第23話

 合唱コンクールの前日を迎えた。

「みんな、最後の通し練習をやろう!」

「はい!!」

 みんな、気合いが入っている。

 中学校生活最後の合唱コンクール、絶対に負けたくない。

「みんな、結構仕上がってるね!」


 コンクール当日は教室でギリギリまで練習をしていた。

 吹奏楽部が先に会場の市民ホールに向かうけど、残っているみんなで練習を始めていた。

「小夜。めちゃくちゃ緊張する」

 アルトのパートリーダーのみゃーちゃんはとても緊張していると思う。

 十月になり、衣替えをして、女子は紺のジャンパースカートに襟なしのブレザー。男子は黒の学ラン。

みやび! パートリーダー、集合だって!」

「いま行くよ!」

 みゃーちゃんたちパートリーダーが呼ばれている。

 まだ緊張はしていないけど、みんな一緒の気持ちなんだと思う。







 合唱コンクールは二年生、一年生、三年生の順番で、市民ホールの大ホールで一日中行われる。

 二年生の最初のクラスのC組、雪華ゆきかがソプラノの担当。

 二年生全体での課題曲の合唱のあとに、クラスの発表になる。

『予感』のメロディーが流れると、思わず歌ってしまう。

「懐かしいね。A組だったときの合唱コンクールの曲だしね」

 雪華のクラスが歌う自由曲『きみと見た海』は、二年生のときに歌っている曲で最優秀賞を取った曲で、今年は二年連続の曲だ。

 こっちもついつい歌いそうになる。


 午後の昼食を終えてすぐに、最後の練習を始めた。

『聞こえる』のハーモニーが響いてくる。

 わたしは少しだけ、緊張してきていた。

 いよいよ三年生の演目に始まると、最初の学年合唱の『春に』を三年生全員で歌った。

 そして、B組は最初の出番のため、そのまま舞台に集まる。

「よし、やるぞ」

 そういう気持ちで、本気で歌うことにした。

 そうして、ピアノ伴奏が始まった。




 気がついたら、席に戻っていた。ほんとに無我夢中で歌ったけど……他のクラスのC組は混声四部合唱の『大地讃頌』の完成度がすごくて、A組の『信じる』もすごいし。

 結果発表のとき、びっくりしてしまった。

 最優秀賞は『大地讃頌』を歌ったC組。

「優秀賞、A組」

 今年はないかな? と思っていたとき。

「まだあります」

って、音楽の先生が話していた。

「え……」

 優秀賞はA組とB組になった。

 めちゃくちゃハイレベルで、三年生の全クラスが入賞するのは何十年ぶりという快挙たって。


「小夜。お疲れ様」

「悠里……。最優秀賞、華乃かのともに取られたけどね」

「でも、いいじゃん。ほんとにハイレベルだったから。高校生になっても、合唱コンクールはあるしね?」

 三年生が出る残りの学校行事は卒業式のみ。

 これからが勝負だと感じた。

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