第36話

 都立一般入試当日。

 わたしは制服の上にコートを来て、志望校へと向かった。

 マフラーをきつく巻いて、いままで覚えてきたことを確認していく。

「よし! 行こう」



 試験の教室は男女で分かれていた。

 都立一般入試は午前九時くらいからだ。

 最初は国語かららしい。

 体が温まるようにって、ジンジャーエールを母さんが作ってくれたの。

 それを少しだけ飲み、リュックにしまうと、ちょうど試験監督の先生が来た。

「それでは、試験を始めます。まず確認をしていきたいと思います――」

 わたしも机の上に受験票と筆記用具の確認をして、試験を受ける万全な体制になった。

 試験の開始を告げるチャイムが鳴った。

 問題用紙と解答用紙をめくる音と、シャーペンで紙に書く音だけが教室にに響く。

 問題用紙の問題と解答用紙をみながら、解答欄を間違えないようにしていく。

 学校のテストで解答欄を一つずらして書いたことがあったから、それに注意して書いていく。

 そのまま国語は終わって、数学の問題が配布された。

 数学から結構難しくなってきた。

 わたしはかなり迷いながら、問題を解いていく。

 え、全然わからん。

 どうしよう。とりあえず、証明は全部解けたけど、でも二次関数の問はほぼ白紙だ。

 英語のリスニングは大丈夫だったのに、長文読解は時間オーバーで最後の方は解けていない。



 いつの間にか、昼休みになっていた。

 わたしはお昼の弁当を食べることにした。

 英語でも手こずった。

 それに少しだけ絶望しつつ、でもまだ希望を持っている。

「あれ? これって……すごい」

 それは母さんと雪華からのメッセージだったの。

 魔法瓶に入れていたジンジャーエールを一気飲みする。

 だんだんと冷えきっていた手は温かくなり、体がポカポカと温かくなっていく。

 午後は社会と理科。

 希望はある。

 だんだんとこの学校に入学したいという思いが強くなる。

 不思議と一番嫌だった理科の問題はスラスラと解け始める。

 社会もめちゃくちゃわかった。

「よっしゃ……終わった……」

 長かった受験がとりあえず終わった。

 そのとき、不思議な気持ちになる。

 頭が疲れているはずなのに、全然疲れていない。逆にスッキリしている。

 もう自分の実力が最大限出せたと思う。

 その結果は三月一日。来週末にはわかるけど、そんなのは関係なかった。





「ただいま、母さん」

「お疲れ様。小夜さよ。よくがんばったよ」

「うん、ありがとう。いままで……たぶん、合格すると思う」

 母さんが笑っていた。

 今日はとにかくぐっすり寝ることができた。半日も寝てたんだ。

 少し早めに寝ていたおかげで、休みだったのに早く起きちゃった。


 そして、週明けに学年末テスト。

「先生……期末試験って……。都立の入試明けはつらいよ!」

 みんな勉強はしたくなかったらしくて、ほぼ勉強せずにテストに挑んでいた。

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