第5話


コトハの悲鳴が響き渡ったのは部室のドアを開けてからたったの3秒後だった。


「キャァァァァァァ!!!」


「!!!?」


俺は声すらも出なかった。




目の前で






シュリが首を吊ったまま死んでいたからだ。



「シュリっ…!!!シュリ!!!」


コトハは真っ青な顔でシュリの元へ駆け寄った。


「息…してない…ねえ…!シュリ…っ!!」


「―――…っ!!」


俺は声が出ないどころか体すらも動かなかった。


ヤバイヤバイヤバイ。


この状況はなんなんだよ…


「…なにこれ…」


ガタガタと震えるコトハが手に取ったのは、シュリのすぐ側に落ちていた紙。


「し、シンタロ…」


コトハに呼ばれて俺の体がようやく動いた。


コトハの手の震えが異常で全く読めなかったが、半強制的にその紙を奪い取って書いてある文字を見ると…














【お前のせいだ】











と力強く書かれていたんだ。



「お、お前って…」


その瞬間、コトハの悲鳴を聞き駆けつけた吹奏楽部の人達が次々に部室へ入ってきた。


冷静な吹奏楽部員が職員室へ行ってくれたのか、先生も来ていた。


「お前ら!そこをどけ!…志田、すまん、今は一旦離れてくれ。」


野次馬を大声で退かし、あまりのショックで震えと涙が止まらないコトハには優しく声をかけた城田先生。



…城田先生はひとつ下の1年の担任で、俺らとはあまり接点がない。


だからこそ冷静な対応ができていたのかもしれないが、それでも警察と救急に電話をしている時の手は震えていた。





俺はコトハの手を引き、ハスナ達のところへ連れていこうとした。


「ちょっ、シンタロウ、離してっ…」


という弱々しい声も聞こえたが、今は強引にでもあいつらと合流した方がいい。そう判断した。


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