第23話 聞くか聞かないかは俺次第
部屋に戻るとスゥスゥと誰かの吐く息が聞こえてきた。
3人は楽しそうに話しているので除外される。
つまり......
「起きろ!」
俺はベッドに上がりそいつの耳元で叫んだ。
「ワァアア!!」
目を開けた綾瀬の瞳に俺の顔が映る。と同時に綾瀬は大きな声で叫んだ。
「うるせぇよ、ほら早くそこどけ」
「もう!びっくりさせないで下さいよ。それに今いいとこだったんですから」
「へー」
聞いてほしいという顔で俺の顔を見る綾瀬だが、きっとろくなことではないので俺はあえてそれを聞こうとはしなかった。
「気にならないんですか?」
「ん?なんのことだ?」
「またまたー、なにがいいとこだったのか気になってくせにー」
「あーそれかー」
「あーそれかー、じゃないですよ!早く聞いて下さい!」
「自分から聞いて下さいって言うやつに聞こうとする奴がいるか?」
「はい!私なら聞きます!」
「はいはいそうですか」
「で、先輩!」
「はいはい分かったよ。なにがいいとこだったんですか?」
「へへへ、それはですね私と先輩が......」
「あ、そうそう3人とももっとくつろいでもらって構わないからね」
「はーい」
「先輩!!」
「あ、ごめんごめん。でなんだっけ?」
「もういいですよー」
そう言って布団を強く握ると、今度は掛け布団を頭までかぶり布団の中に潜っていった。
「あのなーそれ俺の布団だからな」
「.......」
しかし綾瀬からの反応はなく、中でもぞもぞと動いているのだけは分かった。
「ねぇ夢くんもこっちきて話そー」
「え、いや俺は」
「ほらほら早くー」
「え、えっと.....」
行きたいのは山々だがその間にこの後輩がなにをするか分からない。
でも俺も小鳥遊さんと.....
「わかった。ちょっと待ってて」
それから俺は綾瀬がかぶっている布団に手を伸ばした。
「ちょっと先輩なにしてるんですか!」
「あーそんなに布団が好きなら縛っておいてあげようかなぁって思って」
「なっ!出れないー出れないですよ!」
「これで布団と一心同体だな」
「先輩のバカー」
俺はその布団を巾着袋のように縛り綾瀬をその中に閉じ込めた。
そしてそれを窓際までゆっくりと運び、外に投げ捨てたいのは山々だが流石にそれは犯罪者になりかねないのでとりあえずその場に置いておいた。
「先輩出してくださいー」
「少しそこで反省しとけ」
「うぇーん」
泣き真似をしている綾瀬をあとに俺は3人の近くに座った。
「ねぇねぇ夢くん、昔のこと覚えてる?」
「まぁそれなりには」
「ほんと!?なら良かったぁ。てっきり忘れてるのかと思ったよ」
「いやまぁ、全部は覚えてないけどな」
「ううん、ほんと良かったよぉ」
波美は少しずつ俺の方に身を寄せ、それから昔の話を語り始めた。
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