メインヒロインはだれだ!

第21話 イベント発生の予感

先に1つ言っておきたいことがある。


これは王道ハーレムのラブコメではない。


なんかハーレムっぽくなってしまっているが、いつも言う通り俺は小鳥遊さん一筋だ。


他の人を選ぶことは絶対にない。



もしそれがあるとしたら.......






6月1日



学校が始まってから約2ヶ月が経ったわけだが、俺の生活に安らぎが訪れることはない。



現にこうして男一人、女三人で下校するなんてとても俺には耐え難いことだった。



なんでかって?

そりゃ恥ずかしいし、緊張するし.....しかもこれから家にお泊まりとか考えられん。





「先輩?誰と話してるんですか?」


「え?いやーなんていうか......現実逃避?的な」


「なんですかそれ」




綾瀬はいつもの笑顔を向けてきた。


最近のこいつを見ていると何故か悪い気もしない。

ちょっと可愛いとか思ってしまうのもきっとこの笑顔のせいなのだと思う。





「で、なんでお前もついて来てるんだ?」


「なぜってそりゃ私も一緒にお泊まりするからですよ!」


「悪いがお前は無理だ。人数オーバーだ!」


「なんですかそのゲームオーバーみたいな言い方は、私はダメなんですか?他の人はいいんですか!?」


「んー、他の人はギリセーフだな」


「先輩!」


「なんだよ」


「大嫌い......じゃなくて大好きです」


「おまえ大丈夫か?」





俺は綾瀬の額に手をやった。


熱はなさそうだが、何故か綾瀬の顔が赤い。





「熱なんてないですからね!」


「うん、知ってる」


「なら、そういうことはあんまりしないで下さい。いきなりやられるとちょっと恥ずかしいです.....」





乙女か!


そう言ってやろうとも思ったが、よく考えてみればこいつも一応乙女なのだ。



まったく、恋する女子高生ってのは扱いが難しい。




「ねぇねぇ夢くん」


「ん?」




綾瀬が恥ずかしさでノックダウンしているタイミングを見計らってか、波美が口を開けた。




「夢くんの家でお泊まりなんて久々だよねー。また一緒にお風呂入ろー」





それはまさしく言ってはいけない禁句だった。


特に「また」という部分がやつの引き金を引いたのだとのちのち気づいた。





「ねぇ先輩?」


「なんでしょう綾瀬さん」


「お風呂、入ったんですか?」


「入ったっていっても小さい時だぞ!」


「へー入ったことには変わりないんですね」


「そ、そうだけど......」


「なら今日は私と入りましょう先輩!」


「それはやだ」


「それはとはなんですか!」


「だって.....」




無理だ。波子や波美でも理性を保っていられるか分からんのに綾瀬と一緒に風呂に入ったりしたら.....




「あ、工藤くーん!」




その時だった。


後ろからよく知っている声が聞こえた。



彼女は手を振りながらこちらに近づいてきて、そして俺たちの集団に合流した。




「た、小鳥遊さん?いったいどうして.....」


「いや、工藤くんの姿が見えたから追いかけてきちゃった」


「そ、そうなんだ」




だめだ。いやな予感しかしない。


小鳥遊さんが追いかけてくれたことは嬉しいのだが.....




「こんにちは翔子さん」


「あ、波子ちゃん!波子ちゃんもこっち方面なんだねー」


「えぇ、私と波美はこの工藤夢斗くんの隣に引っ越してきたんです」


「えぇええ!そうなの!?」


「そうですよ」


「うそ!.....ずるい」




なにか小鳥遊さんがボソッといった気がしたが俺の耳には届かなかった。




「それでこのあと工藤くんの家でお泊りすることになって.....」


「お泊まり!?そうなの工藤くん??」


「え、まぁそうなんだけど」


「ねぇ、私もいっていいかな!?」


「え?」


「だめだったらいいんだけど」


「だめじゃないよ!もちろん歓迎するとも!」


「ほんと!?ありがとー」


「いえいえこちらこそ」


「え?」


「あぁ、いやなんでもない」





ということは俺一人に対して女の子が四人!!



だれか一人でも緊張して寝れるか分からんのに、5人とか絶対無理!




綾瀬は瑠夏任せて.....


俺と小鳥遊さんは同じ部屋で......




いろいろ考えた。いろいろ妄想した。



しかしこの大イベントを乗り切る方法が俺には全く思いつかなかった。

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