第22話 トークの中からヒントを探る
王道ラブコメはしないとか言ってから僅か15分。
俺の期待は完全に裏切られてしまった。
家に帰るのに近所の人の視線がこんなに集まったのは初めてだ。
すれ違う人に振り替えられ、辺りの男子高生には何か嫌な顔をされる。
女の子4人と一緒に下校とか一般男子高生には罪悪感しかない。
誤っても許してもらえることではないのだが、俺は心の底から声には出さずに謝罪した。
「やっと着いたー」
綾瀬が疲れた顔でそう言った。
「やっと、って経った15分しか歩いてないだろ」
「もう!レディは15分も歩いたら疲労で倒れるんです!」
「ならお前は平気だろ?」
「それはどういう意味ですか!?」
「どうって、そりゃお前はレディとは言い難いからな」
「むむ!先輩、私がレディ以外の何に見えるんですか!?」
「えっと......」
俺は少し考えた。
何か面白い答えはないか、ちょっとばかりからかえるいい台詞はないか.....
ってなんで俺はそんなこと考えてるんだ?
「はいはい綾瀬さんはレディですよ」
「絶対思ってないですよね?」
「思ってるよ!なぁ波美?」
「えぇ私ですか?えっとそうですね、見た目は可愛らしくていいと思いますよ!」
「別にあなたに可愛いとか言われても嬉しくないです!」
「そ、そうだよね.....波子はどう思う?」
「はぁ、なんで私に振りますかね.....まぁ綾瀬さんはとても可愛らしいとは思いますけど、まぁあれですね」
「あれってなんですか?」
「言うなれば美味しくないケーキみたいな」
「それ褒めてます?」
「半分は褒めてます」
「そうですか。って半分は貶してるじゃないですか!」
「いえいえそんなことは」
「もういいです。それより早く中に入りましょう!」
綾瀬の一言で4人の視線が一気に俺に集まった。
正直まだ中に入れたくはないのだが......
ていうか今の流れ的に次、小鳥遊さんの番だったでしょ!
小鳥遊さん絶対頑張って考えてたもん。
だって今、振られなかったからため息ついてたし。
まぁそんな姿を見て可愛いなぁとか思ってしまう俺はどうなのかって思うけど.....
でも小鳥遊さんじゃしょうがないよね。
綾瀬じゃあるまいし.....
「夢くんどうかしたの?」
「え、いやなんでもないよ」
「先輩早く開けて下さい!」
「はいはい分かったよ」
俺は鞄から鍵を取り出し、そっとドアを開けた。
「「お邪魔しまーす」」
2人が声を揃えて勢いよくドアをくぐる中、波子と小鳥遊さんの2人はきちんとした態度でゆっくりと玄関をくぐった。
「せんぱーい!先に部屋行ってまーす!」
「おい、待て綾瀬!」
後から慌てて部屋に行くと既にベットは綾瀬に占拠され他の3人は様子を見るようにして地面に座っていた。
「おい後輩、そこをどいてはくれないか?」
「なんですか先輩?ここは私の本拠地ですよ」
「おい」
「はい?」
「なに本拠地とか言ってるんだ?お前の本拠地は玄関の外だろ?」
「なに言ってるんですか先輩!ずっと前から私の本拠地はこのシングルベッドですよ」
「ヘーソウデスカ」
「なんですか、その哀れな者を見る目は!」
「いや、お前を見てるとちょっと可愛そうに見えてきてな」
「なっ!そんなこと言ってもここはどきませんからね!」
「はいはい分かったよ。勝手にしてろ」
「先輩のそういうとこ好きですよ!」
「はいはいありがとさん」
太陽の光が窓から入ってきて綾瀬の顔が赤く見える。そんな顔を見ていると何故かこっちが緊張してしまう。
別に綾瀬が可愛いとかそういうことじゃなくて、ただ単に......
「あっ、3人とも今お茶出すからちょっと待っててね」
「ありがとう夢くん!」
「ありがとうございます」
「あ、ありがと工藤くん」
「いえいえ」
「あっ先輩、私コーラで!」
「お前は氷だけ入れてきてやるよ」
そう言い残し、俺はそのハーレム天国のような空間から一度脱出した。
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