第24話

 悠里と二人きりになることが多い。

 市内の図書館で勉強を始めるけど、そこになぜか悠里が来るんだよね。それもタイミングよく。

「小夜。もう志望校、決めた?」

「うん。決めたよ。都立神村北高校。併願は佐久間女子高校」

 わたしの話をゆっくり聞いていた悠里は、志望校のランクを落とすことを話してくれたんだ。

「え……そうなんだ。都立は?」

「教えない。合格して、入学したら」

「え~。まさか、一緒だったりして?」

「さぁ?」

 このときの話を真剣には受け止めてなかった。






永莉えりちゃん、ここの問題集……やってきたよ?」

 永莉ちゃんと一緒にやっていた。

 マル付けをやってもらっているときに、麦茶をやることにした。

「永莉ちゃん。麦茶だよ?」

「ありがとう、小夜ちゃん」

 雪華は練習帰りで、もうシャワーを浴びてから、塾に向かう。

 わたしは勉強をやっていたけど、全然頭に入ってこなくなった。

「小夜ちゃん。もう大丈夫?」

「え? どうして?」

「勉強の問題、ほとんど合ってなくて……」

 もう集中力が切れてきた。

 わたしは永莉ちゃんが帰ったあと、もう寝てしまった。


「お姉ちゃん? どうしたの?」

 目が覚めると、熱が九度になっていた。

 心配した母さんが病院に連れて行かれた。

 心因性の発熱で、心配されてしまった。

 十日間くらいは休んでいた。

 併願先の欠席数はまだ大丈夫そうだけど、もう受験に向けて勉強したいのにできないのがつらかった。

「小夜が寝てるからね。待っててね」

 わたしはもうろうとしながら、布団で眠っていた。




 母さんの声が聞こえた。

 わたしは不思議と目が覚めていた。

「――ありがとうね、小夜がたまに体調が崩れることがあってね」

「はい。大丈夫です」

 誰かと話してる?

 布団にくるまってほふく前進で移動してから、寝室の襖を開けてリビングを見る。

「大丈夫です。小夜……がいますよ?」

 手紙とかを持ってきてくれたのは、みゃーちゃんじゃなくて悠里だったのが、びっくりしてしまった。

「小夜! 悠里くんが来てくれたよ。まさかそこからのぞいてたの?」

 母さんが呆れてため息をつくと、こらえきれずに吹き出した悠里がいた。

「だって、気になるんだもん」

「悠里くん、上がっていって。お茶でも」

「え? 母さん、風邪引いてるんだよ?」

「心因性のものは大丈夫」

 布団にくるまっていたけど、モコモコのパーカーを着てリビングに座った。

 二人きりになってしまった。

「熱、大丈夫? 体育大会と同じ?」

 悠里ゆうりは少し離れた場所で、麦茶を飲んでいた。

「悠里……」

 受験がとても怖くなってきた。

 でも、みんなは一緒なのに。

 とてもつらくて、嫌な気持ちを抑えきれなかった。

「わたし、受験勉強がなかなかできなくて、みんなが一生懸命、がんばってるのに。どうしても、できなくなったのが……とてもつらくて」

 涙が溢れてきて、泣きじゃくって悠里につらい気持ちを吐き出した。

 それを黙って、悠里は聞いてくれていた。

「うん。そうか……うん、受験勉強するとき、俺もつらいよ。それはお互い様だよ。小夜は追い詰めすぎなんだ」

 優しく言ってくれるから、わたしはさらに泣いてしまう。

「大丈夫。また明日な、小夜。元気になったら、学校に来いよ」

 ずっと前から好きだったのに、さらに彼のことが好きになっていくのを感じた。

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