの!?。でも思い出してくれたならいいや。楽しみだね〜。』

『うん。』

『もう11時だし、先行ってるね。』

『分かった。僕も行くから、じゃあね』

そこで彼女とのやりとりを終え彼女のいる方へ向かうことにした。


11時を過ぎた駅前は、満開の桜を見ようとした人でいっぱいだった。

両親共働きの僕が花見に来たのは、小学生ぶりだった。

そんな懐かしさをしみじみ感じていると、例のお姫がやってきた。

「おはよう!優牙くん。あっ! 間違えた。

もう11時過ぎだからこんにちはか。 こんにちは!優牙くん。」

「いや、まだおはようでいい思うよ…。まだ12時すぎてないし」

「あぁぁ〜!!! もしかして優牙くん、12時から午後だと思うタイプ?」

「それにタイプってあるの?」

「うん。私は、11時から午後だと思うタイプ。」

「あ、そう…。で、話変わるんだけど、花見に来たんじゃないの?

僕もうお腹減ったんだけど。」

「えーーーーーーーーーー!!!」

かぐやのあまりの声の大きさから受けた視線を避けるように、かぐやの口を塞ぎ、彼女の手を引っぱって、そそくさとその場から離れた。 途中、かぐやはもごもごと僕の手の中で何か言っていたが、僕はかぐやに「バカ」と一言だけ伝え、彼女を僕の手の中から解放してあげた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る