冬尽くす

冬尽くす(ふゆつくす)

大寒の終わりから立春の頃にかけて大寒波が到来し、その冬一番の冷え込みになったり積雪になったりすること。

冬が去る前に残った季節を出し尽くしていく。


・冬

 冬尽くすは、冬に属する未言の中で、最も冬そのもの、その根源に位置する未言です。

 冬尽くすとは、冬の全てを、一時に出し尽くすということで、そのには冬の力、冬の性質の全てが詰まっているのです。


・冬の極限

 季節とは、夏を極大、冬を極小として振動する周期です。

 では、季節の始まりが何時かと言いますと、極大点を夏の真ん中、極小点を冬の真ん中に置いた四等分ずつの期間……というわけではないのです。

 立春、つまり春の始まりとは「次第に春めいて来る頃」とされています。つまり、冬の極小を少し過ぎて、周期グラフの微分係数がプラスに変わった瞬間から、春なのです。立春を過ぎたのに寒いというのはよくありますが、これは立春という期間が季節周期の極小に極めて近いから、当たり前のことなのです。

 そして冬尽くすとは、冬とか春とかそういう季節期間ではなく、季節期間の極小点を指す未言でもあるのです。


・大寒、立春

 冬の極小を指す未言である冬尽くすは、その前後にある二十四節気の大寒、立春を深く関わります。冬の極小はそのどちらかの季節にあるはずなので、冬尽くすを観測可能な定義で表現すると「大寒か立春の頃に来るその冬一番の冷え込み」となるのです。


・大寒波

 当然ながら、冬尽くす時は、寒波が原因となります。中でも大寒波は規模も大きく質も高く、より強く冬尽くすでしょう。


・平成三十一年二月九日寒波

 平成三十一年(2019年)二月九日、この日に冬尽くすは生まれました。

 東京で大雪となり、各地も冷え込み、立春とは名ばかりの正に冬が去る前にその残した力全てを出し尽くしたような寒さでした。

 そしてこの後も、令和に改元されるまで何度も冬尽くすはこの年に現れたのです。


・世界終焉の兆し

 世界のあらゆる神話で、世界終焉は「冬の訪れ」から始まります。実りは失くなり、気温は下がり、世界は雪に覆われて、眠りと死が満ちる。

 冬尽くすは、冬を代表し、冬の力の全てを放出する未言ですから、そよ世界終焉の兆しもそのモチーフとして内包しているのです。


・宇宙の熱的死

 宇宙終焉モデルの一つに、宇宙の熱的死があります。単純に言うと、熱力学第二法則「エントロピーは増大する」に基づき、宇宙のエネルギーが均質化した結果、絶対零度に近い温度になるというものです。この状態ではエネルギーを集めることが出来ず、新たな化学反応、核反応は絶望的です。

 これを宇宙の冬と捉えることもできます。もし冬尽くすがこの冬を一時に出し尽くせば、宇宙は熱的死を即座に迎えるでしょう。


・ビックフリーズ

 これも宇宙終焉モデルの一つです。こちらは宇宙は全てブラックホール化した後、そのブラックホールが蒸発して、宇宙には光子しか存在しない状態になるというものです。この宇宙も絶対零度に近く、光子のエネルギーは極めて低いため、光子から物質粒子が生成されることはなく、宇宙は放射により永遠に冷却され続けます。

 これもまた宇宙の冬と表現できるでしょう。


・豪雪

 冬尽くすは、豪雪を伴うことが多いです。雪に覆われて、外に出ること出来ない閉ざされた世界は、まさに冬尽くされた景色と言えるでしょう。


・白

 冬尽くすは、降り積もった新しい雪の白、寒さのフラッシュアウトの白、全てを埋め尽くして失わせる白をイメージカラーにします。純白とは、染まらない色ではなく、染め上げる色なのです。


・容赦がない

 冬尽くすは、冬の残り全てを出し切って、世界から立ち去る冬がやりきってやろうとしでかすことなので、容赦がないです。

 閉店売り尽くしセール、残すものはない、代償も貰わなくてもいいから押し付けてやろう、そんな景気のいい容赦のなさで、冬の寒さと雪を振り撒くのです。

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