第15話
八月の中旬。
「暑い~!」
わたしはしばらくの間、母方の実家のある軽井沢にいた。
母方の実家は旧家なんだ。
女系でなかなか跡継ぎ息子が生まれなかったためか、戦後までは名だたる華族の次男や三男が婿養子にやって来ていたという。
「あ、
「
「はい」
絢子ちゃんの運転で、そのままおばあちゃん家に行くことに。
十歳上に絢子ちゃんと五歳上に隼人伯父さんがいる、母さんは三姉弟の末っ子なんだ。
隼人叔父さんは八代ぶりの跡取り息子が生まれたことで、大騒ぎされたらしい。
「隼人伯父さん。お久しぶりです」
「いらっしゃい。しばらく会ってないうちに、大きくなったね」
伯父さんは軽井沢で、おばあちゃんとおじいちゃんから受け継いだ貸別荘のオーナーとかを仕事にしている。
「あ、
「あ! 小夜ちゃん!」
伯父さんはイギリス人のエミリアさんと結婚して、八歳の絵梨花ちゃんと六歳の杏奈ちゃん、四歳の亜琉くんが生まれたの。
エミリアさんの実家も、王室の連なる家系らしくて、おばあちゃんはびっくりしていたという。
「みんな! 遊ぼ!」
「遊ぶ~!」
「行こう、小夜ちゃん!」
わたしがダッシュして、三人のあとを追いかける。
「小夜ちゃん。ここの木ね、わたしの木なんだ」
「杏奈のはこれ! あっちに亜琉のもあるよ?」
夜になって、三人が疲れて寝てしまったときに、大人の時間帯になったのを知った。
「小夜ちゃんはこのアクセサリー、使う?」
「え?」
おばあちゃんは部屋に一旦戻って、しばらくしてから、なにか小さな小箱を持ってやってきた。
「え? なになに?」
それは小さなネックレスだった。
「これはね、代々数えで十六になった娘にあげているのよ、
「ずっと前から受け継いだものを嫁ぐ娘たちに渡してきている橘家の伝統だよ」
昔は平気で十代でも嫁いでいたり、婿養子を迎えていたため、その名残だという。
そのネックレスを見て、なんとなく見たことがあった。
「これ……母さんがつけてたのと、同じやつだ」
「あぁ……
おばあちゃんが同い年の母さんに渡したけど、なかなかつけてはくれなかったらしい。
「でも……入学式でつけてた」
「そうかい、良かった」
一日目はとにかく疲れていたから、寝ることにした。
ベッドに横になると、そのまま意識がフェードアウトしていった。
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