第8話


副島の車の中では、特になんの会話もなかった。


いつも元気にキャピキャピ話す副島も黙って運転していたし、コトハに関してはまた泣き出してしまった。


助手席に座っていたハヤトは落ち着きを取り戻しているようだったが、ハスナは相変わらず怯えたような、なんとも言えない目をしている。


シュリ、お願いだから無事でいてくれ…


その時はその一心だったけど、今思い出せば色々と不自然な点はあった。



けどなあ…シュリは自殺だし…



病院に着いてシュリの所へ駆けつけたが、シュリは変わり果てた姿で集中治療室の中にいた。




―――――――――――…



「シュリ!!シュリ!!」


「お静かに!!」


無機質な廊下にコトハの叫び声と、看護師さんの声だけが響いた。


集中治療室の中で管まみれになっているシュリを見て俺はまた体が固まった。



…シュリ…



俺はこの時に悟ってしまった。


ああ。シュリは助からないんだ、と。



ハヤトもハスナも、まるで見ていられないと言わんばかりに俯いていた。



「…あの…」


「えっ?」


黒いドレスのような服に黄土色寄りの金髪、片手には薄汚れたうさぎのぬいぐるみを持った真っ青な目をした女性がハスナに声をかけた。


「シュリの…お友達ですか?」


「あ、はい…眞鍋ハスナです。えっと…」


「ああ、ハスナちゃん…シュリからお話はよく聞いているわ。ごめんなさい、シュリの母親の遠野ミキです。」


「お母様…」


シュリの母親!?


こう言ったらあれだが、似ても似つかない…


いや、化粧が濃いというのもあるが、シュリは何もしなくたって可愛かった。


すらっと背が高いシュリとは対照的に身長も低いし…厚底のブーツを履いてこの位なら実際はもっと低いのだろう。



するとハヤトがすかさずシュリの母親に話しかけた。


「望木ハヤトです。突然騒がしくしてしまい申し訳ございません。私共のことは気にせず、どうかシュリさんのことを見守ってあげてください。お願いします。」


そう言ってハヤトは頭を下げた。


この時の言葉的に、ハヤトも悟っていたのかもしれない。


「ハヤトくんね、あなたもよくお話を…すみません…あんなシュリを見ていると…何もしてやれない自分が情けなくて…」


「シュリママ!!そんな事言わないでよ!」


コトハは泣きながらこちらに振り向きそういった。


「コトハちゃん…そうね、ごめんね…シュリ…!」


…なんなんだこの母親は…


たしかに俺は母親になったことなんかないし完全に気持ちがわかるわけじゃないけど。


この状況でよくこっちに挨拶できるな…


しかもなんだよその気味悪いぬいぐるみ…



シュリの母親に関しては奇妙な点が多かったけど、そんなこといちいち誰かに話してる場合ではなかった。




























その日の夜、シュリは息を引き取ったんだ。

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