第15話 地獄からの帰還
さて、この1ヶ月と少し俺の高校生活を覆すような出来事ばかり起こっているわけだが、これからもまだまだ色々と起こりそうなそんな気がする。
サイセに来てから3時間弱、話は俺と綾瀬の関係から俺と小鳥遊さんの関係性へと移りつつあった。
それを仕向けたのは他でもない京介だ。
「そういえば小鳥遊さんと夢斗って小学生の頃から一緒なんだっけ?」
なんて突然言い出して、俺の肩を笑いながら叩いてきた。
“もう少し優しく叩けよ!” とか ”何言ってんだお前!” とか色々言いたいことはあったのだが小鳥遊さんの反応を見てそれを言うのをやめた。
だって「そ、そうだよ」って一言言う時の小鳥遊さんの顔ときたら、まじで可愛いんだもん!!
もう何も言えないよねまじで
という感じで話はそっちの方に進展し、興味がなくなったのかさっきまで色々話していた阪本怜斗は眠そうな顔に変わり、久美子さんは本を読み始め完全に話に入ろうとはしていなかった。
ただそれでも1人だけその会話に超強引に入ってくる奴がいた。それは言うまでもないだろうが綾瀬 恵だ。
全く少しは空気読めっての、ほんとにこいつは・・・
「それで先輩と小鳥遊さんはずっと一緒だったんですか!?」
「え、いやずっと一緒というか・・・学校が同じだっただけというか」
「ではお二人には何もないということですね!」
「そ、そうなのかなぁ・・・?」
ここで俺に振るのか小鳥遊さん!
いやでも何もないと言えばないし、俺だけから見たらあるというか・・・難しいな
「先輩、なんかあるんですか?」
「え、いや ない・・・かな」
お前!俺がなんで言いにくいかなんて知ってるだろうが!!
こいつやっぱり嫌な奴だ
「へーやっぱり何もないんですか。なら問題ないですね!」
「なにが?」
「私と先輩が付き合っても」
「やだよ、お前と付き合うとか」
「なんでダメなんですかー、もういいじゃないですか私と付き合って下さいよ」
「何度も言ってるけどな俺には好きな人がいるんだよ!だからお前とは付き合わない!」
そう言いつつちらっと小鳥遊さんを見たが、小鳥遊さんの方は特に反応を見せなかった。
やっぱり俺は脈なしか・・・
「なら先輩の好きな人教えて下さいよー」
そう言った綾瀬を少し怒った顔で見つめると、
少し目をそらし
「あっでも、先輩の好きな人私ですもんねー」
と誤魔化すようにそう言った。
何にも誤魔化せてませんから!!
「あ、あのさ く、工藤くんはその子のこといつから す、好きなの?」
「え?」
いきなり問いかけられた小鳥遊さんの質問に少し戸惑う。
小学生の頃なんて言ったら間違いなくバレるだろうし・・・で、でもすごく言いたい!ここで言ってしまえば!
「し、小」
「先輩は!先輩は高校で好きになったらしいですよ。その人のこと・・・」
「お、おいなんで勝手に」
「だって・・・私は」
弱気な綾瀬を見るのは久しぶりだ。
こんな姿見せられたら何にも言えねぇよ。
正直に言えば告白になるこの場面でよく口を挟めたと思う。
でもこれが綾瀬にとってすごく大事な一場面であり、これからもこの関係を変えないための精一杯なのだと感じ取った。
「そ、そうなんだよ。おれは高校に入ってからその人のことを・・・好きになったんだ」
「そ、そうなんだ。 もっと前かと思ったのに・・・」
「え?今なんて?」
「ううん、なんでもない。あっそろそろ時間もあれだしわたし達はそろそろ帰ろうかな」
「じゃ、じゃあ俺たちも一緒に」
「先輩、もう少しだけ・・・」
立ち上がった小鳥遊さんを見て俺も一緒に立ったが、綾瀬はそれを悲しそうな顔で見ながらそう呟いた。
「分かったよ・・・俺たちはもう少しだけゆっくりしていくから、その また明日」
「うん、またね工藤くん」
そして小鳥遊さんは店を後にしそれについていくようにして久美子さんもサイセを後にした。
「よかったんですか先輩?」
「なにが?」
「正直に言わなくて」
「それ、お前がいうか?邪魔しといて・・・」
「まぁそうですけど・・・でも」
「分かってるよお前の言いたいことは、でもな俺は小鳥遊さん一筋だから!お前に切り替わったりしないからな」
「分かってますよ。でもまだまだ諦めるわけにはいきませんから」
気持ちのこもった台詞だった。
すごく優しい笑顔で、でもすごく強い意志を持ったそんな顔。
本当にこいつは・・・
「まぁせいぜい頑張れ」
「はい先輩!!」
「あの、僕を忘れてませんかね・・・?」
「あぁ坂本くんまだ居たんだ。てっきり帰っちゃったのかと思った」
ひどいひどすぎる。お前のことを好きになってくれてる人なんだぞ!
その人に対してなんて失礼な!
「あぁそうだ先輩」
「なんだよ急に」
「私、先輩のこと好きですよ!!」
「お、おう」
「ずっとずっと待ってますから、先輩が私を見てくれるまで」
「あぁ」
その綾瀬の顔を見て俺は唾を飲み込んだ。
可愛い、めちゃくちゃ可愛い!
そんな笑顔見せられたら俺はどうしたら・・・
「じゃあ先輩帰りましょうか!」
「あぁそうだな帰るか」
「はい!」
こうしてサイセでの修羅場は幕を閉じた。
ただまだまだこれから色々起きそうだ。
可愛くて俺のこと大好きな後輩に、天使級の美人で片思いの相手の小鳥遊さん。
このメインヒロイン的な2人のどちらを選ベばいいんだか・・・もうほんといっちょん分からん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます