未繋し
未繋し(みづなし)〔未繋しい〕
世界の誰も自分を見てくれていないと感じてしまうような孤独の寂しさ。この世界には自分一人しかいないのではないかと錯覚して起こる寂寥感。宇宙的孤独。
誰一人としてわたしを認識してくれないのなら、わたしはいないのと同じじゃないか。
・宇宙的孤独
クトゥルフ神話を創立したラヴクラフトは、宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)という概念を打ち立てました。これを未言屋店主は、一個の人間が何をしようと無意味な絶望的な危機に曝される恐怖、と理解しています。
これを基に、未言屋店主は自身が幼い頃から抱いている、周りに誰がいようがいまいが関係なく、愛されているとか嫌われいるとか関係なく、見られてるようでいて見られていないような、世界の誰も自分に興味を抱かず、自我が自身の中で奈落の底へ収縮して表出出来ずに、窒息し溺死するような、抗いようもなく対処方法もなく救われることすら望まない、払拭出来ない絶対的な孤独感を、宇宙的孤独と表現しています。
この宇宙的孤独を、大和言葉で表現した未言が、未繋し、なのです。
・信じたい希望、諦めの絶望
未繋しとは、「未だ繋がらず」。即ち、今はまだ世界との関係性を繋げていない状態という意味です。
この「未だ」には、これから先は不明であるという、繋がれるかもしれないという縋り付きたい希望と、どうせ繋がれないだろうという諦観の絶望が、シュレーディンガーの猫のように両側面で内包されています。
叶わない希望こそは、人を出口のない絶望へと進めさせて、袋小路へ迷わせるのです。
・精神の極限収束
未繋しとは、世界の全てから関係性を持てないと感じた状態です。
その時、その命の精神活動は自己のみしか定義出来ません。自己以外と繋がれない精神は、自己へ、自己へと収束し、極限されて、零次元へと至ります。
しかし、現実として生きていて精神活動を続けている生命精神は、存在や思考をなくして無へなることは出来ません。
そのため、その精神は自己が圧縮収束して、消え去るのを自覚した瞬間に自己の存続を意識し、また収束し、消失を自覚して、存続を意識する、という無限収束を繰り返し、あたかもブラックホールに落ちた物質が永遠に落下し続けるように、永遠に精神を零次元の無へ近づけて極限収束していくのです。
・球状暗黒
液体は真空では、球体となります。これはあらゆる力を受けないことで、自身の表面張力のみで形を作るためです。
未繋しき生命は、自己以外との関係性がないため、自身の表面張力、自我の力によって、形のない球状となるとイメージされ、未繋しはその化身として球状暗黒の形を取ります。
・自己救済
未繋しは、自分以外の存在は自分に関与しないから、自分を助けることも救うこともないことになります。
その否定的な発想から、自分を救える者は自分しかいない、自己を確立することでしか自分は救われない、自分は自分で救済しなければならないという、自己救済の思想へと至ります。
それが正しい命の在り方、使い方に合致した時、その生命はどんな困難も自分の力で乗り越える真に強い存在となりましょう。
・未繋しくなるってことは、あなたはこの世にたった一人の、かけがえのないあなたなんだよ。
何故なら、あなたが他の誰とも違う個人であることの証明なのだから。
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