第40話

 わたしは朝から少しだけ緊張していた。

 今日は中学の卒業式だからだ。



「みんな、早いね!」

 すると、担任の先生がやって来た。見慣れない袴姿だ。

「きれい! 先生」

 思わず話しちゃった。

 先生から胸元に飾る花をもらい、それをつけていくんだ。

 それから、練習はなしで体育館に向かう。

「みんな、卒業式が始まります。これから、クラスごとにA組から向かいます。予行練習と同じように並んでください」



 体育館の外通路で待つことになるけど、雨が降ってる。

 少し緊張している。

 もうそろそろ始まるみたいだ。

「卒業生が入場します、拍手でお迎えください!」

 そして、卒業生が入場する。

「A組」

 拍手が大きくなる。

 在校生の席の真ん中を歩いていく。

「B組」

 わたしは緊張していたけど、女子のアルトの一番通路側に雪華がいた。

 そして、C組も卒業生全員が入場した。

 そのまま式が始まり、卒業証書授与が始まっていた。A組の一番の子が卒業証書の全体が読まれるんだ。

 わたしはめちゃくちゃ緊張していた。

 だんだんとB組へと変わっていくんだ。そのまま悠里が先に壇上に向かう。

櫻庭さくらば悠里ゆうり

「はい!」

 卒業証書が渡されるんだ。

 悠里から数人挟んで、わたしが壇上に上がる。目の前には、在校生とその後ろの保護者席が見ていた。

たちばな小夜さよ

「はい!」

 わたしは校長先生と向き合い、お辞儀をする。

「これからも、がんばってください」と、話しかけてくれた。

 少しだけ泣きそうになる。

 席に戻ると、卒業証書にリボンを巻く。

 そして、C組の最後の子が読み終わり、しばらく校長先生と来賓の方々の祝辞があって、旅立の言葉が始まる。

 それを代表で話すのは各クラスの学級委員と元生徒会役員の九人だ。

 それから、ひな壇に移動する。

 わたしはみゃーちゃんの隣で、立っているんだ。

 それから、二曲目の合唱が終わったとき、女子の一部が泣き出したの。

 少しずつ伝染していってる。

 とうとう代表で話している子も、泣いているんだよね。

 言葉に詰まっても、話しているからがんばれって思っちゃう。

 もう合唱は最後の『虹』に関しては、もう泣いてて歌えなかった。

 ついにわたしも涙腺が壊れて、号泣してしまった。

 席に戻るときも、在校生席を見る。

 後輩も泣いてるから、余計に泣いてしまう。

「卒業生退場!」

 再び拍手のなか、わたしたち卒業生は中学校で最後の行事を終えた。







 荷物と卒業証書の筒を持って、わたしたちは外に出ることになるけど……雨が降ってるんだよね。

 まさかの決行するため、在校生は傘はささずに花道を作る。卒業生もその間を通るけど、悠里に話すことを整理していた。

 家庭科部の後輩から、色紙をもらった。

 その色紙を見ていたのに、みゃーちゃんがいきなり悠里を呼んでいた。

「じゃ、小夜と話してきなさい!」

「え、橘。話があるから」

「みゃーちゃん! 行ってくる」



 悠里とみんなが少しだけ離れた場所で、話をすることにした。

 心臓がドキドキと高鳴る。

「悠里。あのさ、ずっと前から好きでした!」

「え。小夜……」

 傘をさして、顔を隠してしまう。

 悠里がため息をついていた。

「小夜。あのさ……先に言うなよ」

 顔を上げると、顔を真っ赤にした彼が目の前にいた。

「悠里……? あの」

 わたしは少しだけパニックになっている。

「小夜。手を出せ」

「え?」

 思わず右手を出すと、悠里がボタンをくれた。

 学ランのボタンで、彼の方を見ると……第二ボタンだけ無かったの。

「それが俺の答えだからな! よろしくな、小夜!」

 そう言って、わたしの手を引いて、クラスの方へと向かう。

「二人とも! マジか」

 だいたい察していたらしく、クラスで写真を撮ったときにも質問攻めにされた。


 中学校の同級生とはもう会うのは、成人式くらいかな?













 また、会おう。

 桜の咲く頃に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る