第11話
放課後、悠里と一緒に市内の図書館で話をすることにした。
お互い私服のまま行ったから、少しだけぎこちなかったけど、彼は話を始めてくれた。
「今度、俺の両親が離婚することになった」
「え? うそでしょ?」
悠里の両親のことを聞いて、びっくりしてしまった。
両親の離婚をいきなり突きつけられたらしくて、たぶんそのままテストに突入したらしい。
「小夜はどう思う?」
「うちは父親を知らないから……母さんが未婚で育ててくれていて、悠里はいきなりすぎてびっくりしてるだけだよ」
わたしは悠里の方を見る。
瞳には光が入ってない……まるで、疲れきってるように見えた。
「俺の両親、めちゃくちゃ仲が悪くて、今度からは母親に引き取られて、暮らすことになる。まだ名字は変えるわけにはいかないからね。でも……高校生になったら、名字を母さんの旧姓の高月を名乗る予定だよ」
幼稚園の頃から一緒だったけど、悠里の父さんを見たのは小学校で上がったときからは、全然見ることはなかった。
「小夜、今度の週末に料理とかを教えてくれない? 母さんが離婚してから、仕事をするから。家事は手伝いたくて」
いきなり、悠里にお願いされて、びっくりした。
「今度の週末ね。いいよ」
心臓がドキドキするのを感じたけど、彼には気づかれたくなかった。
週末になり、悠里が家にやって来た。
「あら、悠里くん。いらっしゃい」
雪華は友だちとそのお母さんと一緒にディズニーに行った。
「悠里、何にする? 料理」
「え、好きなのでいいよ」
「それじゃあ……ハンバーグ」
ハンバーグは手作りで作ることが多くて、雪華がよく頼んでいたものを作ることにした。
「空気を抜くときは……、勢いよく。でも、ハンバーグのタネを落とさないようにって、悠里」
悠里はぎこちなく、空気を抜いている。
その姿がおかしくて、笑ってしまった。
「小夜……お前、笑うなよ! 一生懸命やってるじゃん」
悠里はあんまり家庭科は得意じゃないみたいだ。
「悠里。家庭科だけは三なんだっけ? 成績」
「そうだな。小夜には勝てね~」
「うん。家事はお手のものだからね!」
悠里が空気を抜いたのと一緒に、フライパンで焼くことにした。
「小夜、絶対結婚したら、めちゃくちゃ旨そうな料理、作りそうだな」
不意打ちみたいな感じで言われたとき、びっくりした。
「え!? 悠里!? なんで、そう思うの」
「料理とか家事がうまいから」
悠里はさらっと言ってくるから、聞いたこっちが恥ずかしい。
わたしはドキドキしながら、残りの料理を一緒に作っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます