第13話

 七月の半ば、夏休みが始まった。

「成績、返された?」

「う、うん……どうかな? 珍しく、できた方だよ?」

 母さんに通知表をわたして、待っていた。

「うん! がんばったね~」

「ほんと!? 4だよ! 文系科目」

 母さんや雪華ゆきか、みゃーちゃんたちに教わったりしていたためか、大幅に成績が良くなっている。

「雪華はなんで、成績が落ちてるのかな?」

 雪華がほとんどの教科が結構下がってて、どうしたんだろうと思ってしまった。

「今日は部活だから。遅くになったら、帰ってくるよ!」

 そのまま女子バスケ部の練習に行くために、部活着外に出ていった。

「雪華。行ってらっしゃ~い」

 わたしはすぐに外に出ることにした。

 夏休みの宿題の各教科のワークとかも配られていて、それを始めようとしないといけないけど……かなり難しくなってる。

 これが都立の問題だったりもするけど、これが出たら死ぬ。

 学校では夏休みのプールがあったから、思いきって泳いでくることにした。



「あれ? 小夜も来てたんだ~」

「みゃーちゃんも、来てたの?」

 プールサイドで話ながら、準備体操をしてからプールに入る。

 みゃーちゃんはストレス発散のためにプールに泳ぎに来ていた。

「学校のプールは市民プールより、近いし」

 市民プールは自転車で十分、いがいと近いけど小学生が多くて泳げないし。

 中学校のプールは人数が少ないから、ほぼ貸切状態で泳いでいる。

「一人一レーン、使っていいみたい」


 午前九時から十二時まで、ほぼ三時間くらいは泳いでた。

 雪華は体育館で練習をしていたんだ。今度の三年生の引退試合でスタメンに選ばれているらしい。

 わたしはその練習を見てから、そのまま帰ることにした。

 昼ご飯を食べてからは、宿題をすることにした。

「う~ん……証明問題。訳がわからない」

 頭を抱えながらも、なんとか解いた。

 その解答を見て、また絶望してしまう。

「全然合ってない、ヤバい……どうしよう」

 証明に用いる場所とかが全然違って、わたしは少し不安になってくる。

 国語とか、英語の文系の科目はほぼ合ってるんだけどね……理数系の科目が壊滅的になっている。

 自力でこれだと、ものすごくヤバいな。





「ん……、あれ? 寝ちゃった?」

 時計を見ると午後三時半、二時間くらい寝てた。

 プールでさんざん泳いできたのか、疲れて寝落ちしてしまった。

「雪華も帰ってきてないし、母さんはあと少しで帰ってくるから……洗濯物でも入れておくか」

 洗濯物を畳んで、そのまま母さんが帰って来たの。

「おかえりなさい、母さん」

「あ、小夜さよ。ただいま」

 母さんは夕飯の準備を始める。

 ゆっくりと時間が進んでいくけど、わたしには残された時間はなかったから、勉強することにした。

「小夜。これ、あげるよ」

 母さんはアイスをくれた。

 そんなこと、めったになかった。

「ありがとう。いただきます」

 少しずつ、いろんなことが変化していく。

 たぶん、これからも。

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