第39話

 卒業式前日。

 体育館での練習が終わり、三年生(百七人)は音楽室に集まっての最後の学年集会を開いていた。

「それではね、三年生に向けてのスライドショーを公開します!」

 一瞬フリーズするよね。

 先生が内緒で三年間の写真をスライドショーで、作っていたのにはびっくりした。

 その前に……なんと、異動して他の学校にいる先生たちからのメッセージが流れてきて、めちゃくちゃびっくりしたの。

「あぁ~! 泣かせる気だよね?」

 そして、『3月9日』をBGMにスライドショーが続くの。

 入学式の日の写真にわたしも写っててびっくりした。

「みゃーちゃん……泣いてる。もうダメだ」

 号泣する人もいたの。

 スライドショーの最後には、予行練習で歌っていた合唱だった。

「たぶん、卒業式は合唱が崩壊するから」

と、先生が言っていた。たぶんするよね。

 そして、先生たちからもうひとつのサプライズが。

 先生たちが演奏をするってことになったの!

 曲は『3月9日』。担任の芙美ふみちゃん先生がピアノを弾いている。

 もう号泣したあとは、教室に戻っていく。




 教室では寄せ書きを書いていた。

 芙美ちゃん先生こと佐伯先生への寄せ書きを、もちろん内緒で書いている。

 都立の合格発表から、すぐに学級委員を中心に寄せ書きを書き始めていた。

 似顔絵もイラストが上手い子に書いてもらい、前日には書き終えていたの。

「あ~あ。明日が卒業式か」

「そうだね、もうバラバラの進路になるんだよね」

 みゃーちゃんがしみじみと話している。

 あと一日で、この中学校ともお別れすることになる。

 さっきの学年集会でも、話していたことと重なるんだ。

 神北高はわたしだけが進学するため、このクラスともお別れするのはちょっと寂しい。それから、悠里ゆうりとも離ればなれになる。

 卒業式のあと、告白しよう。

 そう決意した。







 夜になり、わたしは母さんと雪華ゆきかと一緒に夕飯を食べていた。

「あら。小夜さよは卒業式の髪型は、いつも通り?」

「うん、小学校の卒業式じゃないからさ、三つ編みにしてくれる? 明日」

 母さんに髪型の相談をしてから、雪華はため息をついていた。

「お姉ちゃんたちが卒業したら、うちらが最上級生か……大変だ~」

 二年生はわたしたちが卒業後は最上級生になる。

「大丈夫だよ。三年生の準備はできてるでしょ。しばらくは二学年しかいないからね!」

 わたしは寝ることにした。

 クローゼットをふと開いた。

 紺色のジャンパースカートに襟のないブレザー、白のワイシャツがかかったハンガーを見ていた。

 明日、この制服を着て学校に行くのは最後だ。

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