第17話

 翌日。

 東京に帰る新幹線で、その伯父さんから聞いた話を繰り返していた。

「絢野が高校生の頃、家族は東京に来ていて、絢野はバスケ部で活躍していたんだ」

 母さんが昔のことを話したがらないのを、伯父さんに言ったら話してくれたんだ。

 高校生の頃、バスケ部にいたなんてのは知らなかった。

「でも、高二の時にけがで部活を辞めてしまって、それから美容師を目指すために美容師の専門学校に進学した」

 そのときに学校の先輩の人と恋に落ちて、交際を始めた。

 半年後に、おばあちゃんとおじいちゃんに母さんからの連絡があったの。

 妊娠したとの連絡だった。

 それを聞いたおじいちゃんは母さんと大ゲンカして、溝はおじいちゃんが亡くなるまで続いてしまった。

 そして、専門学校に通いつつ、生んだ娘は小夜、翌年の冬にもう一人の娘・雪華を生んで、そのまま美容師として働きだした。

 その二人の娘はわたしと雪華のこと。

 交際相手――父さんは、母さんが専門学校を卒業して就職してすぐに、どこかに行ったという。

 母さんは年子の娘二人を女手一つで、未婚で育てている。

 そんな過去を母さんは話してはくれなかった。

 たぶん、かなりつらかったのだろう。

 悠里ゆうりは夏期講習で、長野のホテルで合宿をやっているみたい。



 東京に戻ってきた。

「ただいま、母さん」

「おかえりなさい。小夜」

 雪華は部屋から出てこないらしい。

「雪華? 入るよ」

 部屋が同じで、起き上がった雪華は、目が腫れていた。

「雪華……どうしたの? 目が腫れてる」

 どうやら、泣いていたみたい。

 泣きじゃくっていたけど、話を聞いた。

「お姉ちゃん……悠里くんに、告白した」

「え!?」

「お姉ちゃんと同じ人、好きになってたなんて、知らなくて」

 雪華は引退試合のあった昨日、思いきって告白した。

 でも、悠里は他に好きな子がいるらしい。

「その子、お姉ちゃんかも」

「そんなこと、ないよ。悠里はわたしとは仲のいい同級生にしか見られてないって」

 そのとき、みゃーちゃんと華乃かのともの話を思い出した。

 ――両片想い状態ね。

 七夕祭りの日、悠里が何か言いかけていた。

 ――俺、ずっと……。

「まさか……ね」

 その言葉にドキッとしてしまう。

「お姉ちゃん、大丈夫? なんか」

「大丈夫だよ!」

 雪華を慰めているとき、少し心がざわついていた。

 信じたいけど、信じたくなかった。

 悠里に今度の月曜日に二学期の始業式があるから、少しだけ聞いてみよう。

「お姉ちゃん、絵梨花エリカちゃんと杏奈アンナちゃんと亜琉アルくんは元気だった?」

「うん。元気だった。来てほしかったって」

「来年は行くよ?」

 そうして、リビングに出て夜ご飯を食べた。

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