第2話 筆談

『かぐやさんじゃなくて、かぐやでいいよ。』

僕は、シャーペンを取り出して書く。

『じゃあ…。かぐや。これでいい?』

先生にばれぬよう、かぐやに渡す。

『いいよ。優牙くんは、彼女とかいないの?』

『いないよ。かぐやは?』

かぐやは、少し笑ったように見えた。

『いないよ。優牙くん、ここの学校って屋上空いてる?』

帰ってきた文字を見て、ほっとした自分がいた。

『空いてるよ。』

僕は、それだけを書き、かぐやに渡した。

『今日の放課後って暇?』

『暇だよ』

『じゃあ、今日の放課後、屋上に来て。』

かぐやから帰ってきたのは、なぜか僕を誘う文面だった。僕は、かぐやに返事を書いた。

『うん。分かった。』

かぐやに渡すと、かぐやはこっちを見てにっこり微笑んだ。

『じゃあ、帰りの会が終わったら、屋上に来てね。優牙くん。』

「はい。じゃあみなさん、これから、体育館に行きます。男・女それぞれ1列ずつ並んでください。」

みんながぞろぞろと前後のドアから抜けて行き、僕もその波に巻き込まれるように進んでいった。

校長先生の長い話も終わり、教室に戻り椅子に座っても静かにならないクラスメイトは、先生にお叱りによって黙っていった。

「じゃあ、みなさん、下校して下さい。」

先生の号令とともに全員が移動し始めた。

「おい、優牙帰ろうぜ!」

「僕、先生に仕事頼まれてるから、先帰ってて。」

「あー。お前だけ? じゃあ、頑張れよ。」

「うん。じゃあ、また明日な」

智希と挨拶を交わし、かぐやの待つ、屋上へ向かうことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る