第4話 赤い傘
降り出した雨は止む気配もなく、風も強くなった。日本本土の最南端の駅である、鹿児島の西大山駅に降り立った私を出迎えたのは、南国の止まぬ梅雨と駅のベンチに忘れられた1本の傘であった。
私はその忘れられた赤い傘を手に取り、雨を避けるため、この無人の何もない暗い駅舎の中で1時間後の列車を待つことにした。
そう決めた私を見つめながら、そっと近づいてくるひとりの少女がいることに気づいた。前髪を切り揃えた、清楚な黒いロングヘアと地元の高校だろうか、制服を着た彼女は大きな黒い瞳が魅力的だった。
「あの……」
彼女がおずおずと私に話しかけてくる。旅先の出会いに期待が膨らむ自分がいた。この傘の持ち主だと直感した。
私は平静を装い、手に持った傘を上げて彼女に聞く。
「おや、この傘は君のかい?」
「○%※▽〆☆……」
……鹿児島弁がわかんねえ!
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