新たなヒロイン

第16話  幼馴染登場!?

サイセの一件がようやく終わり3人を見送った後、少しゆっくり歩いて家に帰った俺は既に満身創痍だった。



「ただいまー」



疲れのせいで大きい声が出せない。

本当に長い1日だった。

テストもそうだしサイセの修羅場も・・・本当にきつかったわー



「あっ お兄ちゃん、お帰り」


「おう、ただいま」




リビングに入ると瑠夏の姿がそこにはあった。

テーブルの上にお菓子を広げムシャムシャと音を立てながらそれらを口に入れていく。




「そんなに食うと太るぞ」


「大丈夫だよー私太らない体質だから」


「そうか」




太らない体質とは一体なんなのか。疲れ切っている頭はバグを起こしそんなどうでもいいことを考え始めた。


実際、瑠夏はお菓子とか甘いものとか結構食べている気がする。

それでもしっかりとくびれはあるし、引っ込んでるとこはしっかりと引っ込んでいる。

出ているところは出ているかというと微妙なところだが、それなりにいい体をしている・・・と思う。


と、そこまで考えたところで俺は正気を取り戻す。


今のってなかなか変態じゃね・・・

妹の体を想像するとか俺やばいわ。



まぁとりあえず結論。

太らない体質というのは存在する。

それがちょっとだけ羨ましくて憎らしい。

同じ血を引いているのだから俺もその体質が良かった。

と別に太ってもいないのにそんなことを思ったりした。




「お兄ちゃん、なにボーっとしてんの?」


「え、あぁいや別になんでもない」


「へぇ、気持ちわる」


「なっ・・・」




瑠夏のいつもの態度に少し腹を立てつつも、今日は喧嘩になったら勝てないのを悟った俺は何も言わずにリビングを出た。



綾瀬がいればなぁ・・・


なんて綾瀬がいる時の瑠夏の態度がふと頭に浮かんだ。




自分の部屋のドアを開け、真っ先に布団に飛び込んだ俺はあまりの気持ちよさに眠りにつこうと目を閉じた。




「ここは天国だぁ、もうどこにも行きたくない」




なんてことをボソボソとつぶやいた後再び目を開けた。

危ねぇ今寝たら夜寝れなくなる

明日朝はえぇから今は寝るわけにはいかん!


そう自分に言い聞かせ俺は眠たい目を全力で見開いた。

すると普段ならありえないものが眼に映る。




「お兄ちゃん何してんの?気持ち悪い」




それは紛れもなく瑠夏の姿だった。



「何してんの瑠夏?」


「いやそれはこっちの台詞、はいこれ電話」


「え?誰から?」


「出ればわかるから、それ終わったら私の部屋に携帯持ってきてね」




そう言いながら机の上に携帯を置いていった瑠夏はあくびをしながら部屋を出ていった。



・・・電話って一体誰から?


その疑問を晴らすべく俺は机の上の携帯を手に取った。




「もしもし電話変わりました」




「あっ、もしもし私です。渚木波美です。お久し振りです」


「えっ、波美?まじで?本物?」


「は、はい本物の渚木 波美です。6年ぶりくらいだね夢くん」


「あ、あぁもうそんなか、久しぶり波美」


「はい、お久しぶりです」


「それで急にどうしたの?何かあった?」


「いえその・・・」





電話を終えると俺は真っ先に瑠夏の部屋へと向かった。




「おい、どういうことだよ。てかなんでお前が波美の番号知ってんだよ?」


「え?あーまぁなんていうか、この間偶然あったというか・・・そんな感じ」


「そんな感じって、ちゃんと俺に報告しろよ!」


「えーなんでよ、別にお兄ちゃんに報告する義務なんてないし、どうせそのうち波美さんと会うんだからいいかと思って」


「お前なぁ・・・まぁいいけどさ」


「それでなんだって?波美さんなんか言ってた?」


「ん?あーいやなんか、明日から宜しくって言ってたけど、よく分からん」


「ふーん、お兄ちゃんバカだね」


「なっ、もういい。携帯ここ置いとくからな」


「はいはい」




テレビに夢中の瑠夏に腹を立てつつ俺はその部屋を後にした。



ここで一つ紹介しておこう。


先ほどの電話の相手、渚木 波美とは俺が小学生の頃良く遊んだ幼馴染の一人で小学3年生の頃に父親の仕事かなんかで引っ越している。


その後もたまに会いに行ったり、会いにきてくれたりして、ちょくちょく遊んでいたわけだが年を追うごとに会うこともなくなった。



そうかちょうど俺が小鳥遊さんに恋してからか・・・会わなくなったのって



昔のことを少しだけ思い出すとちょっとだけ泣けてくる。


あの時は楽しかったなぁ〜

本当、戻れるなら戻りたいよ。



そんな無理な願望を小さな声で呟きつつ、俺は本棚にあった小学生の時のアルバムを開いた。



懐かしい。


まだまだ幼い俺の顔。

そしてその斜め左下に座って映る小鳥遊さん。


この時から可愛いなぁ〜



そしてもう一枚アルバムをめくるともう少し前の写真があった。



あぁこれこれ、確かこれが渚木 波美で、その隣のは・・・ん?


こいつは誰だっけか?



そこに写っていたのは渚木 波美にそっくりの女の子。

ただその子がどんな子だったのかどんな名前だったのか俺は全く思い出せなかった。






そして次の日の朝、俺が起きてから少し経ちもうそろそろ家を出ようとした時だった。



ピーンポーン



突然鳴り響いたチャイムに少し動揺したものの、誰も家にいないのを確認し速攻で制服に着替えてから表に出た。



するとそこには見覚えのある顔が2つ、奥にいるのは後ろで髪を結びポニーテールの女の子、そしてもう1人 手前にいるのは髪を肩まで伸ばし、俺を見つめて何か言いたそうにしている女の子。



「君は・・・」


「久しぶり夢くん!」



すると手前にいた女の子が唐突に俺に抱きついた。



「え、えっと・・・」




新たなヒロインの登場と、抱きつかれたことに動揺し俺の思考は完全に停止した。

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