第7話











「…………は?」


ドクンドクン、と心臓が高鳴る。


ハスナもなにかに怯えるような、そんな目をしていた。


しかもハヤトはかなり号泣。



「お、おいお前ら――――」


「シンタロウ」


いつものあのハスナからは想像もできないほど冷たく冷静な声。


自然と体が硬直する。



ハスナは心配そうな顔をして

「…コトハは?」

と聞いてきた。


いやいや、なんでこいつら、あたかもシュリが死んでいることを知っているような態度なんだ?


ここまで騒ぎはまだ広がっていないのに。


「職員室前にいるけど…」


ハスナがピクっと目を細めた。


「職員室?なんで?」


「いや、俺が4階からコトハを無理やり走らせちまったから…」


「そか…ねえシンタロウ…」


「そんなことよりシュリが…!!!」


知ったような態度をとる2人を無視して俺は報告しようとした。


「やめて!!!!!」


俺の声を遮ったのはハスナ。


「は…??」


「分かってるから…!ハヤト!大丈夫!?」


相変わらずハヤトは泣いている。


分かってるってなんだよ?


「お前らもしかしてシュリが自殺してたの知って―――」


「シンタロウ」


次に俺の声を遮ったのは…



コトハ。



「コトハ!大丈夫なのかよ!?ごめんなすぐ戻れなくて!」


「ううん、平気。さっき副島先生が来てね、シュリが運ばれた病院に連れていってくれるって。…ハヤト?」


副島は、俺らの担任。


そして誰が見たって異常なほど、ハヤトは泣いていたんだ。


この状況で泣かない方がおかしいと思うかもしれないが、普段のクールなハヤトを知っている人からしたらここまで取り乱しているのを見ると少し驚いてしまう。


「コトハ!!」


「ハスナ…?ハヤトどうしたの…?」


「〜〜〜〜っ!とりあえず、早くシュリの病院に行こう!!先生の車、あっちだよね!?シンタロウ!ちゃんとコトハを連れてってよ?!私はハヤトと行くから!先いって!」


「…?わ、わかったけど!」


おかしい。おかしいおかしい。


俺らはいくら仲が良いといえど、女子は女子同士、俺はハヤトと自然とペアになっていたから。


だって、今日も教室から4階に向かう時だって俺とハヤトの前をハスナとコトハが手を繋いで歩いていたわけだし。


俺はハスナがわざと俺とコトハが一緒に向かうように仕向けたように見えたんだ。


でも、今はそんなこと言ってる場合じゃない。


「コトハ、大丈夫か?歩けるか?」


「…うん。」


俺は大人しく、コトハと副島の車へ向かった。

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