転校生5p
放課後、鈴莉司と鈴莉方美は二人きりで家路への道を歩いていた。
司も方美も、それぞれのクラスメイト達から一緒に帰ろうと誘われていたが、二人は「今日は急いでいるから、また次に」と言って誘いを断っていた。
森の中に建てられた学園は、街へ出るまで校門を出るとしばらくは森の中の道を行く事になる。
新緑の続くアスファルトの道を司と方美は速足で歩いている。
司の方が方美よりも歩くスピードが速く、方美は司に並ぼうと懸命に足を動かしていた。
二人はずっと無言で歩き続けていたが、やがて方美の方が遠慮がちに司に話しかける。
「あの、司……この学校に転校してから今日で十日目。クラスメイトの誘いを断るのも、そろそろ限界では? 今日は誰かと一緒に帰った方が良かったのではないでしょうか? せめて、森の中まででも」
「なぜ、そう思う?」
司は、歩くスピードを落とさずに方美の方も全く見ずに言う。
「え、だって、あれだけ誘われているのに誰も相手にしないなんて、何だか、お高く留まっていると思われるのではないでしょうか?」
「お高く留まって困るのか?」
「え……だ、だって、もし、生意気だなんて思われでもしたら……」
「いじめられる……か?」
司に尋ねられても方美は顔を歪めるだけで答えない。いや、方美は答えられなかったのだ。
何も答えない方美に対して、司は「はんっ」と呆れた様な声を吐きかける。そして司は、急に足を止めて、方美の顔を覗き込むようにして見た。
いきなり立ち止まった司に合わせて自分も足を止めようとした方美だったが、自分自身の急な動きに反応できずによろめいてしまう。
そんな方美を心配する様なそぶりを司は一切見せない。
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