第4話 約束
僕の両親は、共働きだ。お互い同じ会社で出会ったらしい。つまり、社内恋愛だったそうだ。だから、今、この家には僕一人。この静かな空間が僕は好きだ。教室の騒がしさだと、小説の世界に入り込めれないから。「ピロン」僕を現実の世界に引き戻したのは、短い着信音だった。それは、例の彼女からだった。
『ただいま。優牙くん! 家着いた?』
『ただいま』って言うのはおかしいと思うけど仕方ない。かぐやに僕は合わせることにした。
『おかえり。僕は着いたよ。』
『よかった〜。もし、途中で死んじゃったりしたら、せっかくの願い玉が無駄になっちゃうもん。生きててよかったね。』
『うん』
『ちょっと〜!! 何かツッコミないの!? 私、せっかくボケたのに。』
『あ、あれボケだったんだ。』
『本心と思ったの?』
『うん』
あと6カ月で死ぬ運命で 我ながらかぐやをいじるのは、楽しい。
『ひどーい。もう、願い叶えてあげないよ。』
こういう時は、『ダメ』と言うべきなのか、からかって『いいよ』と言うべきなのか迷うところだ。こういう時は、素直になった方がいいだろう。
『いやだよ。もし、僕の願いを叶えずに1つ願い玉が残る状態で死んだら、かぐや後悔するだろ?』
『うん…。そっかー。よしっ!じゃあ、明日一緒にお花見行かない?』
どういう流れだというツッコミを抑えてかぐやに返信する。
「いいよ。』
僕が『いいよ』と打つのを見透かすように、僕が送ったのと同時に彼女から新しいメッセージが届いた。
『じゃあ、明日11時30分に駅前の公園待ち合わせねー。』
『わかった。じゃあ、また明日。』
かぐやとのやりとりを終えた後、僕は今日一日のことを振り返ってみた。今日一日は、小説みたいな一日だった。まさか誰も隣の席に座った転校生が、あと6カ月で死ぬ運命なんて思わないだろう。
しかもその運命が、病気とかじゃなくて神様に与えられたなんて。
その上、願い玉で願いを叶えられる能力があるって言うのだから、誰だって、まるで小説だなって思うだろう。
その日の夜、僕は彼女と少し会話をした後眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます