ファミレスの激闘

第11話  テスト後は友達と食事に

3日間のテストが終わり、緊張と使命感から解放された夢斗は縮こまった背中を全力で伸ばした。




「ウオォ〜きもちぃ〜」




最高の気分だ。絶対絶命の3日前からずっと勉強だけをしてきたわけだが、本当に頑張ってよかった。

・・・もうまじなんも言えねぇ。




「おーい夢斗」


「おぉ京介、どうした?」


「いや、随分と機嫌がいいなぁと思ってな」


「あぁ最高の気分だよ」


「そうかそれは良かった。でさ、これから飯行かね?」


「あぁ飯か・・・まぁいいけど」


「よっしゃ!じゃ早くいこーぜ!俺腹減って死にそうだから」


「はいはい、じゃあ行くか・・・でどこ行くんだ?」


「さぁな、まだなんも決めてねぇ」


「おいおい、まぁいいか。帰り際にどこか寄ればいいよな?」


「おう!」




京介がやけに素直に返事をするので夢斗は何かあるのではないかと少し疑ったが、気分が良すぎたせいかそれを”まぁ大丈夫だろう”なんて甘い考えで流してしまった。




「そういや今日は綾瀬さんいないんだな?」


「あぁ、確かにな」




言われてみれば、確かに今日は綾瀬の姿を見ていない。

まぁ俺にとっては有り難い事なんだが。




「おまえちゃんと綾瀬さんのこと面倒見てやれよ」


「なんだよ、急に変なこと言って」


「いや、綾瀬さんおまえにぞっこんだからさ、なんつうか・・・そろそろ付き合えば?って思ってな」


「あぁそういうことか・・・まぁ正直なくはないんだよな」


「え!?今なんつった?」


「いやだからさ、なくはないって・・・」


「まじか」


「あぁ・・・・あっ、でも今の綾瀬には絶対言うなよ!絶対だからな!」


「分かってるよー」




ついつい口を滑らせて変なことを言ってしまったが大丈夫だろうか・・・いや大丈夫な訳がない。


京介の態度とか元々の性格上、こいつがバラさないなんてことはない。

まぁでも、その内綾瀬には言うつもりだったし・・・もういいか



「じゃあ帰るか」


「おう!帰ろうぜ!」




そして机の上の鞄を手に取り、夢斗と京介は教室を後にした。




◇◆





「それでどこ行く?」


「うーん・・・サイセリアとかでいいんじゃね?」


「えーサイセかよ」


「嫌なら別に他でいいぞ」


「嫌ってわけじゃないけどよ・・・」


「じゃあどうするんだ?なんか他に・・・ん!?」


「どうした?急に立ち止まって」


「い、いやあれ・・・ま、まさかな」


「なんだよ?」


「ほら、あれ」




そう言って指をさしたその先には綾瀬の姿があった。



「なんだ綾瀬さんじゃん。おーいあや・・・え?」



京介が名前を呼ぼうとした時、影から一人の男が現れた。



「え?まじ?・・・なぁ夢斗、あれって」


「あぁ男だな」


「だよな男だよな・・・って」


「「ええぇえ!!」」




そう叫びながら顔を見合わせる二人。

それを不思議そうに見つめる周囲の人々。




「お、おいちょっとここ離れるぞ」


「お、おう」




その視線が少し気になり二人はその場を後にする。・・・がとっさに行動を起こしたせいで綾瀬とその男の方角へ歩き出してしまった。




「おいバカ、そっちはダメだろ」


「いやでも、今から引き返したら周りから余計変な目で見られるだろ」


「そうだけど・・・」




こんな状況なのになぜかニヤニヤしている京介を夢斗は横から眺めていた。


こいつ絶対ろくなこと考えてねぇ

なんかいい対処方は・・・



「あれ?先輩じゃないですか?」



うわっ、早速バレたよ。隠れる暇もなかったよ。

まじ最悪



「よ、よぉ綾瀬」



うわ〜気まずい、気まず過ぎる。

だって綾瀬はなんか嬉しそうだけど、隣にいる男の子こっちめっちゃ睨んでるもん・・・それに結構イケメンだし、背高いし ちょっと怖いし




「えっと、先輩達今帰りですか?」

「え、あぁそうだけど」




お願いもう話しかけないで!隣の子まじ怖いから・・・って言っても無駄か




「それで先輩達は今からお昼ですか?」


「ま、まぁね」


「本当ですか!?こんな偶然もあるんですね!私たちもこれからお昼を食べにいくところだったんですよ」


「へ、へー」




おいおい勘弁してくれよ。それに隣の子どうにかしてあげて・・・そして京介は黙ってないでなんか言え!!




「で先輩達はどこにするか決めてますか?」


「え、えっとサイセリアとかで済ませようかと思ってて・・・」


「あーサイセですか。じゃあ私達もご一緒しますね!」


「え、まじですか・・・」


「おおまじですよ!」


「え、えっと京介はどうする?」


「ん?俺か?俺はなんでもいいぞ」


「そ、そうか・・・でそちらの方は」


「あぁこの人、前に話したと思いますけど、私に告白してきたっていう」


「あ、あーその話・・・」




おい!そんな事堂々というか普通!!こいつまじでやばいだろ、俺がその子の立場だったら絶対きれてるわ、ついでに縁も切ってるわ!!

・・・なんてな




「あのすみません。先輩ってことは2年か3年だとは思うんですけど、恵とはどういう関係ですか?」


「え、えっと・・・」




ちょっとまて!なんか色々突っ込みたいがまず君は誰だ!?そしてなんで綾瀬を下の名前で呼んでいる?

まさかもう付き合ってるとか?それに・・・




「あー先輩はね、私の彼氏になる予定の人だよ。前にも言った、私の好きな人だよ」




うわー、こいつしれっとすごいこと言い出した!!

間違いなく修羅場だよこれ・・・男の子の顔が凄いことになってるよ!




「いやいや、彼氏になる予定ないから。それに・・・」


「それに?なんですか?」


「え、いやなんでもない」


「あっ!!」


「なんだよ京介、やっと声を出したと思ったら変な声あげて」


「いやーそういや夢斗、綾瀬さんなら付き合ってもいいとかなんとか言ってたなぁ〜って」


「え!?そうなんですか?」


「おい!今それ言うか!!てかそんなこと言ってないだろ!!」


「おいおい嘘は良くないぞ。さっき言ってたじゃないか・・・綾瀬さんなら有りだって」


「え、いや・・・そんなことは」


「先輩ようやく落ちましたか!?彼氏になってくれるんですか!!?」


「いやいや、そんな訳ないだろ!」




あーもう、状況がややこしいことになった!

こいつやっぱり楽しんでやがった。


どうすんだよまじで、この状況どうにかなんのかよ!!


夢斗はそれを言葉にはせず京介の方に呆れた顔を見せた。




「わるいわるい」




京介は小さな声で謝ったが全く誠意が感じられない。

そんな顔で謝られてもな・・・まぁこいつらしいと言えばこいつらしいけど




「それで先輩本当に」


「ちょっと待て!続きはサイセ行ってからにしよう。ここで騒いでも迷惑だしな」


「たしかにそれはそうですね。では早くサイセ行きましょう!早く!」


「お、おう・・・」




すげー勢いだ・・・どんだけ俺と付き合いたいんだよ。まぁそんなの1ヶ月くらい前からずっとそうだけどな。


片思いの中の俺とそんな俺にぞっこんの後輩。それにそいつのことが好きなクラスメイト、そしてそれを眺めて楽しんでる悪趣味な奴。


それぞれ色々思うとこはあるが、とりあえずサイセで方をつけよう。



この状況も、それぞれの立ち位置も今日で終わりにしてやる!


と今更ながら主人公的な感情を抱く夢斗だったが・・・まぁそんなにうまくいくわけないよな。

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