第6話


多分、あいつらは自販機のところにいる。そう確信していた。


自販機は職員室を通り過ぎた先の、渡り廊下の途中の中庭にある。


吹奏楽部の部員が職員室に報告しに行き、城田先生が駆けつけたにも関わらずハヤト達が来なかったのはこの騒ぎをまだ知らないからだと思った。



案の定職員室の前を通ると、かなり騒がしかった。


のにも関わらずハヤトたちが来ないってのはやっぱり―――…


「し、シンタロウっ…!もう無理…!」


ゼェゼェと息を切らしその場に座り込んだコトハ。


「す、すまん…でももうすぐハスナたちいると思うから…!!」


本当に自販機までもうすぐだったが、コトハが座り込むのも無理はない…。


元とはいえ、俺は中学の3年間サッカー漬けだったから。そんな俺が無我夢中で全速力を出しながらコトハを引っ張っていたんだ。



「お、おねがい…先行って…どうせもう部室には戻れないし…ハァハァ」


「お、おう!すぐここにふたり連れて戻ってくるから!」


そう言って俺はまた駆け出した。


そうか、もう部室には戻れないのか。












「おい!!ハスナ!ハヤト!」


「シンタロウ…」


2人は少し影に隠れたベンチに座っていた。


でも、2人は俺の想像とは全く違う表情だった。













―――――ハヤトが泣いていた。

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